プロローグ 2
ケータイのアラームで目が覚めた、どうやら寝ていたらしい。宅配に出した荷物も無事に受け取り、片付けをしている途中だと回りを見てから気が付いた。
窓から入る西日がオレンジ色をしていて綺麗だなと思って眺めていたら、ふと時間が気になり部屋の時計を見たら、18時少し前を指していた。
「いけない、食堂に行かなきゃ」
私は慌てて鏡を見て自分の姿を確認すると、部屋の鍵を締めて急いで一階の食堂へと向かう。
初めて入る寮の食堂を緊張する手つきでドアを開けると、中には既に人が集まっていた。
「あ、財部さんいらっしゃい」
最初に声を掛けてくれたのは、入寮の際に色々と説明してくれた寮長の小木先輩だった。
「こ、こんばんは」
私は先輩に促されるまま、空いている席へと座る。
テーブルの上には色採りどりの料理が並べられて、各々の前にあるグラスにはジュースが注がれていた。
「これで全員揃ったね。それじゃ、新しく入ってきた仲間に祝してかんぱーい」
「「「「 かんぱーい 」」」」
小木先輩の合図でパーティーが始まる。
私から見て右隣の人は、茶髪で長い髪を後ろで一つに束ねて、顔は軽く化粧も施されていかにも年上と言った雰囲気を出していた。
反対側の左隣の人は、黒髪で肩で切り揃えられた綺麗な髪で、顔はまだあどけなさが残っている所を見ると、私と同じ一年生を思わせた。茶髪の先輩らしき人の隣にはさっき挨拶をした、寮長の小木先輩が座っていて、先輩の向かい側には赤みがかった髪を短くカットして、爽やかそうな先輩と思えた。
「それじゃ、一人ずつ自己紹介していこうか」
そう言って自己紹介が始まった。
「先ずは私から、さっきも挨拶したと思うけど改めて。私は三年生の小木 真弓、寮長やってるわ。学校では、帰宅部よ、宜しくね」
そう言って挨拶を終えると、椅子に座る。その次に先輩の向かい側に居るショートヘアーの人が立って自己紹介を始めた。
「初めまして、私は二年生の岡崎 麻美。陸上部で短距離やっている、良かったら陸上部に入ってね」
岡崎先輩ね、やはり何かスポーツをやってそうな感じはしていたけれど、陸上部かぁ・・・
「次は私だね。私は三年生の麻生 由加、吹奏楽に所属しているわ。宜しくね」
やはり先輩で良かったみたい、それにしても吹奏楽かぁ・・・音楽繋がりで色々と話しが合いそうだな。
「えっと・・・私はこの春一年生になる笹倉 真紀です。宜しくお願いします」
笹倉さんかぁ、同じグラスになれたらいいな。
「最後は私ですね。初めまして、今日からお世話になる一年生の財部 幸菜です。宜しくお願いします」
皆、自己紹介が終わると仲良く食事をして、今は食後のデザートタイム。女子ばかりが集まるここでは(勿論、女子校なので男子は居ないが)、食後のデザートは鉄板らしい。今日はフルーツがいっぱい乗ったショートケーキだ。
「そう言えば財部さん、鞄の他に黒いケース持って来てたけど、あれは何かしら?」
「あ!あれは父から譲り受けたエレキギターでして、この学校の軽音部に入ろうかと・・・」
「ギター弾けるの?」
「え?あ、はい。以前はバンド組んで、町内の行事とかにも出させて貰ってました」
「そうなんだ、何時か私達にも聴かせてね」
「喜んで」
その後も先輩達と色々と話をしたりして、この日はお開きとなった。
「財部さんは何号室?」
ふいに声を掛けてきたのは、私と同じ一年生の笹倉さんだった。
「205号室です」
「私は203号室なの、何時でも遊びに来てね」
「うん、有り難う」
「それじゃ、また明日ね。お休みなさい」
「また、明日。お休みなさい」
私達は各々の部屋へと帰って行った。ここの寮の人達は優しくて親切だ、学校へ通うのも楽しみになってきた。
それに、もうすぐ従姉妹のれいちゃんに会えると思うと、中々寝つけれなかった。