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空前の田舎ブームが起こりました(平成イモクラシーと命名)

作者: 当麻

 事情があって匿名希望。

 便宜上、ディーと呼んでほしい。


 通行人Aの、友だちBの、知り合いのDの、略称だ。

 僕が何を言いたいかと言うと、これから話す2人と僕は全く無関係であると言うこと。


 男の方の名前は、瀬永一臣、20歳。

 身長180㎝ほど、体重は不明。

 実家金持ち。詳細は不明。

 顔も良い。どのパーツもワイルドなのに、目だけは少し垂れて愛嬌がある。


 性格は少し横暴、横柄、加えて自信過剰。

 楽しいことが大好きで、学内の中心人物。

 

 当然のことながら、女の子にもてる。

 いつも今どき風の派手な女の子に囲まれている。


 そして女の子の名前は、小野もも子、19歳。

 身長160㎝ほど、体重は不明。

 

 実家は田舎。本当に田舎。誰が見ても田舎。

 地方出身の人にも「そんな田舎あるんだ…」と驚かれるほどの田舎っぷりを極めている。

 コンビニもなければイオンもない。あるのは乾物屋だけ。

 

 全校生徒僅か5名、一クラスではない。全校生徒。

 過疎化極まりない。

 閉校秒読み。


 そんなド田舎から、大学に通うため上京してきたその子に付いたあだ名は、小野イモ子。

 

 イモ子。

 苗字が某遣唐使と同じなのと、その子の発言とアクセントが田舎丸出しだからついてしまったあだ名。

 

 正式には遣東使、小野イモ子。

 派遣先は、唐ではなく東京と言う注釈付き。


 しかしその子はそんな悪意がこもった呼び名とか都会の冷たい風とかを気にするでもなく。

 何というか田舎特有の、のんびーりとした雰囲気で、周囲に馴染んでいった。


 癒される雰囲気を持ってると言うか、その子と話しているとまったりペースに巻き込まれてしまうと言うか。

 老後は田舎も良いですね~と思わせる個性を持っていたため、その子はそれなりに友人を作り、都心ど真ん中に位置する我が校で、のんびり大学ライフを楽しんでいた。


 そんな彼女を、面白いことが大好きな瀬永一臣が目を付けた。

 

 明らかにからかい目的。

 その子の訛りと、田舎精神丸出しの発言と、都会人じゃあり得ない行動に、好奇心を駆られてやってきた瀬永一臣。


 うしゃうしゃ笑いながら、その子の一挙一動を馬鹿にしていた瀬永。


 その子の地元は稲作で栄えていて、主食は米のみ。コンビニに売ってるパンに感動しているのを見て「今どきあり得ねぇーわ」と笑い転げていた瀬永。


 ジャム忘れちゃった…と意気消沈しているその子から「箸忘れることはあるけど、ジャム忘れたって何じゃそりゃー」と食パンを取り上げて振り回していた瀬永。


 その子の小学校で行われた運動会が、1レースで終わる(全校生徒5名)ことを聞き「マジでそこ日本!?」と目を丸くした瀬永。  


 電車の路線図を見て目を回したその子が、頭を振りながら「迷宮なんだね」とシリアスな表情で呟くのを、呆れかえったように見ていた瀬永。


 人身事故で電車が止まった、と言う都会じゃ有り触れたニュースに「都会じゃシカじゃなくて人なんだ…」と目を丸くしたその子を「シカで止まった方がニュースだろ!」と笑いながら突っ込みを入れていた瀬永一臣。


 その子に自動精米機がある場所を聞かれて「はぁ…?」と首を捻りながらもスマホで検索していた瀬永一臣。


 その子が、自転車にも家にも鍵をかけないと知り「お前、それはマジで止めろ」と真剣に心配していた瀬永。


 「歩いていたらくれたの」と嬉しそうにアダルト系のチラシや金融のチラシが入ったポケットティッシュを見せて報告したその子を、何とも言い難い表情で見ていた瀬永一臣。


 携帯電話すら知らなかったその子がおっかなびっくり、スマホに触るのを「こうするんだよ」と色々と教えてやっている瀬永。


 そんな彼らと僕は、ただ大学が同じと言うだけの、赤の他人。


 …であれば良かった。

 

