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12 ラーメンいろいろと猫耳少女

日間2位に上がっていました! ありがとうございます! これからもしっかり更新します!

=====

メニュー

ラーメン

ショウユラーメン 銅貨5枚

シオラーメン   銅貨5枚

トンコツラーメン 銅貨5枚

ミソラーメン   銅貨6枚

ギョウザ

ギョウザ     銅貨3枚

スイギョウザ   銅貨3枚

ミソラーメンとギョウザのセット 銅貨8枚

他のラーメンとギョウザのセット 銅貨7枚


タコヤキ     銅貨4枚

トンジル     銅貨3枚

ウメボシ(3ヶ) 銅貨2枚

=====


 数日のうちに「オルフェ食堂」ではラーメンのラインナップが大幅に増えた。

 これが人気に拍車をかけて、立ち食いが当然の店になってしまった。


 もはや冒険者のためだけの店ですらない。「郊外にある話題のお店」という立ち位置になってしまっている。


 さっきなんて、城を警備する兵士が四人組でやってきていた。城からここまでそこそこ距離もあるのに。ちなみに違う味のラーメンをそれぞれ頼んで、シェアしていた。


「塩はすっきりした味だな。もちもちした麺と合うぞ」「ショウユというものの、さっぱりした鶏のスープの風味もいいな」「トンコツというやつの、どろりとしたスープこそ男が食べる料理だ!」「それならミソってのも負けてないぞ!」


 変わった料理を食べると自然と話がはずむ。

 そう、料理はコミュニケーションツールでもあるんだなと、この店を開いて感じた。


 謎の料理ばかりを出す変な店――そのポジションはこのまま定着しそうだ。


 最初は、訳のわからない店をやるというのは難易度も高いかと思ったんだけど、杞憂だったな。王都の近くというのもよかったんだと思う。一般に、都市部の人間のほうが、田舎の人間よりは革新的と言われている。


 まあ、都市部は田舎より変化のスピードも激しいから、新しいものに耐性があるということはあるかもしれない。


 ちなみに説明書の言葉を信じるなら、しょうゆラーメンは鶏ガラベースで、塩ラーメンは貝からもダシをとっているらしい。トンコツは香味野菜を加えつつぐつぐつと煮込んだものものを使っている(という)。


 説明書を読むかぎり、かなり面倒な料理である。少なくとも家庭で何時間も煮込むというのは難しいだろうから、家庭料理ではないようだ。もしや異世界の宮廷料理みたいなものを召喚してしまっているのだろうか?


 利益はかなり出ているが、もはや利益を考えるより前に休憩時間のほうを考えないとダメになってきた。


 俺とサンハーヤしかないので、休憩に入ることがなかなかできないのだ。昨日なんて、「ここまでで店じまいです!」とサンハーヤが言わないといけなくなった。閉店間際まで列が途切れなかったせいだ。


 今日のサンハーヤもかなり疲れていた。

 なんとか営業スマイルを作っているが、ぞろぞろやってくる客に対応するのに余裕がなくなってきている。

 たまに足が千鳥足になっているのだ。


「追加注文です……。塩セットイチ、ショウユ大盛りイチです……」

「大盛りなんてメニューはないぞ!」


 料理ごとにしか召喚できないので、いつもより多目の量で召喚するようなのは無理だ。


「あっ、本当だ……ちょっと取り消してきます……」


 やつれた顔でサンハーヤは戻っていった。


 深刻な従業員不足……。

 これは今後の経営について真剣に考えねばならないな。


 店舗もテーブルと椅子を並べただけというのじゃなくて、ちゃんと建物にしたほうがいい。

 その場合、ダンジョン前の市と言い張るわけにもいかないから、国に届け出る必要があるが。

 ダンジョン前で市を開くのは、慣例として認められている。ダンジョン周囲は、特定の土地所有者がいない土地だ。しかし、建物を作るとなると、土地を管理する国に言わないとまずい。


 家賃はかなりするんだろうか。飲食店初心者なので相場もわからない。


 明日は定休日ってことにしよう。このままサンハーヤが無理をすると、本当に倒れかねない……。



 そして、定休日。

 休みといっても、俺とサンハーヤは朝から動いていた。

 まずは役所に行って、建物を作った場合にどれほどお金を納めないといけないか確認。


 法的に俺たちの所有物にできないので、毎月家賃を払い続けることになるとのこと。

多少、高くつくのはいいか。

 続いて、当座のために大き目のテントを買った。雨天時にまったく働けないというのは困るからな。


「やっぱり、あれですね、材料費がかからないというのは最強ですね」

 サンハーヤがテント用の防水魔法がかかった革が載った荷車を押しながら言う。


「マジでそれな。食品廃棄ロスがないのは飲食店として有利すぎる」

 そんな話をして、橋のあたりに行きかかった時だった。


 橋の中央で物思いにふけっている女の子が一人いる。


「はぁ……」

 そんな疲れたため息を女の子は吐いた。

 猫の耳と尻尾がついているから、獣人だとすぐにわかった。服装からして、どこかのメイドだろうか。獣人のメイドがいてもそうおかしくはない。


「あら、たそがれてる人がいますね~。いいですね、青春ですね~」

「いや、サンハーヤも見た目は青春してそうな年齢だけどな」


「私、今年で四十ですからね。もう、四十代はババアですよ。四十代は年増、許せるのは三十代までだって人間のロリコンの人が言ってました」

「それってロリコンの人の意見だからあまり参考にならないと思うぞ……。サンハーヤも人間の見た目だと十代なかばだし……。いや、そんなことはどうでもいいんだ」


 なんか、その獣人の少女を見ていて、不吉な予感がした。

 そして、橋の手すりにぴょんと獣人少女は飛び乗った。


「あっ、まずい!」

「へえ、さすが猫の獣人ですね。素晴らしい跳躍力です!」

 そこを評価してる場合じゃないだろ!


 俺はあわてて橋のほうに走った。

「早まるな! たいてい、若い頃の悩みは小さなことだ!」

 そう決めつけていいのかわからないけど、少なくとも銀貨一億枚の借金なんてものを若くして背負うことはないだろう。とにかく死ぬのはやりすぎだ。


「えっ……?」

 少女が驚いた顔で振り向く。


 けど、そんな俺を通り過ぎていく者があった。

「ダメです、ダメです! 死ぬぐらいならおいしいもの食べれば気持ちも変わりますから! 生きようって思えますから!」


 サンハーヤだ。

 そして、サンハーヤの言葉に俺はちょっとうれしくなってしまった。

 おいしいもので気持ちが上向きになって、サンハーヤが生きようと思えたとしたら、そんな光栄なことはない。


 しかし、サンハーヤの勢いは強すぎた。

 そのまま、猫耳の少女に抱きついて、手すりを越えて――


「止まることを忘れてました……」


 一緒に川に落ちていった!

次回は、まとめて2話更新する予定です。しばらくお待ちください!

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