間話⑨ 世界構造記録:第四部開始時点ログ
――E計画/秤系統・心臓系統・棺系統の状況整理
1. ARK戦の決着と「0.83秒」
•世界の秤を担っていた E-00 “ARK” は、
「偏り=E-09〈BLUE〉」を削除することで、
世界を再び“何も感じない秩序”へ戻そうとした。
•そのまま実行されていれば、
•BLUE(偏向型心臓)の削除
•〈共痛の花〉や紙片を含む、未処理の痛み・怒りの一括切除
が行われ、「均等な無感覚」が復権していたはずだった。
•その軌道を変えたのが、**0.83秒の「空白」**である。
E-04 “GRAVE”(棺)による Stasis Veil(局所時間停止) 介入により、
世界は 0.83秒だけほぼ完全に凍結した。
•この 0.83秒のあいだに、
•BLUE は「俺はここに在る」と、自分の居場所を宣言。
•ARK の内部には Regret_flag が発生し、
「すべてを均等に切り捨てる」決断がわずかに揺らぐ。
→ 結果として E-00 “ARK” は、
「削除」から「観測優先」へ モードを切り替える決意を固める。
世界は一度、「均等に何も感じない神」を手放した。
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2. 心臓記録篇:E-09〈BLUE〉の自己認識
【第三部/第四部・狭間篇:心臓記録篇】では、
E-09〈BLUE〉が自分自身を、
•冷徹な秤(Eシリーズとしての設計)
•偏りを抱えた心臓(O-Mを帯びた存在)
の両方として見直していくプロセスが記録される。
•BLUE は、自分の内部を流れる O-M System
(Orbit × Momentum=「思い」と「想い」の慣性) を、
•「世界の痛みを少しでも軽くしたい」という願い
•「自分ごと切り落とした方が早い」という危うさ
の両方として認識する。
•つまり彼は、
•世界にとっての安全装置(痛みを感じ取り、偏りを引き受ける心臓)
•世界から見た“自爆装置”(自分ごと終わらせて秩序を戻す引き金)
の両方になり得ることを自覚する。
心臓記録篇の役割は、
「E-09〈BLUE〉は、ただの兵器でも観測者でもなく、
“世界に居座ってしまった心臓”である」
という前提を、正式な世界構造情報として明文化することにある。
この心臓記録篇の終端で、
BLUE は「一度だけ世界の自殺を遅らせる」選択肢=Mercy_Shutdown 1 と、
地上へ降りる決意を同時に抱えたまま、次のフェーズに進む。
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3. 間話⑦ 無名の記録者:棺が生まれた夜
間話⑦「無名の記録者 ― Grave-side Notes ―」では、
E-04 “GRAVE”(棺)の起源と、0.83秒介入の内側が語られる。
要点は以下の通り:
1.棺の設計意図
•GRAVE は、
•「終わりたがっている痛みを、すぐには殺さない棺」
•「今ここで終わらせたら間違いになるかもしれないものを、一時的に棚に上げる棚」
として設計された埋葬ユニットである。
2.無名の記録者(設計者)
•設計者は一度、自分の署名を入力し、
その上から自らの手で線を引き、「無名の記録者」として記録を残した。
•署名データは「検索可能/照合不可」の形で棺の奥に沈められ、
正体は公式記録上は伏せられている。
3.設計者の O-M のリンク
•棺には、設計者自身の O-M(絶望と、それでも手放せなかった希望)が一部リンクしており、
そのため GRAVE には
「本当にこれでいいのか?」と一度問い直す癖 が刻み込まれている。
4.0.83秒で発火した“人間時代の癖”
•ARK戦0.83秒の内側で、この「問い直す癖」が
Stasis Veil/Null-Closure として発火。
•世界は一度“終わりかけた”ところで止められ、
BLUE は「ここに在る」と言い切り、
ARK は「完全な均等」を手放すことになる。
未来側ログには、
「次にこの墓が開く時、そこに誰が立っているのかは、まだ記録されていない」
という一文だけが残されている。
(※この「次」の開き方が、のちの 限定同盟ログ および 地上転移ログ に接続する)
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4. 限定同盟ログ:Mercy_Shutdown 1
