サバイバル プラン フォア ザ サムライ ワールド
追手が来る
誰だかは知らないが
何故だかは分かる
俺が昔、斬った剣士の仲間だろう
遺恨があったわけではない
ただ剣に生きる者同士が戦い
相手は敗れ、死んだだけのことだ
とはいえ旗本と言う身分では
遺族に仇討ちと言う使命が課され
果たすまでは後を継ぐことが出来ない
周囲が許さないのだ
「見つけたぞ、こっちだ」
大声で叫び仲間を集めようとする男
仇討ちで一対一などと綺麗事は通用しない
武士の面目などと言う戯言も存在しない
生きる為
生活の為に必死なのだ
「チェ────────リャ!」
身を隠していた草むらから飛び出して
男を背後から斬りつける
馬鹿め、大声を出すからこうなるのだ
だが男は黙るどころか
更なる大声で絶叫する
それは痛みか
命を断たれる事への抗議か
生きることに失敗した男は
人を集めることは成功したようだ
数人が仇討ちの相手を取り囲む
背中を斬られた男は血飛沫を上げていたが
程なくして動かなくなった
「もう逃げられんぞ、井岡八兵衛」
「……」
「父上の無念、ここで晴らさせてもらう」
「……」
若い侍が吠えたてる
取り囲んだ男たちは一斉に斬りかかった
とはいえ仇討ちの相手、八兵衛は強い
人を斬ったことがない腰抜けの剣士が何人いようと
生き残るため平然と人を斬ってきた男に
敵う道理が無い
ひとり、ひとりと命が断たれ
最後は若い侍だけが残された
彼は正眼に構えるも
剣先は震え
瞳孔は開き
立っていられるのもやっとの様子だった
「……おい、小僧、もう止めねえか」
「ひ、ひぃ」
「……勝てっこねえのは、わかるだろ」
「う、うぐ」
「……仇は逃げた、行方も知れぬ、それでいいじゃねえか」
若い侍は刀を落とした
それは戦意の喪失を意味している
井岡八兵衛も恨みを重ね狙われ続けるよりも
適当な落としどころを見つけることが
生き残るためには肝要と心得ていたのだ
ゆっくりと距離を空け
後ずさる八兵衛の胸を
雇われた猟師が鉄砲で撃ち抜いた
「阿呆が、怯えたふりに騙されおって」
若い侍は脇差を抜き
八兵衛の首を切り落とす
家督を継ぐために手段は選ばない
武家社会で生き残るために




