3
ドアの方を見ると、二人の先輩が此方に近付いて来ていた。
「遅れてごめーん」
「舞、真琴、二人共遅いわね」
「ちょっとな・・・」
遅れてきた先輩達が、れいちゃんの隣に立つ。それと同時に纏め役らしい先輩が喋りだす。
「先ず、私達の自己紹介からね。私は鈴代 綾女、2年生よ。担当パートはキーボード、そしてこの部の部長をしてます、皆さん宜しくね」
「はーい、次は私ね。私の名前は橘 麗華、同じく2年生。担当パートはギターだよ、それと副部長ね。宜しくー」
「私の名前は 柊 真琴、2年生。担当はボーカル兼ギター、宜しく」
「最後は私かぁ。私の名前は朝倉 舞、担当パートはドラムやってまーす、宜しくね」
鈴代先輩に柊先輩、あと朝倉先輩か・・・
私は前に立っている先輩達を眺めながら、先程の自己紹介を思い出す。柊先輩は取っ付きにくそうだけど、朝倉先輩はフレンドリーな感じだなと思っていたら、いつの間にか自分の番になっていた。
「あっ!私の名前は財部 雪菜、小学生の頃からギターやってました。宜しくお願いします」
簡単な挨拶を済ませ、席に着く。
すると、朝倉先輩が私に向かって話し掛けてきた。
「貴女が財部さん? れいちゃんの従姉妹って言うのは?」
「あ、はい。れ、じゃなかった橘先輩とは従姉妹です」
「じゃあさ、れいちゃんとバンド組んでたのは本当なの?」
「はい、本当です」
先輩は何故かキャーとか言って騒いでる。何だろう?でも、とても嬉しそうだ。
「取り敢えず今日は挨拶だけにしましょ、最初から張り切ると疲れちゃうしね。後はお喋りでもしましょう」
ええ!それで良いの?と言うか、先輩達机の上にクッキーやらチョコレートと言ったお菓子を出しているのだけどー。というか、この部室冷蔵庫まであるの?
鈴代先輩が冷蔵庫からペットボトルを取り出して、机の上に並べている。
「あ、ホットが良い子は言ってね」
そう言ってる間に机の上には、飲み物やらお菓子でいっぱいになっていた。
「ゆきちゃん。はい、紅茶」
「ん、有り難う」
れいちゃんは私に、温かい紅茶が入ったマグカップを差し出してきた。
回りを見渡すと、先輩達と一年生が仲良くお茶しながら話をしていた。
「それで、ゆきちゃんは私と会えなかった一年間、何してたの?」
「えーと、受験勉強とギターの練習?」
「何で疑問系なの?」
「何でだろう」
「分からないって、ゆきちゃんらしいね。ずっとギター練習していたなら、かなり上達しているんじゃない?」
「そうかなー?あ!でも、一回だけクラスの子に頼まれて文化祭でバンド組んで演ったら、評判が良かったのかアチコチからオファー貰ったかな。でも、私はれいちゃんと演りたかったから、断っちゃったけどね」
「・・・嬉しい事言ってくれるね。ねえ、試しに一辺弾いてみてよ」
「ギター持ってきて無いよ」
まさか今日いきなり弾くとは思わなかったから、ギターは寮に置いたままだ。
「んー、私のギター使っちゃっていいから、お願い」
「えー!!」
隣に居た朝倉先輩にも聞こえてたらしく、先輩も私が弾いている所を見たいと言い出してきた。
「もう・・・しようがないですね。れいちゃん、ギター貸して」
「やった!」
れいちゃんはいそいそと、ギターケースから自分のギターを取り出すと、私に差し出してきた。
私はギターを受け取ると、ポケットからピックを取り出し軽く鳴らす。ピックは、小さいし嵩張らないから常に持ち歩いているのだ。
他の先輩や同級生の子も、いきなりギターの音が聴こえたから、一斉に此方を振り返る。うーん、皆に注目されるの苦手なんだよな。それでも簡単な調節を済ませると、私はいつも練習している曲を弾き出した。