夜の病院で入院中。3。
こっそりナースステイションの中を覗くと、同じ所に同じように男の人は座っていた。
「あの・・・お兄さん?」
俺が呼ぶと男の人は、左右を見渡してから後ろの俺たちの方へ振り返った。
「さっきのぼうや・・・どうかした?」
「あ、えと・・・この子」
どう説明したものか分からずとりあえず、毛布を被った男の子を指さす。
自然と男の人の視線も男の子に移って、あぁとうなづいた。
どうやらこの子の事、知っているみたいだ。良かった。
「タクト君、また部屋間違えたの?」
「201号室」
ナースの男の人が男の子に声をかけると、男の子は部屋番号を答えた。
お兄さん、苦笑してますけど・・・。
「タクト君。君の部屋は変わったじゃないか、そっちの部屋に戻らなくちゃその子が困ってしまうだろ?」
「・・・」
「じゃ、お兄さんと一緒に戻ろうか?」
「・・・・・・うん」
やっぱり部屋間違えてたんだ。いつもの癖で元の部屋に戻ってきちゃったって事なんだな。
男の人の言葉に男の子はうなづくと、差し出された手を取った。
「それじゃ、君も部屋に戻ろうか。ごめんね、迷惑かけちゃって」
またにこやかに男の人は笑って俺を見た。
俺は首を左右に振ってそんな事はないと一言言っておく。
そしたら優しい子なんだねなんて言ってくるから、思わず照れてしまった。
ほんのりと俺の心が温かくなった所で俺はナースステイションを出て、部屋に戻った。
◇