美咲の気持ち
彼女の誕生日が過ぎた頃から思い始めた。彼女は私の事を何も聞いてこないと。私は彼女のことを知りたくてたまらない。しかし彼女は私がした質問をしてこない。私は別に彼女の事さえ知れたら良いので、自分の事は自分からは言わない。しかし、もしかしたら彼女は私の事を全く知らないのではないだろうか。そう思い、私は一緒に歩いているときに自分の事をどれくらい知っているのか聞くことにした。
「みさ――」
「あれ? もしかして、美咲?」
私の声はかき消された。声をかけてきたのは他校の女子だった。
「あ、本当だ」
「きゃー。偶然じゃーん」
隣にいた二人の女子も話しかけてくる。美咲に同じ中学校の子か聞こうと思い顔を見ると、彼女にさっきまでの笑顔はなかった。むしろ、怯えているようだった。
「あ、となりにいるのって、友達?」
一人の女子が私の方を見る。なぜか、不思議そうに私を見てくる。
「あー!」
一人の女子が声をあげた。
「もしかして――」
「違う」
そう言ったのは美咲だった。
「この人は友達じゃない。ただのクラスメイト」
私は意味が分からなかった。
『友達じゃない』? 『ただのクラスメイト』?
「そうだよねー。美咲に友達が出来るわけないもんねー」
私は美咲と友達ではなかったのか? 今までのはなんだったんだ? プレゼントを渡したらあんなに泣いてくれた。私に向かって笑ってくれた。あの全てが嘘?
「友達になりたかったけど、無理だって言われちゃった」
え?
「当たり前だよね」
当たり前? 何が?
「そーだよー」
「そんな無茶なことしちゃダメじゃーん」
「美咲は美咲らしくい・な・い・と・ね」
何も分からなくなった。
三人の女子が美咲を囲むようにして話す。そのせいで、美咲の顔が見れない。笑っている? 喜んでいる? 美咲との今までは何だったんだろうか。
「ほら美咲! ちゃんと謝っとこ?」
「そーだそーだ! 迷惑かけてごめんなさいって」
美咲は私の方を見た。どんな顔をしているのかとても気になる。
「……迷惑かけて、ごめんなさい」
彼女は大量の涙を流していた。あんなに悲しそうな顔は見たことない。そのまま、彼女は走って帰ってしまった。三人の女子の笑い声だけが、耳の中で響いていた。