下り坂の下、信号機の前。
学校に繋がる通学路。
家の前の長い下り坂を一気に下って行き大通りの十字路に出る。
大きなトラックや車が夏休み初日の朝だと言うのに、たくさん通り過ぎて行く。
俺はというと、信号機の前で足踏みをして赤から青に変わるのを待っている。
こう急いでいる時に限ってなかなか信号が変わらない。
「兄ぃ~!」
俺のイライラが増して来た頃になって、ようやく黄桜が追いついて来たらしい。
振り返って見ると、まだ坂道を走って下っている。
・・・でも、その顔は母さんが怒る顔と同じで・・・・なんか、捕まったらグチグチ言ってきそうだなって思わせるくらい不機嫌オーラダダ漏れ。
とりあえず早く信号変わらないかな~。
「兄ぃの馬鹿!待ってって言ったじゃない!!」
ほーら、言ってきた。
黄桜の愚痴を聞くくらいなら祖母ちゃんの昔話を聞く方が面白い。
まぁ、どっちもつまらない・・・の一言なんだけど。
「兄ぃ!ウチは怒ってるんだからね!ちゃんと待ってって言ったのに」
「俺は早く行くってもっと先に言った!」
「待ってって言った!」
「黄桜が遅いのが悪い!」
「兄ぃが早すぎるの!このせっかち!」
「のろま!」
黄桜は俺から5メートルくらいの間隔を開けた所で走るのを止めて、立ち止った。
怒ってます!って顔したって怖くなんかねーよ。
「これでもくらえ!リュック・アタック!!」
うわっ!センスねぇッ!?
黄桜が背負っていたキャンプの荷物をいっぱいに詰め込んだリュックサックを俺に投げつけてきた。
まぁ軽く避けてやりますけど・・・と、思ったらリュックが肩に当たった。
その拍子なのかどうかなのかは今となっては分からないけど、俺は足がもつれて後ろの
――交差点に倒れ込んだ瞬間、記憶が飛んだ気がした・・・。
◇