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新存の魔法使い  作者: つむ
5/10

第四話 狙われた幸生

「――必要ない」


どこからか聞こえる謎の声。


「――この過酷溢れる世界に」


映し出されるものは、闇ばかり。


「――そんな感情(モノ)は、いらない」

「やめろ…」

「――だから、お前もいらない」

「やめろ…!」


謎の声が幸生を蝕み、苦しめる。


「――夢も、希望も、友情も」

「やめてくれ…!」


「お前の全ては、消えていく」



「黙れぇぇ!!」


声を上げると同時に、布団から起き上がった幸生。


「…なんだよ、最悪な夢だわ…」


そのまま起き上がった幸生は、洗面所まで向かって顔を洗おうとした。


「あれ…?」


幸生はふと自分の顔を見ると、変な違和感を感じた。


「俺、何で泣いてんだ…」


幸生の目からは涙が自然と零れていた。




幸生は制服に着替えて、鞄を持って外に出ようとする。その時だった。


「お前が紋章を持った少年か」

「え?」


後ろから声が聞こえ、振り向くと、黒いコートを来てとフードを被って、赤い模様のある不気味な白い仮面を付けている男がいた。


「だ、誰だお前!どこから入った!?」

「誰かなんてどうでもいい」

「は、はぁ?俺はどうでもよくねぇ!」

「その紋章はお前には似合わない」


黒フードの男は、真っ直ぐ幸生を指さした。


「な、何で紋章の事を…!」

「知った所でお前に意味は無い。どうせこれから…」

「っ!?」

「死ぬのだからな」


黒フードの男は一瞬で幸生に近づき、首を掴んだ。


「ぐっ…がぁ…!」


締め上げられた状態で、そのまま持ち上げられた幸生は、身動きが全く取れない状態となってしまった。


「なんだ、これ…力、が…」

「お前の魔力、貰うぞ」


そう言うと、男の手が青白い光に包まれる。

その度に幸生は力が入らなくなっていった。


「ぐっ…こ、の…」

「このまま吸いつくしてやる」


もはや掴む力すら残っていなかった幸生は、朦朧とした意識の中、自身の死を覚悟した。


ーーこんな所で死ぬわけには…


幸生の意識は、段々と失っていった。


「気絶したか…だがこのまま魔力を吸いつくしてやる」


男は幸生を掴んだままでいた。


「…だが、なんという魔力の量だ。紋章を持っているだけの事はある」


幸生を掴み続けていた、その時だった。


幸生の背中から、邪悪なオーラが出てきたのだ。

「なっ!これは…!?」


そのまるで紅色のオーラは、みるみる幸生を包んでいった。


「…おい」

「なにっ!お前は気絶したはず!?」

「離せよ」


目を覚ました幸生は、一瞬で男を蹴り飛ばした。


「ぐっ、おああああ!!」


男は部屋の窓ガラスを破り、外に落とされた。


生徒寮からは、外に出ると学園までの道がある。

簡単に言うと、そこまで男は吹っ飛んだのだ。


「きゃあっ!」

「誰この人!?」


登校途中の生徒もいたため、男は注目を集めてしまう。


「ちっ、ここで注目を集めるのはまずい…すぐに帰還せねば…」


その瞬間、幸生が後を追って勢いよく飛んで男の前に立った。


「どこへ行く」

「くっ…!だがあれほど魔力を吸収した後だ、そうすぐには力を発揮できまい!」


そう言うと男は幸生に向かって走り出す。


「…あの時を思い出して…同じように」


幸生は火の玉をを手から男に向かって放出した。


「ふっ、そんな小さな炎なんて、簡単に避けれ…っ!?」


炎は一気に五つに分裂して、男に飛んで行く。

その炎が数発男に当たる。


「くっ、だがこの程度、避けきれなくともダメージは…」

「どこ見てんだ」

「なにっ!?」


瞬時に横に回り込んだ幸生は、そのまま男を蹴り飛ばす。


「ぐおああっ!!」


男は吹き飛ばされ、そのまま木に衝突した。


「立てよ」

「こ、こいつの魔力は無尽蔵にあるのか…!魔力を吸い取ったばかりの動きではない…あの紋章がそれを無理やり引き出しているのか?」


幸生の禍々しいオーラは段々と膨れ上がっていった。


それはまるで見る人を魅了するかの様に。


そして恐怖させるかのように。


「こ、ここは逃げるしか…!」


男は立ち上がりすぐさま逃げようと、転移魔法を行おうとする。


「誰が逃げていいって言った」

「なっ…!?」


幸生はそれを阻止するかのように、一気に男に近づき首を掴んで、先程やられたように持ち上げた。


「やり返させてもらうぞ」

「こ、こいつ…どんどん呪印が広がって…」


幸生は勢いよく男を木に叩きつけた。


「ぐおっ…!」

「吹き飛べ」


数回やったその後、勢いよく道に投げ飛ばす。


他の生徒達からの悲鳴が上がる。


「まだ終わりじゃない、立てよ」

「こ、殺される…」


その時だった。


「幸生君!」


男はもはや恐怖しか感じない中、後ろから幸生を呼びかける声が聞こえた。


「…睦月?」


「その顔…一体どうしたの…!?」


幸生の顔には、その呪印であろう痣の様なものが広がっていた。


「分からない。だけど力が溢れてくるんだ、まるでこの力を使えと言わんばかりに…」

「駄目だよ!先生も言ってたでしょ?使いすぎると、体に強い負担をかけるって!これ以上続けると…幸生君の体がもたないよ…!」


睦月は涙目になりながらも、幸生を止めようと必死に説得する。


幸生は自分の手を見ると、誰が見てもおかしくないくらい、震えていた。


「…そう、だな。ごめん、自分を忘れてたみたいだ」

そう言うと、幸生の顔まで広がっていた呪印が引いていった。


「幸生君…」


睦月は幸生の元に歩み寄り、声をかける。


「いつっ…確かに、使いすぎると体に負担がかかるみたいだなぁ…」

「こ、幸生君!」


幸生は膝から崩れる落ちる。呪印が暴走するのは初めてで体の負担が大きくもはや立てるのも無理な状態だった。



「こ、この隙に…」


男はこの隙に逃げようと転移魔法を発動しようとする。


その瞬間だった。


「おいおい、どこ行く気だ?」


男が逃げようとした時、男の後ろから声がかかる。


その男はいかにもな感じの筋肉質な体型の男で、身長も190は超えているだろう。


たくし上げ逆立っている髪と手入れのしていないような無精髭が、その風貌をより強くしていた。


「お前には話がある。少し眠ってろ」

「なんだお前っ…ぐほぁ!」


屈強の男に拳骨を食らわされた男は一瞬で気絶してしまった。


「だ、誰だよあんた…タフガイすぎる…」

「幸生君、この人は…」

「あー、そんなもん後だ。とりあえずお前らも一緒に来い」

「意味が、分から、ねえよ。まじでどうなってんだ、この、学…校」

「幸生君!」


幸生はそのまま倒れて、深い眠りに落ちてしまった。

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