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新存の魔法使い  作者: つむ
3/10

第二話 俺の魔法とは?

訓練室の見た目は、射撃場のようなシンプルな見た目で、全体が明るい青で染まっている室内だった。学生にも良い雰囲気を与えてくれる優しい色使いだ。


シンプルさだけではなく、部屋の広さにも、幸生は驚きを隠せなかった。


「うわぁ…広いな…」

「魔法は、人それぞれのタイプがあるから…それを考慮してだと、思うよ…」


幸生は睦月に魔法のタイプについて、ある程度話を聞かせてもらっていた。


――魔法には"要素"というものが存在しており、『火』、『水』、『雷』、『風』、『氷』、『土』、『光』、『闇』と多くの要素が存在している。


だが、全てが平等に使えるわけではなく、火の魔法を得意とする魔法使いは、水の魔法は全く使えないという様な、一つの魔法に特化した魔法使いが多いのだ。


もちろん、この八つの要素に囚われることはなく、様々な魔法がこの世に多く存在している。


物を浮かしたり、空を飛行したりする事もできる。これはどの要素にも入らない魔法だ。


どの要素にも入らない魔法は、これだけではく、"身体強化"の魔法もどの要素にも入らない魔法だ。

体の動きを強化する事の出来る、シンプルな魔法だ。


だが、魔法はこれだけに留まらず、さらに枝分かれして、使い方も異なっていく。


身体強化の魔法で例えると、中心が体全体の強化だとして、枝分かれすると、体の一部分を強化する事もできる。


魔法とは、無限の可能性を持っているものだ。


「…って俺は教わった」

「だ、誰に言っているの…?」

「あ、こっちの話」


魔法について大まかな事を知って、とりあえず幸生は自分がどのような魔法が使えるのか、体を疼かせた。


「どうやって、魔法って出せばいいんだ?」

「イメージ…かな。頭の中で、出したい魔法をイメージして、体から一気に放出する感じ…」

「イメージね…よし、やってみるか!」


幸生は手を前に出して、火の魔法をイメージした。


――火…火の魔法…よし!


「いっけぇ!」


大声でそう発した幸生の掌からは、ピンポン玉サイズの火の玉がふわふわと飛んでいった。


「…んー?」

「も、もしかしたら…火は相性が悪いのかも…」

「そ、そっかな…?なら次は――」


水の魔法から順番に試していって、かれこれ三十分は経っていた。


「はぁっ…はぁっ…な、何故だ…」

「ま、まだ最初の内だから、慣れてないんだ、よ…」

睦月の慰めも、幸生には心を余計に痛ませるばかりだった。


そんな時、後ろから笑い声が響いた。


「ギャハハハ!なんだあのショボイ魔法はよ!」

「あんな奴がこの学校に居ていいのかよ!なぁ?」

「全くだぜ!あーあ!この学校も落ちぶれたもんだぜ!こんな落ちこぼれがまだいるなんてよ!」


いかにも不良の様な三人組が、幸生を馬鹿にしていた。


幸生は、怒りと共に悔しさが込み上げてきた。


――こ、こんな奴らに馬鹿にされるなんて…!


睦月は、顔を下に俯けている幸生を見ては、周りを見て、この世が終わりそうな顔でオロオロしていた。

そんな時だった。


「あの陰気臭ぇ女も、どうせ落ちこぼれなんだろうなぁ!」

「全くだ!傷の舐め合いは楽しいか〜?」


高らかに笑っている不良達の声を聞いて、幸生は怒りが急上昇した。


――それは関係ない。言い過ぎだろうが



プチンという、何かが切れたような音と共に。


「…睦月、もう一回火の魔法からやるわ」

「…え、で、でもまだ慣れてないから…」

「大丈夫、コツは掴んだから」


幸生はそういうと、さっきまでの立ち尽くす状態ではなく助走をつけて、まるでドッジボールでボールを投げるかの様に、腕を振り下ろす。


「燃えろ」


幸生の腕から放たれたのは、先程のサイズとは格段に変わって、レーザー状に近い炎の塊が直線上に放たれて、的に勢いよくぶつかった。


「なあっ!?」

「な、なんだぁ今のはぁ!?」

「あんなの、上級レベルの魔法使いの威力のレベルだぞ!それを、あんな転校したばっかのやつが、どうやって!?」

「…み、水無月、君…」


不良達三人は、まるで呆気に取られた顔をして幸生を見つめたまんまだった。


「…おい、お前ら」

「ひいぃっ!?」

「さっき言った事…全部取り消せ」


幸生はまるで別人の様な、無表情な顔で不良達を睨みつけた。


「ううう、うるせぇ!マグレの魔法で、俺にそんな口を聞くんじゃねええ!!」


不良の一人が幸生に殴りかかったが、幸生はいとも簡単にそれを避けて、懐に潜り込んで、腹に拳を入れる。


「がっ…はぁっ…!」


不良は膝をついてそのまま床に倒れ込む。


「お、おいしっかりしろ!」

「う、嘘だろ…白目剥いて気絶してるぜ…!」

「ま、マジかよ…!」


「お前ら、何言ってんの?」

「「ひいっ!?」」

「早く取り消せよ」


幸生は、屈んでいる不良達を上からただ見下ろしていた。


「わ、わかった!取り消す!取り消すから許してくれ!」

「…最初からそう言えよ」


後ろを向いて、幸生は睦月元へ向かった。


「そいつを抱えて早く消えろ。俺はそこまてま気は長くないんだよ」


幸生は不良達の方向に、手を前に出す。


「「す、すいませんでしたあああああ!!!!」」

不良達はすぐ立ち上がって、気絶している不良を抱えて、訓練室から去っていった。


「…はぁ」

「み、水無月君…?」

「あぁ、白濱さん。ごめん、俺出しゃばったかもしんないね…」


幸生は先程の冷たい顔ではなく、優しそうな暖かい顔に戻っていた。


「そ、そんな事…ないよ。み、水無月君…カッコ、よかったよ?」

「カッコよかったなんて…やめてくれ、照れる」

「誰が見ても、あれはカッコよかったよ…それと、聞いても、いいかな…?」

「ん?」

「な、なんでさっきは名前で呼んだ、の…?」

「…あー、ごめん、なんか無意識で言っちゃったんだ、嫌だったかな?」

「そ、そんな事無い…よ」


幸生は慌てて謝ろうとしたが、睦月は軽く許してくれた。


「あー…でも俺はさ」

「…?」

「睦月って好きだな」

「うひゃぁっ!?」

幸生自身は、名前の呼び方でそう言ったつもりだろうが、睦月にとってはまるで、告白みたいに聞こえてしまったのか、顔を爆発させる勢いで真っ赤にした。


「え、ええ!?なんか俺変な事言った!?」

「い、言ったよ…うん」

「ファッ!?ご、ごめん!ホントごめん!俺に出来ることなら何なりと!」


「…じゃ、じゃあ…」

「じゃあ…?」


「私の事は睦月で呼んでいいから…私も名前で呼んで…いい?」

「あぁ、うん。それくらいなら構わないよ。ホントにそんなのでいいの?」

「わわ、私には…これが、精一杯…」

「そ、そう…?」


幸生は、自分がたらしの才能を持っているという事には到底自覚がなく、睦月は顔を赤らめたままだった。


「とりあえず戻ろうか。疲れた…よね?」

「うん。そうしよう…か…?」


戻ろうとした幸生は、急に足がふらつき、視界が揺れ始めた。


――あ…れ?


「…幸生君!?」


その瞬間、幸生の意識は黒に染まった。

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