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幸せの在処-2-





「ちょ、何を言ってる…ゴホハホッ!」


「お前は黙って顔でも拭いてろ。」


「っだっ、てぇ――――――ガホッゲホッゴハッ!?」


「だ―――――!ほらみろ!大人しく黙ってろって!」


二人のやりとりを聞きながら、『魔人』の女の子は泣きそうな顔で微笑んだ。



「………どうして…私は『魔人』なんだろうなぁ…?」



シャーロットはその言葉に反応せず、黙ったままだった。しかしラクトは目を大きく見開き、まだ痺れる身体を持ち上げ、『魔人』の方を向いた。




「そうだよ…そうなんだよね!」



不思議な言葉を発するラクトに、シャーロットは『魔人』に剣を向けたまま、苦い顔をラクトに近づけた。


「ラクト…お前やっぱり壊れたか?」


「げっほっ、違いますよ!…俺、シャーロットさんに『魔人』が人間だって聞いてからずっと違和感があったんですよ。だって、人間だっていうわりにには、人間とは違う存在扱いされてるじゃないですか!それってやっぱり違うと思うんですよ。だって魔力を持ってるから危険だって言うんなら、魔物だってそうですよね?そしたら魔物が生まれるたびに一匹一匹退治しないと危険だってことでしょう?でもそんなことできるわけないし、逆に『魔人』の方が話通じるし、そこまで恐れることもないと思うんですよ。魔力を持ってること以外で違いなんてないんですし…あ、寿命が長いとかはあるかもですけど、そこまで…。」


ぶつぶつ一人言のように喋り続けるラクトを見て、シャーロットは深いため息をついた。


「あのなぁラクト、常識がないのは仕方ないが、さすがにそこまで都合よくいくわけが…。しかもさっきまでえらい目にあっただろうが…。」


「へ?だってそれは俺が余計なことを言って怒らせたからであって…。」






ピチャッ。シャーロットはどこからか滴が落ちる音がしたことに気づいて、音のする方に振り向いた。すると、『魔人』が先ほどより大粒の涙をぼたぼたと流しているのだ。



「…―――――あれ!?ど、どうしたの!?俺また何か余計なこと…!?」


『魔人』の女の子は静かに、小さな声で喋りだした。


「私は別に人間になりたいんじゃないの…だって、人間だったとしても、『魔人』でも、私は私でしかないもの…。自分勝手で最低な…どうしたって、それは変わらない――――――。」


「それは皆同じだよ?」



ラクトは『魔人』の目を見つめながら、真剣な眼差しで話しだす。


「それは皆おんなじ思いがあると思うよ?俺だって…自分のために村の皆を裏切って、誰かに『勇者』を押し付けようとしてたから――――すっごく恥ずかしくて、最低なことだって反省してる…。これからだって多分そう。後悔しない生き方をしたいけど、結局振り返ってダメなことや嫌なことを思い出して、自分が憎たらしくてたまらなくなることがいっぱいある。―――――でも、やっぱり、俺は俺でしかいられないから…向き合っていくしかないんだよ、自分自身と。」



そして女の子を見つめながら、ゆっくりと微笑んだ。



「いいんだよ、君は君のままで。」







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