 彼らと僕が無関係と言うのは全くの嘘で、僕と小野もも子ちゃんこと、ももちゃんは同郷。

 近々統合予定の農村出身、そこで共にすくすく育った幼馴染。


「でんちゃん!」


「……ももちゃん…」


「あんねぇ、昨日うちのばあちゃんからお野菜届いたから、今度持っていくね」


「……うん…ありがとぅ…」


 僕に気付いたももちゃんが、嬉しそうに走り寄って来た。

 そんなほのぼのとしたももちゃんの後ろから、都会の化身瀬永一臣が「またてめぇかよっ!」と言わんばかりに睨んでくる。


 洒落た靴のつま先を苛々と上げ下げし、床を鳴らしている。

 視線が痛い。


 ばあちゃんからお手紙も入っててね~とその機嫌が急下降している背後の瀬永一臣に気付くことなく、話を続けるももちゃん。 


 ちょっと、ちょっと、ももちゃん。後ろ見てみて。

 後ろのブラックマンに気づいてくれないももちゃん。


 そして結局、いつもの如く。

 講義終了後、僕は瀬永一臣に絡まれた。


「お前とイモ子って付き合ってんの?家族付き合いまでしてんのな」


 瀬永一臣は田舎じゃご近所も、家族と言う法則を知らないらしい。


「まぁ、田舎者同士お似合いだけどな。イモ同士でダサくて」


 へっ!と馬鹿にするように鼻で笑ってきた。

 そんなふざけるような態度とは逆に、瀬永一臣の目には明らかな苛立ちが浮かんでいる。


「あのさ、何度も聞くけど瀬永君ってももちゃんのこと好きなの?」


「はぁ?んなわけねぇだろっ!あんなイモ好きになるほど、俺は趣味悪くねぇっての」


 あんなイモ好きなわけねぇだろがっ!そんなこと言う暇があるなら稲でも植えてろっ!

 

 怒鳴られた。


 僕だけじゃなくて、ももちゃんに近づく男を露骨に牽制するくせに「あんなイモ、好きじゃない!」と言い張る瀬永一臣。

 

 正直言って、面倒くさい。

 

 苛々と髪をかき上げる瀬永一臣を見て、女の子が数人寄って来た。

 カラオケ行こうよ~と誘われている。

 都会の洗練された女の子たちに未だに慣れない僕は、少し距離を置いた。


 瀬永一臣は「いかねぇーよ」とそっけなく断っている。

 俺は帰って寝んだよっと不機嫌に言い捨てる瀬永に、空気を読んだ女の子たちが引き下がった。

 

 昨日、遅くまでクラブで飲んでいたようで、寝不足らしい。


 不快度指数頂点に達す、のような不機嫌モードの瀬永一臣。

 でも僕は知っている。


 次の時間、ももちゃんと瀬永一臣は同じ講義を取っている。

 瀬永一臣は、絶対にももちゃんの隣に座る。じいちゃんの田んぼを、かけても良い。


 今日、ももちゃんは帰りに都内探検に出かけると張り切っていた。

 絶対に瀬永一臣もパーティーに加わる。父ちゃんの田んぼも、かけても良い。


 講義終了後、ももちゃんと瀬永一臣を目撃した。


「別に行きてぇって言うんなら連れて行ってやっても良いけどよ…。でもお前、天王洲アイルに夢持ちすぎ。大したもんないぜ?お前、名前に惹かれただけだろ?」


 ももちゃんに歩調を合わせながら、ももちゃんが開いているフリーペーパーを覗き込む瀬永一臣。

 ほらね、やっぱり。


 そんなとある日。

 

