天才兄妹の入学式
開いてくださりありがとうございます
「あー、生きるの飽きたな~。死のうかね~」
綺麗な星空を一望できる、あるビルの屋上でそんなことを呟く一人の男がいた。この男、名を土御門 竜也という。
「兄さん、なに馬鹿なことを言ってるんですか。明日からついに学校ですよ! 頑張りましょう!」
きれいな黒髪をなびかせ、竜也を兄と呼ぶこの少女の名は土御門 冷夏、血の繋がりがない竜也の妹である。目鼻立ちははっきりしており、茶色く染まったきれいな瞳をしている。胸も大きく、肌もきめ細やかで町を歩けば男女とも関係なく見とれてしまうような美貌の持ち主だ。
「へえへえ、妹様の言う通りですね~。ぼちぼち入学式の用意でもしますか。お前はいいのか? 新入生代表だろ。」
「私は既に用意をすませておりますので。兄さん、お手伝い致しましょうか?」
「そっか。んじゃ頼むわ」
「はいっ!」
こうして二人は仲良くビルの中へと消えていった。
時は2200年、四大公家と呼ばれる王族のような役目を果たす公家と、その下の位で貴族のような階級にあたる一条家から九条家までの名家が日本のトップに君臨する時代。
なぜ民主制だった日本が君主制へと替わることとなったのか。
それは名家のものが一般人に比べ様々な才能に秀でているからである。
特に四大名家は特別で、スパコンにうち勝つ演算能力や銃弾をも見切る反射神経など様々な才能を持って産まれる者が多い。
才能の差はやがて身分の差となる、君主制になるのも仕方がないことだろう。
しかしそういった才能をもつ者が現れたのは何故か?
それは日本で行われたある実験が原因である。
約100年前、各家の祖先は研究者であった。彼らは天才を作り上げる研究を政府に秘密で行っており、何度も薬を作り上げては失敗を重ねていた。
だがある日、偶然にも天才になれると思われる薬が出来上がり研究者達は喜び勇んで薬を飲み干した、いや飲み干してしまった。
途端に何人もの研究者が苦しみ悶えはじめ、何十人といた研究者の中で最終的に残ったのは13人の研究者達だけとなった。
彼らはそれ以来天才的な力を手に入れ、ほとんどの者は各業界にて成功をおさめた。
けれども、それだけでは納得できないという探求心の強い者達が現れた。彼らの名をそれぞれ 『土御門』『水無月』『不知火』『風切』 という。
研究者の中でも特に研究熱心で才能のあった彼らはある薬を作り上げた……それは超人を作り上げる薬である。
これにより、他の9人を越える力を手に入れた四人はやがて日本の権力を牛耳ることとなった。
ところで土御門といえば先ほどの兄妹、四大名家の者である。
兄の竜也は、普段ださい眼鏡を掛けており目立たないが、引き締まった肉体をもつ絶世の美少年であり今年高校生になる15歳の少年である。
土御門家次期当主で、四大名家の各家の後継ぎ達とは別格の多彩な才能をほこっている。
一方妹の冷夏は、わけあって竜也と血の繋がりがない15歳の才女である。
五歳の時土御門家に訪れた冷夏はある事件に巻き込まれるが、当時から人並外れた才能を見せていた竜也に救われ、それ以来竜也を思い慕っている。
二人とも明日には高校に入学である。
そして次の日、法道学園の入学式がとり行われた。
「……では、新入生代表 土御門 冷夏さん。挨拶をお願いします。」
「はい。」
壇上には黒髪の美少女が悠然と立ち、周囲の視線を一瞬で釘付けにする。
「おい、聞いたか。土御門家の方だってよ!」
「すげー美人!! しかもあのくそ難しい入試問題でほぼ満点取ったらしいぜ!! 少しでいいから話してくれないかな?」
「むりむり、俺達なんかが会話できるわけないだろ。夢見すぎだ。」
「はぁー……だよなー」
「しかし今年でこの学校には四大公家全員が集まったってことか。あんな天上の人達と同じ学校になれるなんて俺達ついてんな!」
「ああ、法道学園に全員集まるのは40年ぶりらしいぞ。」
ガヤガヤ……
辺りが蜂の巣をつついたように騒がしくなるが、冷夏が話始めると一変、水を打ったように静かになった。
「暖かな日差しの訪れと共に私達は法道学園の一年生として入学式を迎えることにができました。先生方、先輩方もこのような素晴らしい式を用意していただきありがとうございます。私は高校生活で友達作りを頑張りたいと思っています。
私は土御門家に籍をおくものですがここではただの学生、皆さん気軽に話しかけてくださいね(ニコッ!)」
途端に何人かの生徒が倒れた。
しかしそれも仕方がない。なんと言ってもあの冷夏の笑顔だ、女性と交流の少ないものにはさぞ刺激が強かっただろう。
「以上で挨拶とさせていただきます。ご静聴、ありがとうございました。」
ワーーーーー!!!!!!!!!!!
途端に大歓声があがり、しばらくの間体育館が混乱の渦とかすというハプニングはあったが、入学式はおおむね成功に終わった。
入学式が無事終わり、竜也達は学園に通うために借りているビルに帰って来た。(ビル全てを借りきっているというのだから恐ろしい。)
「に~い~さん? 少しお話が!」
「何だ、妹よ……兄は眠いのだが。」
「今日の挨拶、本当なら満点合格だった兄さんがするはずでした。しかし私の晴れ姿を見たいとおっしゃったから、学校側に権力をちらつかせてまで二位である私が代表挨拶を交代したのですよ? なのに兄さんといったら開始早々お眠りになられていたではありませんか!」
「おぉ~、よく見えたな~! えらいえらい」
「えへへ……はっ! そうではなく何故寝てしまわれたのですか!」
(あ~、誤魔化せなかったか。さてどう言い訳したものか……)
「それはな、お前の晴れ姿を想像して昨日の夜あまり眠れなかったんだ」
「そっそうですか……ならしょうがないですね~!」
(うわー、わが妹ながらちょろいな~。頭はいいはずなんだがな……)
妹のちょろさが若干不安になる竜也であった。
「そういえばっ!……兄さん、お父様とまた賭けをなさってるんですって?」
「えっ? 何で知ってんの?」
そう、冷夏の言う通り竜也とその父である土御門 仁は、卒業までに竜也が土御門家のものだとばれるかどうかで、一億円を賭けている。
「はあー……また兄さんの悪い癖がでましたか。」
「いいじゃねえか、楽しいぞ。そのために名前を土山にかえてまで学園に来たんだから。」
何を隠そうこの男、大のギャンブル好きであり、よく父親と膨大な金を使って賭け事をするのである。
「はたして、ばれるかばれないか。神のみぞ知るってとこだな。ククッ……」
これからの学園生活、この兄妹はどのように過ごし変化していくのか。
これはある兄妹の、波乱に満ちた学園生活記録である。
反応により続けるか決めたいと思います。
誰かかわりに続きを書きたいという方がおられましたらぜひ書いてください
スライム君の息抜きに書いただけですので文章構成がおかしいかもしれません、ごめんなさい。