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サモナーさんの召喚するだけ3秒間クッキング ~大繁盛! ダンジョン前食堂~  作者: 森田季節
食堂ダンジョン前に開店!

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25 恩師に会いに行く

 さて、店が本格的に軌道に乗ったことで、少し顔を出したいところがあった。

 幸い、デザートのほうもある程度、形になってきた。これなら文句なく顔を出せると思った。


「あのさ、今度の休日、ちょっと出かけたいところがあるんだ。俺の知り合いでしかないし、俺一人で行くつもりだ。二人にとったら、とくに面白い場所でもないし」


 これは本心から言ったつもりだったのだけど、サンハーヤがにやにやした顔になる。


「それってもしかして好きな人に会いに行くってことですか~?」

「コイバナだと期待したのだとしたら、普通に違うぞ。そういう要素はない」


「でもでも~、お店を持てて一人前になったからこれで会いに行ける的なことってありそうじゃないですか~」

 それ自体はけっこういい線をついているんだよな……。別に屋台時代に行ってもよかったんだけど、少し行きづらかったのは事実だ。


「そんなに邪推するんだったら、答えを言ってやるよ。それですぐ納得するだろうから」

 サンハーヤはそれでも禁断の恋ではないかとか言い出したが、そんなわけはない。



 そして、休日の土曜日。「オルフェ食堂」は土日が休みだ。冒険者は休日なんて、火曜にしようと木曜にしようと自由なのだが、こちらは土日ということにさせてもらっている。

 俺は王都のほうにぶらぶらと足を進めた。

 目指すはサモナー養成の専門学校。


 そう、恩師ともいえるミルカ先生に会いに行くのだ。

 休日だから専門学校も休みなのだが、ミルカ先生はちゃんといる。というのも、特殊なモンスター召喚の研究を休日にやっているからだ。先生は講師であると同時に研究者でもある。


「あっ、先生、いらっしゃいますか?」

 部屋に入って声をかけると、先生はびっくりした顔をしていたけど、すぐにその表情は笑みに変わった。その机には、甘いお菓子がいくつも置いてある。研究者は頭を使うから、甘いものがほしいんだろう。


「あら、オルフェ君が来るなんて! まあ、座って、座って! お茶ぐらいなら入れるから!」

 ソファに座って、俺は先生とお茶をすることになった。


「いや~、オルフェ君が来てほっとしましたよ。サモナーの試験の後に、全然顔を見せてくれないから」

「あっ、やっぱり、そこのところで心配されてましたか……」

 じゃあ、今日、やってきて正解だったな……。


「とくにオルフェ君はモンスターになつかれないタチだったんで、サモナーになれたか心配でした」

「そういうふうに先生からは見られてたんですね……」

「もちろん、努力で補える部分もありますよ。だから、専門学校があるんです。ですが、ほら、ペットになつかれる人となつかれない人っていますよね。あれと同じようなもので、先天的に不利な人がいるのも事実なんです」


 もう卒業生になったからか、先生もあまり飾らずに言葉を使っている気がする。こっちとしても気楽でちょうどいい。


「というか、来ないということは、やっぱりサモナーになれなかったのかなと諦めていました。人間、そういうこともありますよね。しょうがないですよね……」

 ちょっと、気まずい顔になるミルカ先生。ああ、合否わからないまま会話するの、疲れるよな……。早く言ってしまおう!


「先生、俺はサモナーにはなれました」

「ほんとですか! よかった! 本当によかったです!」

 我が事のように喜んでくれているのがすぐにわかって、俺もうれしくなった。でも、まだオチがあるんだよな……。


「ただ……『モンスター使役力』が1で、『魔法力』も0でして……」

「そんなにひどかったんですか……」

 先生もその数字を聞いて、呆然としてしまった。

 つまり、どんなモンスターも使役できないというのが明らかな数字だ。


「ごめんなさい。こんなことなら、あなたは向いていないから諦めたほうがいいと、もっと強く言うべきでしたね……。これじゃ、かえって可能性が閉ざされているとすら言えます……」


「そんなことはないですよ」

 ここははっきりと言わないといけないな。


「俺は先生に教えてもらったおかげで、サモナーになれたんです。ここまで素質ない俺のことですから、先生がいなきゃサモナーにもなれなかったでしょう」

「でも……サモナーとしては生きていけませんよね……?」


「けど、違う特性があったんですよ。それを今からお見せしたいと思います。ちょっと、職員室の厨房をお借りしていいですか?」

「厨房って言ってもお湯を沸かしてお茶を作るぐらいしかできないと思いますけど」

 先生、食堂のことも全然知らないんだな。それだけ休みの日もずっと研究に精を出してたってことだろう。


「いえ、それだけあれば、大丈夫です。今の俺、『オルフェ食堂』って店でけっこう成功してるんです」

「あっ、そういえば生徒さんがそんな名前のお店ができたとか言っていたような……」

「今日はお店にもまだ並んでいない甘味を作りたいと思います。先生、いつもお疲れみたいですからね」


 目のクマができたまま、授業をしている時もよくあったな。それでも、授業中は絶対に眠そうな顔をしてなかった。


「わかりました。じゃあ、お願いしますね……」

 ミルカ先生はまだ少し戸惑い気味というか、半信半疑って感じだったけれど、期待が高すぎないほうがこっちは楽かな。


「はい。最高のおやつを提供しますよ。しかも食べたこともないおやつを」

「へえ、もしかしてフルーツケーキみたいなカラフルなものですか?」

「あっ……。カラフルさはないですね……。むしろかなり黒いです……」

「黒……?」

 しまった。変に不安にさせてしまったな。


 ぜんざいというやたらと黒い料理なんだ。

というわけで、次回、ぜんざいを作ります!

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