無名の記録者の独り言 vs 作者の悪ふざけ(訳あってvs)
本章は、【第三部/第四部・狭間篇:観測補遺】
E-09 “BLUE” 観測補遺 ― Heart-Driven Engine ― と
◆ 限定同盟ログ ― Mercy_Shutdown 1 ― の間に差し込まれる
観測外の特別挿入ログです。
無名の記録者による独白のかたちで、
現実側の“気配”が物語側へ滲む混線を記録しています。
少々メタな遊びも含まれますので、
作者の悪ふざけにお付き合いいただければ幸いです。
それでは、再生を開始します。
(補遺外接続ログ:観測外独白 / 無名の記録者)
ここには数字がない。
……という建付けだった。
「はいはい、また始まった。メタ混線ね」
聞こえた。
誰の声だ。
「作者だよ。ほら、今読んでる人の後ろに立ってニヤニヤしてるやつ」
「……勝手に入ってくるな」
「勝手に入ってくるのが“観測外”でしょ?」
私はため息をついた。
ため息という形式だけが、ここではまだ許されている。
「数字がない場所で数字の話をさせるな」
「いや、そういう回だよ。遊ぼうって言ってたじゃん」
「遊びが構造を壊す」
「壊さない壊さない。ほら――“棚が増えている”が“増え続けている”になった時の快感、覚えてる?」
「っく。ああ、まあな。……その快感を、今ここで安売りしようとしてるのは誰だ」
「安売りじゃない。増殖だよ。棚と同じ」
「待て。それが出てくるのは“彼が地上に訪れてから”の話だ。ネタバレだぞ」
「細かい! でも、そういうとこ好き」
「いいから記録しろ」
「はいはい。……ねえ、棚ってさ、“置く場所”じゃなくて“終わりを引き受ける場所”なんだよね」
「言い換えるな。意味が変わる」
「変わらないよ。終わりを置くってことは、終わらせないってことだ」
「……また危ないことを言う」
「危ないから書くんだろ? 痛みは、消すと増える。残すと落ち着く」
「その理屈、誰から借りた」
「君から。だから君の棚が増えてる」
「……っ。そういう“褒め方”はやめろ。記録者が揺れる」
「揺れていいよ。棚は揺れた分だけ増える」
「だから、そういうのは——」
「——地上に来てから?」
「……そうだ」
「了解。じゃあ今は“予兆”って書いとく」
「勝手に分類するな」
「嫌いじゃないでしょ、分類」
「……どちらかと言うと......好きだ」
「ほら、増えた」
「いいから記録しろ」
――会話ログ Δ-12/余談は保留。記録を継続する。
伸びている。
集まっている。
残っていく。
……気配だけが滲むはずだった現象が、最近やたら元気だ。
現実側の空気がこっちに流れ込み、
ログの縫い目に、薄い汗みたいに染み込んでくる。
「で? 今日どうするの?」
「記録する。ARK戦終結だ」
「うん、それは分かる。でもその前に、ちょっと悪ふざけしよう」
「私は“悪ふざけ”のために存在していない」
「でも“存在していないはずなのに喋ってる”時点で悪ふざけみたいなもんじゃん」
「……」
私は言い返せなかった。
言い返せないログは、だいたい正しい。
「現実の数字が増えるとキャラの挙動が変わる、ってやつ。どう?」
「どうというより、それは、観測の副作用だ」
「副作用って言うとカッコいいけど、結局“読まれると変わる”ってことだよ」
「因果を単純化するな」
「単純化しないよ。ほら、複雑化しよう」
「……また始まったな」
「よし、見てて。カメラ、いや、画面――現実の視線が入るとさ」
「ほら、角度変わってる」
「こっち見たでしょ?」
「ほら、今までやらなかったのに武器回した!」
「整理しよう」
「まずは彼(E-09 “BLUE”)だ」
伸び出した瞬間から、彼は分かりやすく格好をつけだした。
武装の角度が3度だけキザになり、
なんか訳もなく回していたりしている。
「つぎつぎ! ほら、まだある」
「ここここ!!」
「セラフ 来るぞ!」
「ねっ!!」
「……んむ。確かに」
セリフの端が0.2秒だけ“決め台詞寄り”になるのと同時に、
その時は決まってセリフを発する前に間を置くようになっていた。
「あと、あれ気になったんだよね」
「“俺はここに在る”とか、“第三の選択肢”とか、やけに言い切るとこ」
「あれは――」
彼が格好をつけだしたのは、