 不機嫌オーラ全開の瀬永一臣に遭遇した。

 

 瀬永一臣は僕に気付くと、剣呑な目で睨んだあと「ここ2,3日、イモ子が俺を避けていやがんだよ。イモの癖に生意気っ」と吐き捨てた。

 乱暴な手つきで、胸ポケットからタバコを取り出し、それが空なのに気づくと忌々しげに舌打ちし、握り潰す。


「ももちゃん、たばこ嫌いだよ?」


「はぁ?それが何だよ」


 握りつぶしたそれをゴミ箱に投げ入れ、立ち上がった。タバコを買いに行くらしい。


「あと、ももちゃん人工的な匂いとか苦手だよ。鼻が良いから、香水とか気持ち悪くなっちゃうんだって」

 

 瀬永一臣はぴたっと足を止め「…香水?」と呟いた。

 自分の袖口を顔の近くに持ってきて、ふんふんと匂いを嗅いでいる。

 ちょっと犬っぽい。

 

 僕が見ていることに気付くと、はっとしたように腕を下ろし


「だからそれが何だっつーの。あいつなんて泥臭いじゃねぇーか」


 田舎もんには俺のオリジナル香水は理解出来ねぇんだよなぁと馬鹿にするように吐き捨て、去って行った。

 その日以来、瀬永一臣は無臭の男になった。

 分かりやすい人だ。

 

 そしてそんなとある日。


 いつものように瀬永一臣が机の上に頬杖をかきながら、講義の復習をしているももちゃんにちょっかいをかけていた。


「おい、イモ子。お前、また新宿で絵を売られそうになったんだって?いつまで経っても、上京1日目っつーイモオーラ出してるからじゃねぇの?」


 イモオーラって…。

 瀬永一臣はももちゃんの事、イモ呼ばわりしてイモを色々と引き合いに出す。

 

「中身はどうしよーもねぇとしても、そのイモファッションだけは改善した方がいいんじゃねぇ?お前、羽毛布団とかツボとか押し売りされても買うんじゃねぇぞ」


 英会話とか宗教とか、危ないバイトの誘いとかも気を付けろよ、と続ける瀬永一臣はももちゃんの様子に気づいていない。


「…やっぱり私の洋服、ダサいのかぁ…。こっちに来るときに新しいの買って頑張ってみたんだけど…」


「………………っ」


 しゅんとしたももちゃんに、瀬永一臣が目に見えて狼狽えた。

 瀬永一臣は、ももちゃんの落ち込みの原因を自分の言葉だと思っているようだけど、9割の確率で違う。

 

 女の子は敏い。

 瀬永一臣がももちゃんの田舎っぷりをからかってやろうという悪意だけで絡んでいると思っていない。

 ももちゃんが、やっぱりと言って落ち込むからには、誰かに何か言われたのかもしれない。


 瀬永一臣は目立つ男で。

 話たいと思う女の子は、数えきれないほどいるけど、瀬永一臣が自主的にちょっかいをかけるのは、今現在ももちゃん一人に絞られている。


 やっかみや嫉妬を受けるのも、当然予測できることだ。


「おっ…俺は別にイモファッションっていうか…っ俺は、そういうお前のイモ二ズム的な所…別に悪いって言ってるわけじゃなくて…ただ、だからっ悪党商法には気を付けろって…っ思っただけで」


 瀬永一臣がイモが不味いわけじゃねーぞと意味不明なフォローをしている。

 普段、ももちゃんは瀬永一臣に田舎を馬鹿にされても、あまり気にしていない。そんなももちゃんが見るからにしょぼくれているから、瀬永一臣の焦りが加速した。


 僕も、ももちゃんも、僕たちの故郷が好きだ。

 確かに田舎で、何もなくて、人口だって少ないし、都会に比べれば娯楽はない。

 でもその田舎には田舎の良さが、僕たちの生まれた場所にはそこにしかない良さがある。


 それを見たこともない人が、田舎と一括りにして貶して来れば愉快ではないし、悲しくもある。

 

