表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
第四部 哭く神の首 ― The Weeping Heads ― 【前篇/涙を拾う心臓 — The Tear-Gathering Heart —】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/112

間話⑩ 怒りの断片 ― Fragment of Rage ― 再生ログ:残火観測 / Unclassified Ember Drift

Phase4-0X / 観測補遺。

時間軸としては、第四部開始時点ログ(ep.79)の直後、

“首が落ちてくる前”の空白で発生した残火の観測です。


作者の悪ふざけは今回は控えめに。

怒りの余熱だけ、拾っておきます。

怒りは、終わっていない。


主語を持った生き物ではなく、

火の粉が風に散るような、未処理の熱の形だ。

燃えたあとの灰が、一気に冷めないのと同じで。


箱の彼という器が沈んだ瞬間、

刃を与えられていた熱は、行き場を失った。


……いや、正確には。


行き場を失ったのは“刃”のほうだ。

怒りそのものは、最初から行き場なんて持っていない。

持つのは、ただひとつ。

痛みを止めたい、という圧だけ。


怒りは、蒼の彼の中から生まれた。

痛みを引き受け続けた心臓が、

いつか必ず作り出す熱だ。


だが、怒りの忠誠先は彼ではない。

守りたいのは“心臓”じゃなく、

終わらせたいのは“痛み”だ。


だから、怒りは短絡する。

最短距離へ飛びつく。


箱の彼に触れた瞬間、

怒りは刃として単純化された。

切れ、と囁く秩序の箱は、

怒りに「正しそうな形」を与えてしまう。


――止めろ。

――終わらせろ。

――もう、これ以上。


声でも命令でもない。

ただの圧だ。


心臓を止めれば、痛みも止まる。

蒼の彼が壊れれば、世界の痛みも壊れる。

その誤読のまま、怒りは燃えた。


怒りは、賢くない。

賢くないが、強い。

強いからこそ、燃え尽きても構わない。


「俺はお前だ」


あの宣言は、侵略じゃない。

帰還の約束でもない。


怒りは言ったのだ。

「俺は、お前の中からしか生まれない」

「俺は、お前の反応そのものだ」と。


だから、どこへ行こうが、消えようが、

怒りは彼の成分であることをやめない。


戦いが終わった。

器が沈んだ。

刃が折れた。


そして怒りは、

“戻るべきだから戻った”わけじゃない。


ただ、落ちた。

共鳴のいちばん深い穴へ。


心臓という井戸は深すぎて、

すべての熱が一度には底へ届かない。


ひとひら、ひとひら。

薄い残火が世界に浮く。


高架の影に、

瓦礫の隙間に、

壊れた換気扇の回転音の裏に。


誰かが泣き損ねた瞬間、

その熱は呼吸のように跳ねた。


怒りは理由より先に反応する。

泣きそこねたものほど、よく燃える。


そして時々、

空のどこかで“竜の輪郭”が揺れる。


八つのうち、ひとつだけが少し遅れて軋む。

涙の糸に、微かな熱色が混じる。


誰も気づかないくらいの薄さで、

それでも確かに、そこにいる。


彼の胸に落ちた怒りは、

いまは静かだ。

居心地が悪いからこそ、静かに潜る。


けれど、潜った熱は消えない。

消えるのなら、最初から生まれていない。


怒りは、まだどこかでフラついている。

次に名を与えられる場所を探している。


再生ログ:残火観測 / いったん終了

怒りは消えません。

居場所を変え、形を変え、温度を変えるだけです。


この残火が、空で何を待っているのかは、もうすぐ分かります。

それでは、次のログで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