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43 四人体制で食堂開始

 俺は叫んでるリルハさんの前に出た。

「わかりました。うちで採用しますよ、リルハさん」


「へ? ほ、本当ですか!?」

「現実的に考えて、それしか方法ないと思いますから」


 あれだけ、王都に行けみたいなことを言っていたサンハーヤもとくに否定する様子はなかった。最初から、なんだかんだで受け入れるつもりではいたらしい。


「そりゃ、そうなりますよね~。私もオルフェさんのおせっかいはよくわかってますから」

「あなた、さっきまで追い出そうとしてたじゃないですか……」

 リルハさんがサンハーヤのほうを恨みがましく見た。


「それはあなたが一方的にここに置いてくれと要求したからです。恩を根拠にずっと居させろというのは虫が良すぎます。この世はたいてい等価交換で成り立ってますからね。ほら、それなりの対価をあなたが出せなきゃダメってことですよ」


 そのサンハーヤの言葉に、リルハさんも「あっ……」といった声を出した。


「私、働くと言うまで、置いてくれとしか主張してなかったんですね……」

 そう、相手に恩だけを要求するのは納得できないとサンハーヤは言いたかったのだ。


 ここに残るなら、対価はいる。その対価が労働ということだ。


「この召喚魔法があまり広まるとよくないですからね。そういう意味では、リルハさんが働いていただけるのは、こっちとしてもありがたいんですよ」


「わ、わかりました。私、しっかり汗水垂らして働きますから!」

 サンハーヤさんは俺の手をぎゅっととった。


「うん、これでいい。丸く収まった」

 レトがこくこくと腕組みしてうなずいていた。妙に大物感があるな。


「こうやって、どうにか丸く収まるものなんですねー」

 サンハーヤが最後に呑気なことを言って、場を締めた。



 翌日から、リルハさんは食堂で働くことになった。


「はい! うどんですね。そっちはカレーですか。はい、承りました!」

 多少、無理してテンションを上げて接客している部分もあるけど、それなりにしっかりやっていると思う。


「うん、悪くはないんじゃないですかね?」

 サンハーヤはやけに先輩風を吹かせていた。


「すぐに『研修中』の文字もとれますよ」

 そう、リルハさんの胸元には『研修中』と書かれたワッペンがつけてある。サンハーヤが作った。なぜか形は若葉だけど、理由はあるのだろうか。まあ、サンハーヤはダークエルフだしな。


 これ、リルハさんをバカにしてるわけではなく、客のほうが研修期間だったら、対応が遅かったりするのもしょうがないなと納得させるためである。

 冒険者は気が短い奴も多いので、保険をかけているとでも言えばいいだろうか。


 そこにレトも注文の木札を持ってきた。

「リルハ、思ったよりはやれてる。けど、まだ仕事が楽になったなと感じるほどでもない」

「レトも多少、先輩風吹かせてるな……」


 レトはもともとこういうキャラではあるが。


「先輩風じゃない」

 レトがふるふると首を横に振った。


「新しい風が吹いている。新メンバーが増えたというのは、そういうこと」


 なかなかいい言葉だ、そう俺は思った。


「だな。食堂もまだまだたいした時間やれてないし、もっともっといいようにしていこう」


 できれば、また、新メニューも試していきたいしな。毎日通っても飽きないというのが、本来の食堂だと思う。まだ変わり種をたくさん用意して誤魔化してる部分がなくもないから、もっともっと品数は増やしていきたい。


 ――と、リルハさんが通路で転んで、派手に倒れていた。

「め、女神なので、こういう接客は慣れてないんですよね……」


「この新人さん、女神だって!」「そうだな! 冒険者にとったら、この店の女の子はみんな女神みたいなもんだよ!」「まったくだ!」

 客たちが気楽に笑っている。ひとまず、女神という身バレはまったく起きなそうだな。


 たしかに風が入ってきているわけでもないのに、今日の店内はひときわ明るい。


「オルフェ食堂」は今日も元気に営業中だ。


女神がやってきた編はこれで終わりです! 次回から新展開です!

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