表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切な人  作者: ヤブ
4/4

美咲の過去と、これからの関係

 美咲は中学生の頃、いじめにあっていたという。それはクラス全体で行われており、無視されたり、物がなくなったりということがあったらしい。小学生の頃から仲良しだった子からも無視をされて、心はずたずたになったことだろう。


 特に辛かったのが、あの三人のいじめだったという。あの三人は、他の子よりも乱暴ないじめを繰り返した。雑巾を投げつけたり、体育館の倉庫に閉じ込めたり。彼女はあの三人の高らかで下品な笑い声を聞くたび、一人で震えていたと、泣きながらいってくれた。人が笑っていると、すべて自分のことで笑っているんだと、いつも被害妄想をしていたらしい。


 高校はあの三人と別のところへ行き、少しは楽になった。しかし、友達が出来る自信はなかった。話しかけても無視されたらどうしよう、そう思うと声をかけることができなかった。話しかけられても、笑うことができなくて、友達はできなかった。次に話しかけられたときは、ちゃんと笑おうと思っていたとき、私が声をかけたらしい。その時、とても嬉しかったという。


 あの三人に会ったとき、もし私を友達だと言ったら、美咲だけでなく、私にも被害がいくかもしれない、そう思って、友達じゃないといったようだ。


 私は美咲に質問をした。何故、私について知ろうとしなかったのか。美咲は言った。


 いじめられる前、美咲はなんでも知りたがる子だったらしい。なんで、どうして、とずっと言っていたという。しかし「お前、なんでなんでってうざいんだよ。お前なんかに教えるわけないだろ」と言われたという。それから数日後、いじめが始まった。それが影響して、今でも人の事は聞かないようにしている、いやそうなってしまったようだ。


 私は言った。知ってほしい、と。そんなことは絶対に言わない。だから、たくさん知ってほしい。そういうと、美咲は泣いた。けど、少し笑っていた。


 もうすぐ、美咲が乗る電車が到着する。改札に向かう直前、美咲は聞いた。


「私達、友達?」


 私はうん、と言いかけて、止めた。


「違うよ、友達じゃなくて――」





「――そんなことがあったな、美咲」


 私は美咲がいるであろう場所に向かって言った。私の目の前には、美咲の墓石がある。


「美咲が死んで一年が経ったけど、もう十年も経ったように感じるよ。天国でも、元気にしてる?」


 美咲は一年前に病気で死んだ。美咲がいない一年間は、とても長かった。


「美咲、君は私の自慢の妻だったよ。今でもね」


 あれは、もう二十年以上前の話である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