表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

悪魔の棲む街

僕の名前は、桐ヶキリガヤ礼二レイジ、16歳の普通の男の子だ。


近所の住民からは親しみを込められて、


レイジと呼ばれている。


僕の住んでいる街は変わっている。


年間犯罪率300%を超える超異常都市だ。


『シーサイドシティ』


それがこの街の名前だが、実際にはこう呼ばれる方が多い


『死の街』


1日に3人以上死んでいる街にはピッタリな名前だろう。


この街をよく知らない人はこう思うだろう。


『そんな危険な街にどうして住んでいるの?』


『警察は何をしている?』


『そんなに死んでて、よく街が成り立つね』


うん、よくわかる。


僕がこの街を知らなくて、もし人から教えて貰ったら必ずこう質問すると思うから


じゃあまずは、『警察は何をしている?』から答えようか。


まず、この街は最初はただの犯罪者の隠れ家みたいな街だった。


犯罪を犯した人がここに隠れる。


当然、警察は捜査のためにこの街に来る。


そこで、逮捕されたりまぁ色々あったりしたらしい。


だがある犯罪者がこう言った。


『捜査に来るやつらを殺そう』


それは自分達が捕まらないために行った防衛の案だったのだろう。


もちろん、犯罪者達は最初は躊躇ったらしい。


しかし、1人殺すごとに警察はビビっていく。


捜査の手も徐々に緩くなっていくのだ。


そこで犯罪者達は確信する。


ーこの方法は素晴らしいーと


そこからは躊躇は無かった。


1人入れば殺し、2人入れば2人を殺す。


集団で来れば、作戦を立て皆殺しにする。


もちろん、警察は軍隊などを出したかったはずだろう。


しかし、この街には普通の住人がいる。


下手な事をすれば、世間的な、社会的な地位が脅かされるかもしれない。


だから警察は人を投入することしか出来ず、そして、やがてそれすらも止めてしまった。


コレがこの街の始まり


次に『住人はどうして減らない』だが


この街の住人は


犯罪者か商人


ーーもしくは、能力者しかいない。


能力者


それは、超常現象を起こす人達のこと


火を吹いたり、手から水を出したり、能力者によって能力は異なる。


そして能力者は、世間にバレると決まった場所に収容される


名前は様々だが、要は人体実験場


そこでは、非人道的な実験をされ


殺されもせず、しかし生きてても地獄の様な目にあうらしい。


だから、能力者はこの街には来る。


警察すらも介入できないこの街に


そして商人だが、この人達はほとんどが能力者だ


物を作り出す能力系の人達が、物を売る。


いや、この街に通貨と言う概念はないから売るでは無く、あげるが正しいだろう。


そして商人は重宝される。


それは犯罪者達からもだ


なぜなら、金と言う概念が無くても、食うものが無かったり、生活に必要な物が無かったら、生きていけないからだ。


だから、この街で商人が死ぬことは滅多にない。


あっても事故死とかぐらいだ。


そして最後に、『どうしてこの街に住んでいるの?』だが


コレは簡単だ。僕の母親が能力者だからだ


父親は殺された。もちろんここに来る前に


そして母親も死んだ。病死らしい


じゃあ今の母親は誰なのかと言うと


母の妹も、指名手配とされていて一緒に逃げて来たのだ。


だから、まぁいわゆる叔母さんが僕の母親をやっている。


最初は違和感があったが、今では当たり前の様な存在になっている。


僕をここまで育ててくれた事はもの凄く感謝している。


で、前置きはこの辺にして


今、僕は何者かに尾行されている。


正体は知らない


あまり面倒ごとに巻き込まれたくないので知りたくもないが、どうしようか迷っている。


まぁ、とりあえずこの後の予定を済ますか


僕はそう思い、ある場所に向かった





「はい、授業はここまでです。桐ヶ谷くん、何か質問はありますか?」


「ハンス先生、レイジで良いっていつも言ってるじゃん。」


「ダメです。僕と君は教師と生徒。教師がそんな舐めた態度で生徒は教えられません。純子さんにもそう言われてるんだから」


純子さんとは、僕の母親の事だ。


この人はハンス先生


