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2 サモナー失格

 緊張した面持ちで神殿に行くと、かなり混み合っている。やっぱり冒険者になりたい奴は多いんだろう。


 ちなみに、ここで決められる職業はあくまでも冒険者用のものだ。雑貨店の店員とか冒険者と関係がない職業になることはないし、そういう人は普通に就職活動をして、その職業につけばいい。


 入口で下っ端の見習い神官から、整理券をもらう。580と書いてあった。500人以上いるのかとびっくりしたけど、五百番台以降は昼の部ということで、午前の部は150番までで打ち切りらしい。つまり、俺は昼の部の80番目あたりということか。


 別に試験があるわけではないので、周囲の人間は気楽そうな顔をしているが、一生を左右する日なんだから、もうちょっと意識するべきだろ。


 近くのカフェで時間をつぶして、再び俺は神殿に向かう。

 しばしの待ち時間のあと、外とは比べ物にならないほど静まり返った部屋に通された。普段の礼拝の時はここまで通されることはないらしい。


 高位の神官が神像の前に立っている。

「それでは580番のオルフェさん、今からあなたの職業を決定いたします。もういいですと言うまで、目を閉じていてください」

「はい」


 俺は素直に言われたとおりにする。


 こういう時、余計なことをして変な職業をもらってしまったなんて話をどこかで聞いたことがある。自分の人生でふざけてはいけない。


 落ち着け、落ち着け。

 俺は真面目に授業も受けてきた。

 サモナー以外の職業になる可能性など、皆無のはず!


 体にあたたかい光が当たっているような感覚がある。

 今、神が俺に職業を与えているんだろうか。


「終わりました。目を開けてください」

 俺はゆっくりとすがすがしい顔で瞳を開いた。


 しかし、なぜか神官の顔がひきつっていた。


 嫌な予感がした。


「もしかして聞いたこともない職業なんですか……?」

「いえ、あなたの職業は……サモナーです」


 なんだ、じゃあ、俺は大成功だったわけだ。


 俺はサモナーとして第二の人生を送るんだ!


「職業が決定した方は、自分のステータスを見ることができますので……」


 そうだった、そうだった。ステータスを見れることこそ冒険者のあかしだ。

 とくに、サモナーで重要なのがモンスター使役力という特殊な能力値。これが高ければ上級のモンスターも手なずけることができる。

 さあ、どうなってる、俺のステータス!?


=====

オルフェ

職業:サモナー

レベル 1

体力   12/12

攻撃力      5

守備力      4

素早さ      4

賢さ      28

魔法力    0/0

その他

モンスター使役力 1

異世界干渉力 204


◇使用可能魔法◇

召喚全般

知識さえ積めば使用可能

=====


「…………モンスター使役力が1ですね」

「そうなりますね……」

 目をそらして神官が言った。


「あの、すいません、モンスター使役力1というのは、どの程度のものなんでしょうか?」

「ほかの人ならなつく野良猫すら逃げ出すレベルです」

 一般人以下ということか……。


「おそらくですが、あなたはまったく動物と触れ合うのに向いてない体質にもかかわらず、サモナーとしての知識自体はしっかり学んでしまったのでしょう。その結果が、こういった悲劇をもたらしてしまったのですね……」


 いや、神官さん、すでに俺の人生を悲劇認定しないでほしいんですが……。俺、まだ十七歳だし……。


「いや、そんなことはないはず! 召喚魔法は使えることになってるし、ちょっとずつモンスターと触れ合っていけばいいんだ!」

「危険です! 出てきたモンスターに殺されますよ!」


 チャレンジすることすら止められている!


「あと、そもそも論なのですが、オルフェさんは魔法力が0なので何も召喚できないはずです。スライムすら魔法力が4は消費しますので」

「ああ、なるほど……。じゃあ、使用可能魔法が召喚全般になっているのは……?」

「サモナーは召喚全般のものは知識があれば皆さん、使えますので」


 つまり、俺は形の上だけサモナーで、ただしサモナーとしては何もできないという状態らしい。


 絶望しかない。


 これだったらいっそウォリアーとか全然違う職業のほうがよかった……。魔法力がここまでないということは、魔法の才能が根本的になかったのだ。


 けど、もう一つよくわからない能力値があった。

「すいません、異世界干渉力って何ですか?」

「長らく神官をしていますが、見おぼえがありません」


 どうやらエラーのような事態まで発生したらしい。もう、どうとでもなれだ……。


 田舎から王都に来て、一人暮らしをして二年。学費と仕送りは実家が農業でためたお金で払ってくれた。

 これからは冒険者としてしっかり働いて返していくぞと意気込んでたけど、そもそも冒険者にすらなれないとは……。


 実家に報告するのは後にしよう。手紙が全然来なかったら、向こうもこっちが落ち込んでると察するだろう。今日や明日に郵送すると、きっと吉報だと誤解されたまま開封されてしまう。


 専門学校の先生に報告するのも後日にしよう。しばらくはサモナーになれたという喜びの報告に行く奴ばっかりだろうし、そこに落ち込んでる奴が来たら向こうも対応に困るだろう。


 かといって、住んでるボロ長屋に帰るのも空しいな。


「ためしに王都近くのダンジョンに行ってみるか」

 徒歩三十分ほどのところに「腕試しの洞窟」と呼ばれてる地下5階層までしかないダンジョンがある。まず、ビギナーはそこで経験を積むのだ。


 そこなら俺を必要とする駆け出し冒険者がいるかもしれない。

 そうそう! 最初は頭数がほしいから俺だって必要なはず!



 俺を必要とする奴はいなかった。

「腕試しの洞窟」の前はにぎわっていた。パーティーを組んだばかりの若い連中が、きゃっきゃしながら洞窟を出たり入ったりしている。


「初日お疲れ様ー!」「私、超面白かった!」「じゃあ、打ち上げに酒場行こうぜ!」「打ち上げの酒場、テンションあがるねー!」


 くそ、リア充新人たちめ! いまいましいし、うらやましい!


 ダンジョンの入り口近くの壁際に座って、いかにも冒険者ですという空気を出してみるが、誰も声をかけてこない。


 どうやらここに来る前に、ほぼ全員パーティーを組んでいるようなのだ。多分、神殿の前とかだろう。俺は神殿の前とか、一番憂鬱な顔をしているタイミングだから、きっと誰も声をかけなかったんだろう。


 やることもないので、カバンの中をあさる。

『召喚魔法必携』という教科書が出てきた。

 サモナーになったら、何か召喚しようと思って入れていたんだ。


 魔法力が0だから、何も出せないんだよな……。


 ためしに適当に詠唱してみてやろうかな。

 ぱらぱら開いて出たページは、巨大オクトパスを召喚する上級魔法。

 こんなのレベル20ぐらいでやっと出せるものだし、水辺じゃないところで出してもあまり意味がないけど、詠唱してみるだけならタダだ。


 俺はテキトーに本を見ながら呪文を口にする。


「カニンタ・コヤ・キーツバスノア・エル・グル・ヴァシアファイファピ」


 すると――俺の目の前の地べたが突然まばゆく発光した!

次回、B級グルメが出ます!

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