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サモナーさんの召喚するだけ3秒間クッキング ~大繁盛! ダンジョン前食堂~  作者: 森田季節
食堂ダンジョン前に開店!

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29/51

29 丼のつもりが

=====

ご注文の品をお送りいたします。

料理名:かつ丼

米・かつ・卵を三位一体にしたトリニティパワーが胃にまで直結する! 世には様々な丼がありますが、これぞ丼物の王者と言っていいでしょう! がっつり力をつけたら、お昼からの仕事も頑張りましょう!

お店によっては卵を半熟にするところもありますが、今回はしっかりと火を通したバージョンにいたしました。

=====


 俺はあらためて、かつ丼を召喚して、サンハーヤとレトに振る舞った。

 あらためてというのは、まだ二人には見せたことがなかったからだ。これがおいしいということはわかっていたけど、店に出す前にちゃんと試食をしてもらって、反応を見ないといけない。


 今のところ、該当したものはないが、二人揃って「合わない」という反応があったものに関しては店頭に出さないことにしている。

 もっとも、これは難しいかと思ったものは最初から二人に出すこともないというのもある。

 たとえば、生の魚。


 この料理が出てくるもとの世界は生で魚をよく食べるらしい。ただ、それは王都でやるのは無理だ。単純に鮮度を疑われる。活きのいいものと言っても生食できるほどの魚は普通、王都にないからな。

 どんな流通網かと思われて調べられたら、召喚して料理を出していることがばれかねない。


 で、このかつ丼はそういうリスクが何もない料理である。

「はい、無茶苦茶美味いです!」

「合格」


 すごくシンプルに二人とも答えた。

「あの、もうちょっと感想ほしいんだけど……」


「いや、だって、これはレトさんの言ってるとおり、合格ですよ。合格と言っていいだけの味ですよ。こんなの、冒険者絶対に好きじゃないですか。がつんと濃い味をむしゃむしゃ食べるわけですし」

「うん、合格」


 サンハーヤがもうちょっと具体的に答えてくれたけど、つまり、そういうことだな。

 この料理は安定しておいしい。


「これ、汁っていうんですかね、お米もかつもすべてひたひたになってるじゃないですか。それで本来別々のはずの要素が見事に一つのものになるんですよ。この作品にはたしか智慧が感じられます」

 なんかおおげさだな……。でも、文句なくおいしいというのはわかる。かつ丼に関してはケチをつけるところもない。店の客層にも合うだろう。徹底して冒険者好みの味だと思う。


「ちなみに本場だと卵が半熟のところもあるらしい」

「あー、そう来ましたか……。ちょっと卵の半熟は抵抗ありますね……。まあ、栄養はあるのかもしれませんけど……」

 サンハーヤの反応はだいたい読めていた。そりゃ、そうなるよな。この土地では生卵を食べる文化はない。


「だな。無理に合わないものを流行らせる必要もないか。とにかく、このかつ丼はメニューに入れるの決定だな」

 リピーターが増えているからこそ品数を増やす努力もいる。増やせてよかった。値段は牛丼よりちょっと高いぐらいでいいか。かつ丼のほうが牛丼より手が込んでる気はするし。


 ただ、ここで新規メニュー計画を頓挫させる気はない。


「二人にはまた違うメニューも見せてやれると思う。もうちょっとだけ待っててくれ」


 牛丼・かつ丼という二つのメニューには、ある共通点がある。いや、見たまんまだけど、

 丼だ。

 丼というのは、おそらく底の深い鉢を意味する単語で、この丼という単語が後ろについた料理がいくつもあるのだと思う。


 それとお米が使われているのも共通ではないだろうか。米は穀物だからパンの代わりに米を主食として食べる世界があっても、そこまでおかしいとは思わない。ちょっとパン食べたあとに牛丼とかきつそうだしな……。


 つまり、「~~~ドン」という単語をいろいろ試せば、ほかのメニューも呼び出せる。

 しかも「~~~ドン」という料理の形式は短時間でがっつり食べることを前提としているらしいので、冒険者の食事に極めて向いていると言える。


 俺は早速、新たな召喚の実験を自室で行った。


「ノルアルド・フェラン・アドン・バルコラードリィ!」


「ノルアルド・フェラン・バドン・バルコラードリィ!」


「ノルアルド・フェラン・ドンドン・バルコラードリィ!」


 さすがに雑に数回やっただけではダメか。まあ、失うものは何もないのだ。このまま続けることにしよう。


 そして、十五回目ぐらいのチャレンジの時だった。


「ノルアルド・フェラン・ウドン・バルコラードリィ!」

 唱えた途端、また光が起こった。よし! あの深い鉢の料理が出てくるはず!


 だが、出てきた料理は、俺の想像していたものとまったく違うかった。


 まず、鉢がそんなに深くなかった。

 かなり太くて白い麺がどどーんと鎮座している

 具とおぼしきものはそれいしかない。せいぜい緑色をしたネギが上に乗っているぐらいじゃないだろうか。


 そして、ラーメンのようになみなみとスープにつかっているわけでもない。ちょろっと黒っぽいものも底にあるだけだ。


「これ、どこからどう見ても絶対に『~~~ドン』シリーズじゃないよな……」


 ひとまず、説明書を見ると、「うどん」と書いてあった。

 これは独立した「うどん」食べ物なんだろうな。


 しかし、また得体のしれないものが出てきたな。これもパスタみたいなものなんだろうか……。

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