「やーっぱあり得ないぃ。あの服。あれで頑張ったらしいよ」


「えー、小野さんの趣味っておばあちゃんみたい。モンペとか履いてそうだよね」


「やめなよ。聞こえちゃうよ。可哀想じゃん」


 そんなももちゃんと、瀬永一臣のやり取りを見ていた数人の女の子がくすくす笑っていた。

 聞こえるように言ってるんだろうなぁ。都会の女の子って怖い。


 僕たちの故郷や、家族や仕事ぶりまで馬鹿にされて。

 さすがにむっとして、女の子たちを睨む。

 そんな僕やももちゃんの反応が面白かったのか、更に嫌な言葉を続ける女の子たちに。

 

「うっせーなっ!田舎だろうが、イモだろうが、そんなん個性の一つじゃねぇーかっ!少なくとも俺は厚化粧で陰険なお前らよりもよっぽど良いと思うけどなっ」


 都内出身、そのままお育ちの瀬永一臣が、何故かきれる。 

 いつも田舎下げ、ももちゃん下げをしているくせに、自分以外の誰かがももちゃんを馬鹿にしたりすると、何故かきれる。

 

 目をぱちくりさせるももちゃんに、瀬永一臣は周囲に田舎の良さを説き始めた。

 

 田舎ではこんなことがある。こんなものを見れる。悪くない!

 星だってすげぇし、空気だってきれいだし、野菜も水も甘いんだぜ。ホタルも見れるし、カブトムシもざっくさく。ちょっと興味ある!

 折り重なる山々とか、広い空とかいつだってリラックスできる場所だし。

 

 ちなみに瀬永一臣はももちゃんからの情報だけで語ってるだけで、実体験ではない。

 知らないくせに何故か、語る。


 しかし瀬永一臣は良くも悪くも、影響力がある男だ。


 瀬永一臣の低い声は響くというか、耳に残る。

 瀬永一臣が、そんな声で熱く田舎の良さを語ったものだから「何だか田舎って楽しそう」と影響を受けた人が多くいた。


 そんなわけで我が校は現在、空前の田舎ブーム。

 大正デモクラシーならぬ平成イモクラシー。


 田舎に誇りを持っている僕としては嬉し限りだけど。


 ブームの原因である瀬永一臣は、それに乗ることなく、懲りずにももちゃん下げをしている。

 ももちゃんのお下げを引っ張って


「お前、このイモ2点セットいい加減止めれば?」


 ダサイ。

 真っ二つに割りすぎだろっと言いながら、ももちゃんの髪のゴムを勝手にとってほどいた。


「10年以上同じ場所で分けてたせいか、自然に割れるから楽なんだ」


「…お前、それちょっとやばくね?将来、そこだけ禿げね?っつーかお前、美容院変えた方が良いぜ、左右長さがあってない」


 ももちゃんの髪を人差し指に巻きつけた後、ぴーっと伸ばし揃っていない毛先に顔を顰めた。

 瀬永一臣は、僕たちの故郷に美容院などないことに思い当たらないらしい。


「えっ…?は?…ねぇの?じゃあどうやって髪切るんだよ?」


「ハサミで」


「そういう話じゃねぇだろっ?…つまりお前、自分で切ってんの…?」 


「ううん。でんちゃんが」


「………………へぇ」


 へぇ、と言う瀬永一臣の唸るような相槌が「殺すぞ、てめぇ」と言う罵りに脳内で変換された。

 

