双子の兄と妹
先生と母さんから聞いた話によると、俺はトラックに轢かれて5日間眠ったままだったらしい。
しかも目が覚めたこの日は、キャンプ最終日。
時間的にも今から行ったって間に合うはずがない。
『兄ぃに置いて行った罰としてリュック・アタックお見舞いしたら、車が兄ぃ目掛けてきたんだよ!うちのリュック・アタックすごくない!?車まで呼び寄せる連続技!これって必殺技決定だよねッ!?最強なんじゃねぇ!?』
と、俺が轢かれる元凶を作った俺の双子の妹・黄桜は、母さんと警察に供述したらしい。
TVの見すぎじゃね?罪の意識ゼロですか?轢かれた俺は、技を決める練習台ですか?
「てか、黄桜は?」
目が覚めてから、ずっと母さんと一緒だけど黄桜の姿がどこにもない。
まぁ事故の元凶ですから、いつもの兄妹喧嘩として謝るのが怖くて俺の所に来れないんだろうけどっ!あやうく死ぬ所だったし!!
「黄桜なら、2日目からキャンプに参加して行ったわよ。2度とこんな・・・リュック・アタックをしないってきつく言っておいたから大丈夫だと思うけど。あ、もうそろそろ帰ってくる時間じゃないかしら」
「・・・・」
「ね?黄羽」
「・・・・ふ~ん。キャンプ行ったんだ。」
「黄羽?どうかし・・・あ、」
「1番楽しみにしてた俺を差し置いて1人でキャンプ、エンジョイ?何普通にキャンプ行ってんの?俺、病院でキャンプを・・・夏休みの5日間無駄に寝てたのに?その原因黄桜が作ったのに?当の本人、さっきの話でも思ったけど何の自覚も無さ過ぎね?あー、どうしよ、母さん。寝過ぎて超イライラする!!」
あ”ーー、発狂したら全部アイツのせいだ!!!!
とりあえず、涼しい顔で俺の前に来たら1発ぶん殴ってやる。
いや、殴るだけで気が済むかな・・・・俺、死ぬ所だったんだよね?
1・2発だけで済まねー気がするな。なんかフルボッコとかしちゃいそ――――
「お母さん、兄ぃ起きたってホント~!?どんだけ寝てたの、アイツ」
バンッと勢いよく開いた病室の扉から、これまた清々しい程の明るい笑顔で元凶が入ってきた。
あいかわらず俺の予想を的確に当ててくる奴だよ。
これが顔だけ瓜二つの双子ですよ、性格が真逆だとこんなにもイラつく存在になるのですね。やべ、怒りを通り過ごしそうで顔から笑顔が無くならないやっ!
「兄ぃ、おはよ。体、大丈夫?キャンプ行ってきたよ、キャンプファイヤーまじ楽しかった!家に帰ったらいっぱいお話してあげるから、安心してね。あ、それと兄ぃの友達から“生きてるか~?生きてたらまた家行ってやるぞ”って伝言預かってきたよ」
「そうかそうか~、楽しかったか~・・・・」
「な、なに、兄ぃ・・・なんかキモイ」
「うん?誰がキモイって?」
「あ、もしかして怒ってる?ゴメンね!」
テへぺロッ♪とでも言うのだろうか・・・そんな笑顔でさらりと謝られた。
そんなにお前の中で俺が事故った事は他人事なのか?
目の前で、しかもお前のせいで轢かれたようなモンなのに?
あ、やべ・・・なんかショッパイ・・・・。