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36 夜の来客

今回から新展開入ります!

「こっちから一列に並んでほしい。お会計はここでする。メニュー表はこれ」


 レトが若干、無愛想さの残る接客をしている。もはや、これも客は慣れているらしく、とくに問題は生じていない。

 あと、普通にレトはかわいいしな。かわいさで誤魔化せている部分はあると思う。


「はい、お釣り銅貨2枚と、木札。間違いないよね? 席に着いたらまた見せてね。混んでるのでご協力お願いする」


「はいはい、レトちゃんにお願いされちゃどうしようもねえな!」「システムはよくわかってるから大丈夫よ!」


 常連たちは勝手知ったるので、とくに問題もなさそうだ。


「はーい、オルフェさん、カレーと牛丼と豚汁のセットでーす!」

 サンハーヤが木札を持ってきたのに合わせて、すぐに料理を召喚する。


「はい、牛丼と豚汁のセットな。なんか、かなり冒険者もライスに慣れてきたな」

 基本的に小麦文化圏のはずだけど、米も普通のものになってきてるようだ。おそらく、この「オルフェ食堂」限定だと思うけど。


「ですよね~。今日もたんまり儲かりそうですね~」

 サンハーヤは手をわきわきさせる。

「おい、やめろ……。聞こえたらイメージ悪いだろ……」


「聞こえるわけないですって。それに召喚のこと知らない人でもこの店が儲かってることぐらい、誰でも知ってますよ。これだけ毎日にぎわってるんだから」

「それは……そうだけど……」

 なにせ、毎日行列ができるのが当たり前だもんな。最近では王都に来る観光客の中でも定番のポイントとなってきているらしく、いろんな土地の言葉を聞いたりする。


 無論、とてつもなく儲かっている。そりゃ、材料費がゼロだからな。召喚すればするだけ儲かる。しかも、普段の食費すら、料理を作ってタダにできるのだから、いよいよ安上がりだ。


「これで貯まったお金で何します? もう、なんだってできますよ。ふふふふふ~。あっはっはっはっは~♪」

 やたらとサンハーヤは上機嫌だ。わからなくもないけどな。儲かってるって感覚があるから楽しいよな。


「当面はこの店ができるのにかかったお金を貯めなきゃダメだろ」

 店を建ててくれたディーズにお金は出さないといけない。向こうは催促なんてしないだろうけど、だからこそ、着実に返済していかないと。


「それはそうですね。それも、このペースなら割とあっさり支払えちゃうと思いますけどね」

 サンハーヤの言葉も事実なんだよな。これだけハイペースで利益が出れば、そんなに困難なく、費用も払えるだろう。


 むしろ、払うペースが速すぎておかしいんじゃないかと怪しまれるのを気にしないといけないぐらいだ。美食家ドワーフのディーズも材料費すらかかってないとは絶対に思ってないだろうからな。


「はいはい、料理を持っていってくれよ。冷めたら苦情が出るぞ」

「失礼しました! すぐに運んできますねっ!」


 サンハーヤの背中を見送って、俺は自分なりに考えてみた。

 お金の使い道か。

 たしかに無限に貯め続けるわけにもいかないし、何に使うか考えたほうがいいよな。


 たとえば、レトの教育費とか。

 レトって絶対に学校とか行ってないもんな。接してる感じだと頭は悪くないと思う。メニューの文字もすらすら読めてるし。けど、ある程度、基礎的な教育は受けておいたほうがあとあとつぶしが利くと思う。


 ていうか、それなら今からでも塾とか通わせればいいよな。どっちかというと、時間のほうが問題か。やっぱり、新しいバイトを雇うべきか……。しかしなあ……もしも変な奴を雇うと、それで俺たちの生活は崩壊するかもしれない。


 ひとまず、建物の費用を完済するまではこの状態を維持するか。もしも、借金だけ残ることになったら、大変なことになる。この建物購入するだけの額だと、ほんとに体売るレベルの話になりかねないからな……。レトへの基礎的な勉強は俺とサンハーヤでしよう。


 そんなことを考えていた日も、銀貨30枚以上の利益が出た。

 一人頭銀貨1枚(つまり銅貨10枚)も食べてるとは思えないから、四百人以上は客が来ている計算だ。とんでもない額だ。

 ひと月で銀貨1000枚分貯まるとして、半年もあればこの建物のお金も払えるんじゃないかな。


 もはや金銭感覚もマヒしてきたなと思いつつ、豚汁をずずずっとすすっていた。

 すると、カーン、カーンと来客を告げる小さい鐘が鳴らされた。


 あれ? おかしいぞ。

 だって、今は閉店後。余裕で夜なのだ。

 いったい、こんな時間に誰だ?


 サンハーヤが不安な顔になる。

「これ、強盗とかじゃないですよね? 儲かっているって認識されてますし、しかも郊外のお店で、付近の人通りは夜に全然ないですし……」

 そう言われると、一気に恐怖が押し寄せる。ほんとだ、人気のないところに住むって、かなりのリスクだな。とはいえ、都市部は都市部で火事で焼けるリスクとかもあるので、どっちもどっちではあるけど。


「イタズラの可能性もあるし、ちょっと待ってようか」

 すると、また、カーン、カーンと鐘が鳴る。どうやら、向こうはこっちに出てきてほしいらしい。


 これは無視するわけにもいかないな。

 俺はドアの前に行くと、のぞき穴から誰が来ているのかを確認する。あからさまに無頼漢みたいなのがいたら居留守を使うか。

 突入してきたらどうしよう……。用心棒とか雇うべきなのかな……。


 とりあえず無頼漢っぽさはなかった。むしろ、貴人と言えるぐらいに美しい織物のドレスを着ている若い女性だ。水色に近い髪もさらさらで、それと、やけに胸が大きい。肩がこりそうと心配になるほどに大きい。


 一応、周囲も見るが、とくに潜んでいる人間もいないようだ。

 俺はゆっくりと扉を開けた。

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