私のためのバースディパーティ
前回の話での夜会を『建国祭の』夜会と付け足しました。
「ルンルルーン♪」
「今日は1段と機嫌がよろしゅうございますね」
「ふふ、だってー」
そう、今日はものすごく機嫌がよいのだ
本日は私、ユリス・ルーズフェルトの7歳の誕生日なのだぁー!
誕生日は何もしなくていいんです。
朝も遅く起きていいし、勉強も淑女教育も今日だけは休みなのです!
なんといっても誕生日ですからね
前世、あまりに淋しい一時でしたからね
とはいっても、昨日、言われて初めて気づいたのですがね〜
「ふふ、お嬢様。去年よりはしゃいでいらっしゃいませんか?」
「そんなことないわよ、エミリ」
「そうですか?」
そういって、私、専属の侍女、エミリは髪を綺麗に結う。
「できましたよ、お嬢様。」
鏡を見ると、編み込みに...なにしてるかさっぱりわからんが、とにかくすごい出来。毛先が少しカールしてるのは癖です。
「相変わらず、すごいね」
「ありがとうございます。」
「では、行きましょうか。」
「はい。」
意気込みを入れてドアを開く。
さぁ、行こう。
なにしろ今日は私の誕生日。
楽しい楽しい1日。
お父様を暴走させないようにしないと!
───────────────
「おはようございます!」
現在、時刻12時ジャスト。
この時間でおはようは微妙ですよね
ちなみに日時の数え方は日本と同じ。
まぁ、1ヶ月は一概にして30日ですが。
時計というものはあるにはあるが、普及しておらず、知らせるのは鐘の音。朝1回が6時、朝2回が8時という感じで2時間おきに鳴る。
朝3回、昼3回、夜3回、深夜3回となる。
さっき、聞こえたのは昼1回つまり、12時なのだ。
閑話休題
扉を開けたその先には...
パーン!
「ユリスー!誕生日おめでとうー!!」
はい。言わずも知れたお父様です。
お父様の暴走1、才能の無駄使い。
さっきのパーンという音はクラッカーのようなもの。お父様が火と風でやってます。
紙吹雪は手作業。
使用人さん、ご苦労さまです。
「はい。お父様、ありがとうございます。
......そして、燃えてます。」
「え?あぁー!」
ほんと、やりすぎです。
近くにあった、机が燃えてます。
はぁ...ウォーターフロー
すぐに鎮火ですけど...
「こら!ランディ!いつもいつもやりすぎです!」
ひぇーお母様もお怒り...
「...まぁ、ここで怒るのも野望ですものね。さぁ、ユリスちゃん、席について。今日はご馳走よ!」
「わぁ!」
これまた壮観。ほんとにご馳走が目の前に並びます。
...これが夜だったらなー
机に所狭しと並ぶ料理たち。
お肉系が多いのは気のせい?
朝から胃もたれしそう...
いや、まぁ、昼なのだけどね
この国では、誕生日に朝(昼)にご馳走は一般的なのです。ブランチみたいな感じです。
で、夜はパーティーです。
え?パーティーって食べるんじゃなくて?
まぁ、食べますけど、それはあくまでお腹が空いた時で、メインはダンスとかですよ。
「よぉ、ユリス。おめでとさん。6歳になったんだっけ?」
「...ありがとうございます、アレク兄。7歳です。」
「ほぉ、そうだっけか?」
「はぁ、アレク、そのぐらい覚えておきなよ。この分じゃぁ、自分の年さえも忘れてそうだね。...おめでとう、ユリス。」
「ありがとうございます。ハルト兄。」
「ささ!そこで突っ立ってないで、いただきましょう。」
「はーい。」
──────────────
「お母様、ダメです。」
「ほら、もうちょっとよ。」
「ダメですってばー」
「う...」
「はい。出来上がり。」
「くるしい...」
ご飯後にコルセットは苦しいです。
胃の中のものが出そうです。
それ以前に食べすぎて動けません。
うぅ...お父様め...
お父様の暴走2、ご馳走をこれでもかというぐらい食わせる。というか、作らせる。
さっきも休ませてと懇願したのですが...
お母様曰く...
「あら、食べたからこそ体動かなくっちゃぁ!」
だそうで...
頼むからもう少し休ませてよ
今は午後の部。
もうすぐ、ダンスが始まります。
ダンスといっても一応、形は社交用ですが、そこまで堅苦しいようなものでもないのですが...
なにしろ、相手は...
「最初の相手としての名誉に与らせていただいて光栄です。」
「はい。よろしくお願いします。」
膝を折って、手をとるのはハルト兄。
こんなイケメンが相手で足とか踏めるわけねーだろー!!
