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一通り弾き終わって回りを見渡すと、全員が呆けていた。
「あ、あれ?何か失敗しました?」
私は皆の反応を見て、動揺が隠せない。本当に何か失敗したのだろうか?
「ゆきちゃん、下手とかのレベルじゃない!!何あのプレイ!!」
「え?な、何?」
いきなり皆から一斉に、称賛されて戸惑ってしまう。な、何事なの?そんなに凄い事なの?
普段から練習している曲だけど、ここまで誉められたのは初めて。お父さんに練習の成果を何度か聴いて貰った事があるけれど、ここまで誉められた事は一度も無い。それどころか、ここがダメだとかあそこの指使いがイマイチだとか、指摘されるばかりだったから戸惑うばかりである。
「れ、れいちゃん、これどういう事?」
「ゆきちゃんのギタープレイが凄いって事、私も高校に入ってから軽音部でずっとギター弾いてたけど、あの動きは出来ないよ」
「そうなの?」
「うん。でもそうなると、私も負けていられないなぁ」
れいちゃんの負けず嫌いな性格が発動しちゃったかな?
まぁ、いいや。楽しく皆とバンドが演れればそれで。
私はまだ興奮が冷めやらぬ先輩達や、一年生の子達を眺めながら差し出されていたお菓子を食べる。
あ、このクッキー美味しい。どこのメーカーなんだろう?
そんな事を思いながら、お菓子を食べていたら服の裾を誰かに引っ張られていた。誰だろう?と思い視線を追っていくと、紗智と目が合った。
「雪菜、私にギター教えて」
少し頬を紅く染めながら、こっちを見つめていた。
何、この可愛い子は。抱き締めても良い?・・・て、私は同性愛者じゃないよ。でも、可愛いよねー。
そう思っていたら、後ろかられいちゃんに抱き締められた。
「ゆきちゃん、あったかーい」
「れ、れいちゃん!!私で暖取らないの!皆見ているでしょ」
春先とは言え、今日は少し肌寒い。だから、抱き付いてくるのは分かるけど、皆が居る前では止めて欲しい。
「えー!いいじゃん」
何故か皆の反応を見ると、顔が紅い。紗智は私を睨んでいるし、私何かしたっけ?
その後も皆とお菓子を食べながら、今日の部活は終わった。
そして何故か、明日れいちゃんとセッションをする事になっていた。