 相変わらず、瀬永一臣はことあるごとに僕に絡んでくる。

 その度に「ももちゃんのこと好きなの?」とお約束のように聞くけど「俺がイモに惹かれるわきゃねぇーだろっ!」と全否定。


 ももちゃんの髪を弄りながら、僕の座っている椅子をげしげし蹴ってくる。

 こういう大人げないところが、本当に面倒くさい。


「せっかくこっちには沢山美容院あるんだから、ももちゃん行ってみれば?」


 僕がこう言えば、ももちゃんはきっとこう返す。


「うーん…。でも、お洒落で入りづらい」


 僕も気後れするので、ももちゃんもきっとそう。

 縁側に座って髪を切り合っていた僕たちには、ちょっと敷居が高いんだ。

 ガラス張りのお店って。


 瀬永一臣は、お疲れ様でしたと言いたくなるほど長々とももちゃんを貶したあとで「ま、連れてってやってもいーけど。俺、今週は比較的時間に余裕あるしっ」と恩着せがましく言った。


 きっかけを作ってあげたんだから、さっさと言えば良いのに。

 瀬永一臣は、自分からももちゃんも誘う時に前置きが長い。

 

「そうだな。髪の量が少し多いから梳いて、トップにレイヤーを入れて軽さを出したボブとか良いんじゃね?柔らかい動きが出来るように調節してさ。それならワックスつけるだけで、お前でもセットできそうだし。俺の知り合いがやってる美容院なら30%オフだし」


「…???よく分からないけど、じゃあそれを一つ」


 流行りとかよく分からないし、安いならそこで。

 安さが決め手になる、苦学生。


 ももちゃんは、瀬永一臣が言った髪型を流行っているものだと思ったらしいけど、多分違う。

 ただの瀬永一臣の好み。

 

 

 そんな風に時間が経って、ももちゃんも僕もこっちでの生活に馴染んできたけど、瀬永一臣は変わらない。

 相変わらず、ももちゃんの田舎具合を馬鹿にするし、ももちゃんのことなんか好きじゃないと言い張る。


「はぁ?はぁぁ?お前、何言ってんの!?イモなんて好きじゃねぇしっ」


 本当に全てにおいてダサイを極めているよなぁ。イモのメダリストだろ、あいつが金で、お前が銀だな。受賞、おめでとう。

 良くそこまで人を貶すボキャブラリーが出るなぁと関心すらしてしまう。


 次の講義の時間が迫っているので、ももちゃんの肩を触ることで中断させる。

 瀬永一臣は、ばっと僕の手を払い


「…触るな、てめぇ」


 とももちゃんには聞こえない低い声で凄んできた。

 肩に手を置いたくらいで、こんな反応させるなら。

 小学校卒業するまで、裸で一緒に川で泳いでいたこととか知られたら、本当に殺されそうで怖い。  


 ちなみにももちゃんは、いつもの僕たちのやり取りを気にせず瀬永一臣のスマホに夢中。

 瀬永一臣は、ももちゃんが好きそうなゲームのアプリを見つけるのが得意だ。

 

 ももちゃんを椅子を座らせて、後ろからゲームの遊び方を教えている瀬永一臣をちらりと盗み見る。

 特徴的なたれ目を更に甘ったるく下げて、ゲームに夢中のももちゃんを見ている。

 手裏剣を投げるように手つきで、スマホの画面を操作するももちゃんを、瀬永一臣が「勢いつけすぎだろ!」と笑っている。


 背もたれに手を掛け、身を屈めた瀬永一臣とももちゃんの距離はかなり近い。

 

 瀬永一臣は目だけを動かし「どっか行けよ」と言う念を送って来た。


 いい加減あてられるのもうんざりなので、躊躇うことなくその場を去ることにする。

 ドアの向こうから「くすぐったいよっ!」と笑いを含んだももちゃんの声と、どちら様ですか?と言いたくなるほどの甘い声が聞こえた。



 余談だけど。

 僕たちは、定期的にお手紙を書くように村の人から言われていて。

 ももちゃんは、初めて行ったところとか、見たものとか、食べたものとか、色んな事を報告していて。


 何故か村長から僕に「ももの手紙に良く出てくる瀬永とは何だ!?」と言う便りが来ている。

 まだ返事は書けていない。    

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