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夜の病院で入院中。4。



「え、それじゃ昨日の夜、男の子が迷い込んできちゃったの?」

退院の日の朝。


母さんと荷物をまとめてそれを全部車の荷台に詰め込み終わった頃。

俺は先生と話している母さんを黄桜と待ちながら隣で見送りに来てくれたナースのお姉さんに昨日の夜の事を話した。

「おかしいわね、黄羽君がいた階には他に子供はいなかったはずなんだけど。」

お姉さんは頬に手を当てて首を傾げる。

「病室を変えたって聞いたから、僕が来る前に201号室に居た子なんじゃないの?」

「ん~前に居た子っていても、あそこは1年間ずっと空いていたのよ。他の部屋にも空きは有ったんだけど黄羽君のお母さんが1人部屋がいいって言うからあそこになったってだけで。」

「じゃ、あの子1年も前から入院してるの?」

「それだったら、小児科の方にいると思うけど。黄羽君が居た所はそれほど危険な状態の人とか長く入院している人はいない筈だもの。」

「ふ~ん・・・タクト君っていうらしいけど」

「タクト君?・・・ん~私の知っている限りでは知らないわね、その子」

「ふ~ん」

「あ、お母さん!」

興味無さそうに隣で聞いていた黄桜が声を上げた。

どうやら先生との話が付いて母さんが戻ってきたらしい。

「でも、また会った時は仲良くしてあげてね。」

「うん」

お姉さんはそう言うとニコリと笑って、すぐに母さんの方を向いた。

「退院おめでとうございます」

と、さっきも聞いた事を母さんに繰り返している。

退院する時は、同じ言葉を言うのかと思うと急にどうでもよく思えた。

視線を母さんとお姉さんからガラス越しに見える病院内に移すと、2階から誰かが俺たちに手を振っているのが見えた。

目を凝らして見るとそれは、昨日の男の人と毛布を被ったタクト君、であった。

「黄羽、帰るわよ。車に乗りなさい。」

「兄ぃ早く~!」

母さんと黄桜に急かされたおかげでお姉さんにあの人たちだと伝える事は出来なかったけど、走り出した車の窓から覗いてもまだ2階に2人は居て手を振っていてくれたので、俺も手を振り返した。

また、退院後の検査って事で病院を訪れるのだから、その時に探してみようと思う。

会えたらいいな、お兄さんにはちゃんとお礼を言ってタクト君とは、今度はお友達になろう・・・なんて考えていたら、知らないうちに顔がニヤけていたらしい。


黄桜にまたキモイと言われて、せっかく温かな気持ちだった俺の心は冷めてしまった。




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