僕の家庭教師みたいなものだ。まぁ家庭でやってないが


この人も商人


知識を売っているから立派な商人だ


「ねぇ先生、ストーカーをどうにかする方法って知ってる?」


ストーカーとは、僕を最近尾行している奴のことだ。


「え?桐ヶ谷君、ストーカーされてるの?」


「違うよ、ただ知りたいだけ」


まぁこの人にわざわざ言う必要もない


「ふーん」


とハンス先生はニヤニヤと笑う


あ、この人何か勘違いしてるな


「そっかぁ、レイジ君もお年頃だもんなぁ。相手は喫茶店のキララちゃんかなぁ」


いつの間にか、レイジ君になってるぞハンス先生


「ねぇ、いいから教えてよぉ」


そろそろあのストーカーウザいんだよね


「うん、ならとりあえず話し合ってみれば?何か進展するかもよ?」


あぁ…ダメだこれ。完全に女の子に尾行されてると思ってるよ


「わかりました、参考になりました。それじゃあ失礼します。」


もう面倒くさいし、帰ろう





建物を出ると、もう夕方になろうとしていた。


ここは犯罪都市だが、そんなに危険じゃない


たまぁに一気に人が死ぬ様な抗争があるから、あんな数字を出してるだけで


いつもは、結構平和だ


まぁそれでも、指名手配犯とかに詳しい人がここに居て、辺りを見渡したりすれば震え上がるかもしれない。


ここの住人はほとんどが犯罪者


だから行き交う人のほとんどが犯罪者なわけだ


さてと、帰るか


僕はそう思い家に向かおうとすると、何者かに肩を掴まれる


な、なんだ!?


振り向くとそこには女の人が居て


「お、お腹ずいだぁ」


などとマヌケな事を言ってきた





「ぷはぁ!ごちそうさん!ありがとね!もう3日も食ってなくって」


いや、店に連れてきただけだよ。


ここ通貨ないから奢りとかないし


「で、あんた誰」


てか、この服どっかで…。


「あ!こいつストーカー野郎だ!」


僕がそう声を上げると


「わぁぁぁ!しー、それは内緒にしてくれ」


と小声で言ってくる


当然、説明はあるんだよな。と目線を送ると


「私はユーリ=クロイツェフ。ユーリでいいわ。」


金髪ボインのお姉さんは言う


「それで?」


「うん、ここ3日間君を監視させてもらった」


うん、知ってる


「で、さっき、君を監視してから72時間が経過し、君を信用できる人物だと上から判断が下された」


あ、こいつアレか


「あんた、捜査官か」


僕は小声で尋ねると、ユーリはコクリと頷く


あぁ、この流れは


「無理だから、さよなら」


もう先に言っておこう。面倒ごとは巻き込まれたくない


僕が席を立ち、その場を離れようとすると


「わぁぁぁぁぁ!待って待って!話だけでも聞いてくれ!」


としがみついてくる


はぁ…。


「話だけな」


僕はそう言い再び席に座り直した。





キッチンの方では、能力者が物を作り、その物で料理をしたりしている。


僕がキッチンを見ていると


「凄いよね、本当に皆能力者なんだよね」


とユーリは言ってくる。


「で、話って?」


「うん、話っていうのはね、私はこの街に派遣された捜査官なの。で、とある人物の逮捕が目的で潜入したの」


やっぱりか


この街では警察は今踏み込まない


ただ、密かに捜査官と言う輩がたまぁに来てるとは聞いていたが、こいつとはな


こいつらの目的は、そこらの犯罪者は目を瞑る。しかし、社会的に有名な、もしくは危険な犯罪者の逮捕がこいつらの目的だ


例えばどこかの国でテロを起こした、もしくは起こそうとしてる奴とかの


「で、その人物って?」


聞かないほうがいいかな。と思ったがここまで聞いたら気になってしまう


「うん、君も聞いたことがあるよね。『悪魔』だよ」


悪魔


それは最近巷で噂になっている犯罪者


何でも、この街の年間犯罪率の半分がソイツらしいとか


「へぇ、頑張ってください」


「いや、他人事みたいに言わないでよ!相談ってのは君に協力して欲しいって事だから!」


うわ、やっぱりそういう系か


「何で僕なんです?」


「うん、それはね。君の保護者の方は能力者でしょ?」


やっぱりバレてるか


「それでね、つまり君達はこの街に犯罪を犯したから逃げて来たってわけじゃないじゃん。」


うん、で?


