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新存の魔法使い  作者: つむ
8/10

第七話 まるで自然な流れ

「…ちょっと何言ってるか分かんない」


幸生は考えるよりも先に口がそう言った感じがした。


「俺は自分の名を…氷堂という名前を許さない。そしてその原因でもある水無月…お前らが許せなかった」


魁斗は幸生をまっすぐ見続けながら言った。本気の目だと幸生は感じていた。


「まー落ち着けや!」


純吉が二人の間には入り、二人の距離を少し離した。

そして、魁斗に対し質問を始めた。


「なあ魁斗。お前んとこが由緒ある家系なんは知ってるで。でもそれがなんで幸生の苗字…水無月が関係あるんや?水無月って有名やったん?」


「俺はそんな有名だなんて思ってないけど…そんなに有名だったのか?」


幸生は自分の名前がそれほど有名だったのかわからず、ただ疑問だった。


「ほら。幸生なんて自分でもわからんって言っとるで。なんでそんな水無月にこだわるん?」


「…俺は、小さいころから優秀な魔法使いとしてなるべく親父に鍛えられていた」


魁斗は静かに自分の過去を話し始めた。


「親父は力があった。それは魔法使いの中でもトップクラスの実力だ。氷堂家は氷の魔法を使う。もちろん俺もだ。親父はそんな俺を常日頃から鍛えあげようとした。」


「…も、もしかして、氷堂君のお父さんは、誰かと比較していたの?」


「…あぁ。それが水無月だ」


「俺なのか…」


幸生は呆気にとられた。自分が知らない所で自分の事が呼ばれていた。誰だって驚くだろう。


「親父は何かする時には必ず水無月よりも上を目指せだの、水無月ならこれくらい余裕だと独り言のように言っていた。俺はそれが不快でたまらなかった!」


魁斗は拳を強く握りしめた。怒りを隠しきれない様子だった。


「それから俺は、水無月に対する怒りを覚え始めた。お前がいなかったらこんな気持ちにはならなかった…!お前がいなければ俺は親父の商売道具にならないかもしれなかった!」


「…なんか、ごめん。俺のせいで…」


幸生はなぜ自分のせいにされているのか、理不尽な気分が少しあったが、なんとなく悪い気持ちはあったため、謝った。



「なら戦えばええんちゃうの?」


いつの間にかソファーに座っていた純吉が提案する。


「…どういう事だ?」

「だからそのままやで、魁斗。幸生と拳交えて、お互いを理解する!これが定番やろ!」


訳の分からない理屈をにっこりしながら純吉は話す。これには幸生達は呆れる様子だった。


「てなわけで先生、練習場少し借りさせてーや!」


「許可くらいは出してやる。後はお前らで好きにしろ」


「せ、先生!幸生君はまだ…!」


「いや、いいよ睦月。問題ない」


「幸生君…」


幸生は睦月と目を合わせてからすぐに魁斗と目を合わせる。


「お前と俺が戦うか…別に構わないが、お前はいいのか?」


「ああ。正直勝てる自信は無いけど、俺は戦ってみたい」


「なら決まりやな!気張りや幸生!魁斗は学年でトップの実力の魔法使いやからな!!」


「んー、それをもっと早く言って欲しかったなぁ…」


純吉の言葉に幸生は苦笑しつつ、内心恐怖で覆われて行った。


「なら行こか!練習場!あそこなら頑丈に作られてるし、多少の無茶は平気やろ!」


「こ、幸生君…頑張ってね…?」


「あー…死なないように頑張るよ…」


幸生達は練習場に向かった。






ー練習場ー


かなりの広さがある練習場。一体なぜこのような土地があるのかは謎だが今はこれからの戦いに集中するべきだと、幸生は思っていた。


「ルールは簡単に、相手が降参する、もしくは戦闘不能でええやろ?動けるかはこっちでも見るしな」


「構わない」


「俺も大丈夫」


幸生と魁斗は純吉が決めた簡易ルールに了承した。

二人は動きやすいように、学園指定の体操着姿に着替えている。


「それじゃあ始めんで?」


純吉がそう言うと二人は身構える。

睦月は二人を見ていて、二人の間に強い気迫が出ているように感じた。


「始め!!!」


純吉の掛け声と共に、先に動いたのは魁斗だった。

それは今にも魔法を出す構えだった。


「氷魔法、連氷山波(れんひょうざんぱ)!」


そう唱え、腕を下から斜め上に振りかぶった途端、かなり大きな水晶のような氷が地面から突き出た。

そのまま真っ直ぐ地面から連続して生み出され、まるで波のように幸生に襲いかかっていった。


「こ、氷!?うわっと!!」


間一髪、幸生は横に飛び出すように避ける。

だが魁斗は分かっていた様に、すでに次の攻撃を出していた。


「甘いんだよ」


「うあああああああっ!?」


上から勢いよく落ちてきた氷の塊の笑劇に、幸生は吹き飛ばされた。


「痛ってぇ…これ、かなりやばいぞ…」


衝撃で起きた煙の中、幸生は尻餅をついていた。

そして焦っていた。相手の実力の差に動揺を隠しきれなかった。


「親父が言っていたのが事実なら、お前の実力はこんなものでは無いはずだ。早く立てよ」


煙から見えた魁斗の立ち姿は、まるで自分が上だと言わんばかりの気迫だった。幸生は体にビシビシとその気迫を感じていた。


「相手は氷魔法の天才や。さて、幸生はあの氷にどうやって立ち向かうんやろなぁ?」


「幸生君…頑張って…!」


楽しそうに見る純吉とその反対に不安そうに見る睦月は、この戦いをただ見守っていた。

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