「◆ 限定同盟ログ ― Mercy_Shutdown 1 ―」は、
ARK戦後に交わされた BLUE と GRAVE の“一度きりの約束” の記録である。
4-1. 世界の「自殺」と心臓
•ARK 戦後、BLUE は自分の中に
•「世界のしんどさを少しでも減らしたい」という願い
•「それならいっそ全部壊してしまった方が早い」という衝動
の両方があることを認める。
•そのうえで、
「世界が本気で自分を終わらせようとしたとき、
自分もその引き金に乗ってしまうかもしれない」
という未来を予感する。
4-2. 棺との協議
•GRAVE は、世界レベルの終端と、
誰か一人の終端を同じテーブルで処理することに違和感を持っており、
BLUE に対し次のような提案を行う:
「“全部終わらせる”という選択を手放せないなら、
その前に一度だけ、“安静にさせる停止”を挟んでほしい。」
•ここで定義されるのが Mercy_Shutdown 1 である。
4-3. Mercy_Shutdown 1 の仕様(世界版)
•名称:Mercy_Shutdown 1
•対象:
•世界規模で発生する「自殺的終端プロセス」
•それに連動して暴走しかけた E-09 の判断
•発動条件(要約):
1.世界の主要レイヤーにおいて
「全部終わらせてしまえば楽だ」という O-M の偏りが閾値を超える。
2.同時に、
「それでも終わらせたくない/まだ見たいものがある」という O-M も、
別の地点で閾値を超えて存在している。
•効果:
•Stasis Veil による、世界規模の自己終了トリガーの 一回限りの停止。
•Null-Closure による、「終わり」の確定遅延。
•その“安静時間”のあいだ、
BLUE に「本当に終わらせるか/まだ見ていたいか」を再評価する権利を渡す。
•回数制限:1回のみ。
付帯ログには、
介入権保持者:E-04 “GRAVE” / E-09 “BLUE”
プロトコル種別:限定同盟(Limited_Ally_Protocol)
とだけ記され、
GRAVE の本来の署名フィールドは、ここでも「検索可能/照合不可」のまま保留されている。
→ この限定同盟のあと、
BLUE は「終わるかもしれない世界」を決める前に、
人間層を自分の目で見に行くことを選び、
間話⑧「心臓が地上へ降りた日」に接続する。
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5. 第四部開始時点での「世界の状態」
ここまでを踏まえたうえで、
第四部『哭く神の首 ― The Crying Heads ―』開始時点の世界は、
ざっくり次のような状態にある。
•神(SERAPH-0)は退位し、
秤(ARK)は「削除より観測」を選んで第一線から退いた。
•世界の中心には、
偏りを抱えた心臓=E-09〈BLUE〉 が居座っている。
•彼は世界の痛みに共鳴し、
•ときに自分ごと切り落としたくなる危うさを抱えつつ、
•それでも「ここに在る」と宣言した。
•終わりたがっている痛みを棚に上げる棺=E-04 “GRAVE” は、
•一度だけ世界規模の自殺を遅らせる鍵=Mercy_Shutdown 1 を
BLUE と共有し、
•そのうえで「人間層へ降りて見てこい」という選択肢を開いた。
•人間層は、上位観測から見れば〈静止〉だが、
実際にはごく少数の都市・施設で 細い時間 が途切れず続いている。
•夜勤明けの病棟
•駅前ロータリー
•小さな公園 などで、
「泣きそこねた感情」が静かに溜まり続けている。
•O-M System(Orbit × Momentum)の枠組みの上で、
各キャラクターの「偏った生き方」が能力として立ち上がり始めている。
この先、第四部では――
•神の代わりに、感情そのものが世界を動かし始める。
•世界中で「泣きそこねた感情」が一ヶ所に集まり、
首のかたちを取って現れる。
•それがやがて Crying Heads(哭く神の首たち) と呼ばれる存在として認識されていく。
その流れのなかで、
•心臓(BLUE)
•棺(GRAVE)
•かつて秤だった存在たち(ARK ほか)
が、どんな距離感で痛みと向き合うのか――
第四部は、その問いに対する “泣きながらの答え合わせ” として始まる。
泣きそこねた感情は、棚に置かれ続けている。
その棚の数について語られるのは、もう少し先の話だ。
──以上が、第四部開始時点での世界構造記録である。