「それが第1条件なの。で、他にも人物調査とか、この街の犯罪歴とか調べた結果君が選ばれたわけ」


「うん、意味がわからない」


それだけじゃあ僕にたどり着かないだろうが


「大体、子供に犯罪者を追わせるってどういう神経してんですか?」


「あぁ、それはね。こちらの紙を見て」


と言って紙を見せてくる


それを僕は読み……グシャッと潰す


「何ですか?この内容」


内容は至って簡単


お前の保護者を見逃す代わりに、協力しろとの事だった


「うん、それには本当に悪いと思ってるよ」


まぁ別にユーリが言い出したわけじゃないからコイツに当たるのは筋違いだが、この紙を書いたやつには頭にきている


「だからダメかな?」


とユーリは聞いてくる


ここには書いてないが、多分断れば母さんは…人体実験行きだ


断れるはずがない


「…逮捕できなくてもいいんですよね?」


僕がそう言うとユーリは嬉しそうに


「うん!けどできるだけ協力してね!」


と言ってくる


仕方ない、母さんを守るためだ


この紙には書いてないが、捜査に協力してる間は母さんは大丈夫なのだ。協力するしかない


こうして、僕とユーリのコンビが結成した。





「って言うわけなんだよ母さん」


「お、お邪魔します。」


僕はユーリを家に招待していた。


理由は『この子の家が火事で燃えた。実はこの子と前から付き合っていて事情を聞き助けてあげた』


「あらそうなの。可哀想に…。いいわ!大丈夫よ。自分の家だと思って生活してね?」


と母さんは快く向かい入れてくれた。




夕食を食べた後


「お母様、優しそうな人でしたね。」


とユーリが言ってきた


「あぁ。あんたらはその優しそうな人を人質にとったんだからな?」


「うぅごめんよ…。悪いと思ってるよ。」


さてと


「少し出かけてくる」


「ん?どこへ?ついて行こうか?夜も遅いし」


「いや、いいよ。ハンス先生に聞いた忘れ物があったんだ」


「ん?聞いたってどういう事?」


「…気にしなくていいよ」





さて、忘れ物忘れ物。


えっと確か、ストーカーには直接会って話をしろだっけ?


「こんにちは?」


僕は男達に声をかける。


ユーリの他にも、もう1グループ居たのだ、こいつらが


「「「!?」」」


男達は一斉にこちらを向き銃を構える


わお


銃ときたか


アサルトライフルだっけ?銃はよく知らないんだよなぁ


「動くな、抵抗しなければ撃たない」


1人の男が言ってくる


奥では「生けどりじゃなくて良いらしいぞ」

とか言ってるが、できれば生けどりが良いらしいのだろう


「嫌だ」


僕は即答する


「なら、多少は痛い目にあってもらおう」


そう言い銃を撃ってくる


僕は近くにあったコンテナの様なものに隠れる


ズガガガガガガガ


どこの戦争映画だよって感じに撃ってくる


普通こんだけ騒げば人か警察が来るのだろう


しかし、この街でその常識は通用しない


さて、どうするか…


そう考えるてると


コロコロ


と何かが転がり


ドカン


と爆発したーー





『よっしゃー!!へーい!!』


無線の奥から声が聞こえる


「おい、ったのか?」


俺がそう声をかけると


『あぁ、目標ターゲットは始末した。これより回収に入る』


とスペードから無線が入る


『おい、スペード。コレで3億とかヤバくね』


ハートの声だ


『あぁ、確かにやべえや』


とダイヤが答える


作戦前に決めたトランプの柄で呼び合う


ちゃんと呼び合ってる事に少し感動している


この前は本名で呼んだバカがいたからなぁ


聞かれてないとは思うが、あの時は焦った


「おい、お前らだけでったが、ちゃんと分け前は寄越せよ?」


俺がダイヤに言うが


『…………。』


返事がない


「おい、ハート!ダイヤの無線が切れてるかもしれない。確認頼む」


とハートに指示を送るが


『…………。』


こちらも返事がない


おいおいおい!あいつらまさか手柄を3人で分けるつもりじゃないだろうな


「おいスペード!返事をしろ!お前ら3人だけで山分けとか言いだしたら許さねぇからな!」


とスペードに無線を送ると


『……ッ!』


と返事が返ってくるが、よくわからない


「おいスペード!何て言ってるかわからねぇ!もう一度頼む!」


俺がそう言うと


『逃げろクローバー!コイツは化け物…!グァァァァァァ!!』


とスペードの断末魔が聞こえる


は?


おいおいおい、何が起きてんだ!?


