1日目
2012年4月15日執筆開始。
何時からかは判らない。
が、私は気が付いたら腹ペコの状態で森にいた。
何とも妙な話だが、新種の魔物が自然発生する時はある程度の自我と体力の他、自らの性能を完全に把握した状態で世界に産み落とされるらしい。現に、今の私がそうだ。
自分が魔物だと生まれた瞬間から理解し、長年生きてきたかのように身体を使いこなす。まるで誰かに設定を造られたような感覚に襲われる。
幸い、自らの意志で行動出来るため、『何か』の操り人形というわけではないらしいが、それでも造られたような感覚は拭えない。
「……考えても仕方がない、か」
分からないことを考えすぎても良くない。そう気持ちを切り替え、私は自分の能力を改めて確認する事にして、頭の中にある情報を思い出す。
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『喰魔人』
人型の魔物で、生まれたばかりだと魔物特有の紅い眼以外、人間と全く変わらない。
だが、「食べたモノの性質を自身に加算する」能力を持ち、食べられないモノは無い。
その副作用なのか、満腹になることがなく、何時も小腹が空いている。
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なかなか、私は鍛え甲斐のある能力を持って居るらしい。食べられないモノが無いのも今の空腹感を紛らわすのに丁度良い。
その辺りの石ころを摘まんでは喰い、摘まんでは喰いながら今後の予定を考える。
「……取り敢えず、この森で暫く暮らして強くなるか。手っ取り早いのは、この森を端から喰って行く事だが、それだと人間に気付かれそうだし」
流石に、いきなり人間に喧嘩を売るほど自分の強さに自身はない。口は一つしかないので、私は未だ一対多の戦闘には不向きだ。
「しかし、森で暮らすにはねぐらが欲しいな」
洞窟などは他の生き物に取られているだろうし、野宿では余りに危険だ。どうしたものかと考えていると、手近に石ころが無くなったので辺りを見回す。幸い、近くにやたらにデカい岩があったのでそれを齧ろうかな……。と、考えた瞬間閃いた。
「あの岩を掘ってねぐらにすれば一石二鳥じゃないか?」
そうと決まれば後は楽なもの。日が暮れるまで齧って掘り進み、何とか夜までにねぐらが出来た。
今は身体を動かし過ぎたせいで恐ろしく眠く、私はねぐらの床に寝転がると直ぐに眠りに落ちたのだった。