ちなみにお父様とこの最初の相手券を巡り、激しい争いになったことは言うまでもない。
アレク兄は面白いからと言って、参戦したのですけどね。
よーし、集中。
曲が流れ出す。始めのステップから...
あれ?......すごく踊りやすい。
ダンスの講師より踊りやすい。
「ふふ、ユリス。そんなに緊張しなくてもいいよ。足を踏んでもいいから、僕についてきて。」
いえいえ、足を踏むなど考えられません!!
いやぁ〜それにしても本当に踊りやすい。
さすがはハルト兄だね!
1曲目が終わり、次はお父様と、最後にアレク兄と踊りました。
あぁ、アレク兄は絶望的にダメですね
もちろん、私だけでなく、お母様も使用人までもが踊ったりしてました。
あぁ、いいなぁ〜
温かいなぁ〜
やばい、涙でそう。
その後もパーティーは続く。
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あれよあれよという間に夜もだいぶふけってきました。
そろそろお開きかなぁ〜
「ユリス〜ちょっと来て〜」
「はーい。」
なんだろ?
「じゃぁーん!」
「うわ!眩しい...」
なに、何事?
目を開けると...
「え?」
ケーキ?
え?ケーキってこの国にあったっけ?
いや、ケーキのようなものはあるけど、これは...
いわゆる、バースディケーキ?
それも一般的なショートケーキ
「ふふ、驚いとりますな」
「これは、いったい...」
「前にお嬢様がおっしゃっていたショートケーキにございますよ。」
「え?でも、クリームは?いちごは?」
そう、クリームもいちごもこの辺りじゃぁなかったものだけど
「それは、お父様の人脈のなせる技だよ」
自身満々に言うお父様。
......ショートケーキ。
私だけの、私のためのバースディケーキ。
「えぇ!ちょっと、ユリスちゃん?」
「うぅぅ...」
私のバースディケーキ。
友達の誕生日会で見たそのケーキ。
羨ましかった。欲しかった。
でも、ついぞ食べれなかった。
それが、目の前にある。
この世界にないのに、クリームもいちごも探さないとないのに、ちょっと、口走っただけなのに
お父様が探し、料理人が試行錯誤して作り上げたショートケーキ。
あぁ、なんて幸せなんだろう...
「ユリスちゃん、どうしたの?」
「うぅ...だって、嬉しいんだもん」
「はは、ユリス、そんなに泣くほど嬉しいか?」
「うん。」
嬉しい。本当に嬉しい。
「お嬢様。そんなに...」
「ちょっ、なんであんたまで泣いてるのよ。」
なんか、みんなまで涙ぐんじゃいました。
「ふふ、ユリス。」
「おかぁさまぁ」
「お誕生日、おめでとう。」
うぅ...お母様〜
「ありがとぉうござぁいまず」
ちょっと濁ったのはご愛嬌。
「ふふ、ついでにこれはプレゼントよ」
「プレゼント?でも、さっき...」
「ふふ、これはまた別よ」
小包を開けると入っていたのはドレス。
赤というと派手なように見えるけど、ピンクに近い、明るい色に薔薇のコサージュ。裾はふんわりとしいる社交などに使う高級なドレス。
そういえば、最近、サイズ測られたような気がするなぁ〜
なんで、こんなドレス?
社交デビューってこんなにも早かったっけ?
そんなことを思っているとお母様から爆弾発言が
「ふふ、今度の建国祭の夜会にはこれを着てってね。」
は?夜会?
建国祭の夜会って...
「えぇーーーーー!王家の夜会!!」
この日1番の大声を上げてしまいました。
「ふふ、そうよ。夜会までもう特訓だね」
「え...ええーーーーー!」
「ふふ」
「まぁ、がんばれ」
そして、夜はふける。
夜遅くまでその屋敷には笑い声が響きわたっていたとさ。
「ほら、ユリス。これやるよ」
「すごい、アレク兄からプレゼントが来た!」
「おい、なんか失礼じゃないか?」
「アレクが珍しいな。」
「ハルト、お前なぁ......だって、あいつがさぁ、妹の誕生日にプレゼントを用意するのは当然!って張り切って...あー言わなきゃよかった...」
「アレク兄、ありがとう。私、感動しちゃっ......え?」
「んーなんだ?」
「アレク兄、これなに?」
「あぁ、かっこいいだろ」
「うん。熊の木彫りとかアレク兄らしいね」
「だろ!」
「...ユリス、私からのプレゼントだ。」
「ん?わぁ!羽ペンだ!うん!ハルト兄らしいね!!」
「おい!なんか俺の時と反応違くね?」
「ふふ、アレク兄もハルト兄もありがとうございます。」
「ちょい!今スルーしたな!」
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なんて1幕も
閲覧ありがとうございました。