と、とりあえず確認するために向かわなきゃ


そう思い俺は立ち上がろうとすると


「スペード、ハートにダイヤだから、あなたはクローバーさんですよね?」


と背後から声がかかる


振り向くとそこには、桐ヶ谷礼二ターゲットがいた。





クローバーさんは銃を構えて言ってくる


「な、仲間をどうした!」


あぁ、そんな事気にしてるのね


「もちろん、殺しましたよ」


僕がそう言うと


「そ、そんな…」


とクローバーさんの顔が絶望に染まる


「まぁ、人を殺そうとするんだ。殺されても仕方ないですよね?」


と言うと


「よ、よくも仲間を!!」


と持っていた銃を発泡してくる


ズガガガガガガガ


耳障りな音が夜の街に響きわたる


そして


「そ、そんな…。なんだそりゃ」


とクローバーさんは言う


あぁ、コレのことね


僕のピッタリ3メートルの所で弾丸は空中で止まってた


どうしてピッタリ3メートルかわかるかって?


そう設定したからだ


「ば、化け物め…!」


とクローバーさんは言ってくる


さっきの人達もそうだったが、この人達にはそれ以外の言葉はないのだろうか?


僕はクローバーさんに一歩近づく


するとクローバーさんは腰からピストルを取り出しーー


「…!?なぜ撃てない!!」


とピストルの弾を確認し出す


いや、弾がないなんて、そんなマヌケな事はしないだろう流石に


仕方ない、説明してやるか


「あぁそのピストルの時を止めたからですよ」


「と、時を止めた?」


とクローバーさんはおうむ返しをしてくる。


「はい、僕の能力です。『絶対固定』、僕が思った物を固定することが出来るんです。ほら、この様に」


と持っていたペットボトルの中の水を空中にぶちまけ、水を『絶対固定』を使い固定する


すると、水は空中で完全に止まる


「な、何だよソレ!何だよソレ!」


とクローバーさんは逃げ出そうとする


「あ、足がッ!?」


とクローバーさんは言い足を止める


うん、足を固定したからね。動けないよ


「ねぇ、クローバーさん。何で僕を襲ったの?」


僕はクローバーさんに尋ねる


「………。」


どうやら答えない様だ


仕方ない


パァン


僕はさっき男達から拾った銃をクローバーさんの腕に撃つ


「グァァァァァァッ!!」


クローバーさんは痛みで転げ回ろうとするが足が動かずその場で呻く。


「おぉ、当たった。じゃあもう片方も行きますね」


「ま、待て!教えてやるから!だから待て!」


とクローバーさんは手で待てをしてくる


うん、偉そうだから嫌だ


パァン


再び、僕は銃を撃ち


「アァァァァァァッ!!」


とクローバーさんは呻き声を上げる


「偉そうにしないで下さい。今、あなたはいつでも殺される立場にあるんですよ?…敬語を使えよ」


「わ、わかり…ました…」


とクローバーさんは息を切らしながら言う


相当痛いらしいね


「で、なんか用なの?」


僕が尋ねると


「とある国の人体実験場の人達には、3億やるから連れてこいと言われた」


あぁ、やっぱりそっちか…


まぁ、国は答えなくていいや。覚える気ないし


「てっきり僕の正体がバレてるのかと思いましたよ」


「しょ、正体…?」


「はい。僕、巷で騒がれている『悪魔』と言うものです」


「あ、悪魔…。あ、あの悪魔か!?」


どうやらクローバーさんも知ってたらしい


「はい、驚きました?」


「こ、こんなガキが…」


とクローバーさんはブツブツ言ってる


あれ?まだ理解してない?


「どうして、僕が正体を明かしたかわかります?」


と僕が言うと察したらしいクローバーさんは


「た、頼む!生まれたばかりの娘がいるんだ!あんたの正体は絶対言わない!それとあんたには絶対近づかない!だから頼むよ!!いやお願いします」


とクローバーさんは、地に頭を伏せる


確か、日本でこう言うのを土下座と言うんだっけ?


僕の出身国の伝統的な何かだった気がする


「クローバーさん、顔を上げてください。」


と僕はクローバーさんに微笑む


クローバーさんも僕の顔を見てホッと安心する


そうか、娘がいるのか。生まれたばかりの





「知るかバカ」





そう言いクローバーさんの頭にピストルを向けて撃った。





帰り道、またもや誰かが『悪魔』について噂していた。


その正体を知った者は死ぬとか何とか


けど、僕はその正体を知っている


だってその正体はーー






僕なのだから























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