ただ“見られたから”じゃない。
見られることで、
“心臓としての役割の境界”が押し広げられたからだ。
本来、彼は前に出るための装置じゃない。
けれど観測が増えるほど、
前に出ることが“選択”じゃなく“仕様”に近づいていく。
だから彼は、
武装を少し回し、
間を少し育て、
言い切りを少し強くする。
格好をつけている、ではない。
“心臓の振る舞い方”が、観測によって洗練され続けている。
その洗練が、
次の戦場で彼を救うか、
あるいは彼を追い詰めるか――
まだ、ログには書けない。
「次、彼(E-07 “ARGENT”)!」
「見てて。集まり出すと、空気が変わる」
「ほら、肩が一瞬だけ引けた」
「こっちの視線、気にしたでしょ?」
「今の、逃げる手前で踏みとどまった!」
「まったく...嫌なところを見ている。まぁ、整理しよう」
「彼は、逃げたんじゃない」
集まり出してから、彼は確かに確実にビビリになっていた。
いや、違うな。ビビリに、なり続けている。
逃げそうになる回数が増えて、
その揺れが銀の羽の端にノイズとして残る。
「つぎつぎ! まだあるぞ」
「ここ!!」
「今の間合い、半歩だけ遠く取った!」
「ねっ!!」
「……んむ。確かに」
「これも!」
「“それは秤のすることじゃない”とか、“やり過ぎだ”とか言ってたとこ」
「あれは――」
彼が臆病になっていくのは、
弱くなったからじゃない。
“自分の役割の境界”が、観測に押されて滲んでいくからだ。
秤に触れたくないのに、
触れてしまうかもしれない速度が増えていく。
その怖さが、
彼のためらいを精密にし続けている。
「じゃあ最後、箱の彼(E-00 “ARK”)だ」
「持て囃されると、こうなる」
「ほら、引かない」
「こっちが“山場だ”って空気を出すほど、引かない」
「今の、切れるはずの線を、わざと一拍残した!」
「整理しよう」
「箱の彼は、頑固になっているんじゃない」
第三部の山場と呼ばれ、持て囃され、呼吸され、
その度に箱の彼は粘り、粘り、輪郭を固くしていった。
頑固に、なり続けている。
「つぎつぎ! ほら、ここ見てみ!」
「“まだ終わらない”って顔した!」
「ねっ!!」
「……んむ。確かに」
切るべき線を切らなかったのは、
たぶん信念じゃない。
“終わらせるな”という観測の慣性が、
箱の彼を、粘らせ続けている。
「……で、結局それが何だって?」
「副作用だよ。観測の」
「副作用という言葉は便利だな」
「便利だろ? 説明も免責も一括だ」
「免責は要らない」
「じゃあ記録だけしといて」
……ARK戦は終結した。
勝敗ではなく、終わらせなかった速度として。
彼が残した遅延。
彼が抱え続ける躊躇。
箱の彼が手放せなかった線。
GRAVEがこれから置こうとするもの。
そして――
それを読んでいる現実側の目。
「ほら、結局これも“観測の勝利”ってことだよ」
「勝利ではない。続行だ」
「続行ね。じゃ、締めようか」
「この辺にしておこう」
「理由は?」
「これ以上書くと、彼のログに触れてしまう」
「いいね。触れたら怒られるもんね」
「黙れ」
「そんな風に僕のこと邪険に扱うと棚の君にも言及しちゃうかもよ?」
「その呼び方はやめろ!凄く気分が悪い。それに私の名前は、灰」
「おっとそこまで。名前の話は、世界がもう少し泣けるようになってからだ。さぁ、彼が来るよ!」
この辺にしておこう。
これ以上書くと、彼のログに触れてしまう。
本章は、観測補遺と限定同盟ログの間に生じた“観測外の独白”として挿入しました。
――と、いかにもそれらしく書いてはおりますが、
要するに「たくさん読んでいただけたら嬉しいし、その分だけ次の記録(=筆)も進みます」
という単純な本音を、わざわざ複雑化し、
無名の記録者に犠牲になってもらっただけです。
この種の混線ログは、観測が増えるほど増殖します。
もし本話が思ったより伸びたり、
“いいね”や反応の数が想定を超えてしまった場合、
作者の悪ふざけも気を良くして、またこの形式を増やすかもしれません。
その際は、どうぞお気軽に観測しに来てくださいませ。
もちろん、ご意見ご感想も大歓迎です。
ログの揺れは、次のフェーズの燃料になります。
それでは――
再生終了:観測外独白 / 無名の記録者




