第九話 結果
お久しぶりです。もはや見ている人なんていませんよね(苦笑)
正直自分もうろ覚えな所あるので是非指摘してください!
「…終わりだな」
そう言いながら海斗は服に付いた埃を払いながら、煙の立つ方から背を向け歩きはじめた。
「海斗…流石にそれはやり過ぎやで…」
「こ、幸生君…!大丈夫かな…!?」
その光景をやれやれと思わんばかりに見ていた純吉と、幸生の心配をしている睦月。
そうなるのも無理も無い。ただでさえ魔法の使い方がロクに分からない幸生に対し、相手は学園で上位の実力者の海斗。実力、勝敗の差は目に見えていた。
しかし、そんな状況が一変した。
何かが煙の中から勢いよく海斗に向かい飛び出して行った。
「おい海斗!後ろ!」
それに気付いた純吉は慌てて海斗に声を掛けていた。
「…何!?」
飛んできたのは海斗が放った氷魔法の一部の塊だった。それは一つではなく、何個か続けて飛んできた。
「ちぃっ…!」
完全に自分が勝利したと思い油断していた海斗は、反応が遅れ、ガードは出来たがその攻撃を避けれず受けてしまった。
「…なっ!?」
かろうじて攻撃を受けきった刹那、海斗からすれば衝撃的な事が起こった。
先程まで倒したと思い込んでいた幸生が、自分の目の前まで飛び込んで来ていたのだ。
先程の攻撃を防ぐのに手一杯だった海斗は、これに反応する事ができず─
「っらぁっ!」
「がはぁっ!!」
幸生が放った拳をモロに腹に喰らった。
押し出す様に拳を振り抜いた勢いで、海斗は勢いよく飛ばされ転がり、うつ伏せの形になり倒れた。
「お、おおおお!!!凄ぇぇ!やるやんけ幸生!!海斗に一発かましおったで!!」
「幸生君、凄い…!でも、海斗君のあの攻撃をどうやって耐えたんだろう…?」
「あっ、それ俺も気になったわ。どうやったんやろなぁ」
「ふむ…それも気になる所だが今はこの勝負の結果を見届けてあげようじゃないか」
悠大の言葉を受けながら、純吉と睦月は再び二人に目をやった。
「はぁ…はぁ…くうっ」
幸生は先程の一撃で限界を迎えたのか、膝をついた。
まだ身体が魔力に順応していないか、そして紋章の代償もあるのだろう。幸生からは汗が止まらなかった。
「…っ、ぐ、貴様ぁ…!」
目の前でふらふらと立ち上がる海斗。その表情は幸生の攻撃に対する怒りと、苦痛に対する苦しさが混ざったような顔だった。
「何故だ…あの攻撃を避けられたのは…!そしてこの反撃の威力…身体能力の強化かっ…!だが、貴様は魔法使いとしてまだ覚醒したばかりのはずだ! 何故ここまでの威力が出せる…!!」
海斗は幸生に怒りを露わにしたまま言葉を発した。魔法使いなりたての幸生が海斗にここまでしたのが、海斗にとってはプライドが傷つけられるのと同義だったのだろう。
「…紋章って呪いが、覚醒した時に発現したらしい…それのせいかもっ…げほっ、げほっ」
咳き込んだ幸生はそのまま呼吸を落ち着かせようと深く息を吸って吐いた。
幸生の言葉を聞いた海斗は、さらに怒りが込み上げていくのを自分でも感じていた。
「紋章だとっ!?貴様、人を馬鹿にするのが好きなようだな!」
海斗は左手を幸生に向け、冷気を手に集める。魔法を放つ気だ。
「っ…!」
「水無月の人間がいるから、俺たち氷堂家は…親父は…俺はァ!!」
そう言って海斗は魔法を放とうとした時、後ろから純吉が海斗を羽交い締めにして制止した。
「ちょい海斗、そこまでにしとけや!」
「純吉!?何をする離せ!まだ勝負は!」
「もー終わりや終わり!見りゃ分かるやろアホ!幸生はもう動けん!お前の勝ちや!それでええやろ?」
「くっ…」
海斗は悔しそうな顔を浮かべながら、手に溜めていた魔法を解除する。
「幸生君…大丈夫?」
「あ、あぁ…ありがとう、睦月」
睦月は幸生の背中に手を添えて、心配して幸生を見つめる。
返すように幸生は引きつった笑顔で睦月にお礼を言った。
「はい、二人ともお疲れ様。お互い十分いい動きをしていて良かったよ。とりあえず今日はもう休みな。純吉君、君は海斗君を部屋まで連れって上げて」
「はいはーい。ほらほら部屋戻って休むで〜」
「ちっ…おい、水無月」
「…え?」
「俺はこの勝負に納得してない。次に取っておくからな」
「わ、わかった…」
海斗はそう言葉を残し訓練場を出ていった。
今回の勝負は海斗にとっては引き分けなのだろう。幸生は正直また彼と闘うのは気が引ける思いだった。
「幸生君には少し悪いが、保健室で少し話をしようか。今日の試合について幸生君の意見を少し聞いておきたいしね。白濱さん、悪いけど幸生君を保健室まで肩でも貸してあげて」
「は、はい!幸生君、掴まって?」
「あ、うん、ありがとう」
そして睦月に肩を借りて幸生達は一旦保健室まで向かうことになった。