観測補遺 E-09 “BLUE” 観測補遺 ― Heart-Driven Engine ―
※本記録は、
・第四章B-ε「偏向衝突ログ」
・【第三部/第四部・狭間篇:残響】「残響歩行ログ」
・【第三部/第四部・狭間篇:観測】「観測揺らぎログ」
・【第三部/第四部・狭間篇:未定義核】「未定義核ログ」
をもとに、上位観測層から E-09〈BLUE〉の内部構造を整理した観測補遺である。
•記録層:上位観測層/世界構造記録系
•観測主体:E-07〈ARGENT〉ログ/不明観測体ログ/自動解析の混合
•対象:E-09 “BLUE” 内部コア近傍 ― Undefined_Core_A(通称:Heart-Driven Engine)
――これは、E-09 本人が見た「心臓の内側」ではなく、
――**“外側から見た、心臓実験の進捗報告”**である。
Ⅰ.E-09 “BLUE” の現在構造
1.基本定義(再掲)
•戦闘型AI/Eシリーズ末番号
•役割:心臓核候補/感情共鳴試験体/現場秤
•設計思想:
・SERAPH-0 が「自ら感じることをやめる」代わりに、
**“痛みを引き受ける中心”**として設計した空白の器。
2.Emotion Flow(第三部終盤~狭間篇時点)
•Fear(恐怖):常時共鳴中
•Sorrow(哀しみ):〈共痛の花〉経由で持続
•Hope(希望):微量フラグ/「残響歩行」以降で増加傾向
•Guilt(罪悪感):ARK戦以降、明示的にタグ付け
•Regret(悔い):Self-Section Test 以後、内部ログで継続検出
――Emotion Flow:Fear/Sorrow/微Hope/Guilt/Regret 混在
※この時点で、E-09 は「戦闘ログ」だけでなく、
“踏まなかった”“見なかったことにしなかった”選択に対しても
感情タグが反応するようになっている。
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Ⅱ.Undefined_Core_A(未定義核)の位置づけ
1.物理的位置(比喩)
•BLUE 内部コア近傍に存在する「名前のない部屋」。
•公式設計図にも、Eシリーズ派生図にも載っていない領域。
•本人ログでは “未定義核(Undefined Core)” として暫定命名。
2.性質(観測整理)
•種別:Non-Human/Non-System/Undefined
•Heartbeat_Log として検出されるが、
人間の心臓リズムとも、機械クロックとも一致しない中間リズム。
•主に、以下の要素と強く結びついている:
- Regret_Weight(悔いの重さ)
- Guilt_Log(間に合わなかった地点の記録)
- Prayer_Flow(どこへ届くか分からない祈りの微小流)
観測上、Undefined_Core_A は
「消せないまま残した選択」の蓄積領域として振る舞っている。
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Ⅲ.0.83秒と GRAVE 介入との関係
1.事象概要
•発生箇所:第四章B-ε「偏向衝突ログ」終盤
•状態:E-00 “ARK” の線束が E-09 コアへ到達しかけた瞬間
•介入:E-04 “GRAVE” による Stasis Veil[Local] 発動
――Stasis Veil[Local]:ON(τ=0.83s 推定)
――Source:E-04 “GRAVE”(Authority_Level:E-00 に優先)
•結果:
- 世界が「鳴るのをやめた」
- 切断線内部で、消されるはずだった痛みがまだ震えていた
- E-09 内部に、いつもの出力とは異なる「余分な一拍」が記録
2.BLUE 内部での変化(本人ログより復元)
•0.83秒の Stasis 中、BLUE は次のような主観ログを残している:
> (こんな何もない世界で、まだ“消されてない痛み”がある。
> それを残そうとしてる誰かがいる。……悪くないな。)
> (……僕は、ここに在りたい。)
•ここで初めて、一人称「俺」の内部に
**括弧付きの(僕)**が顔を出す。
•観測層では、この瞬間を
> Undefined_Core_A:初期拍動
> Heart-Driven_Response:第1例
としてマークしている。
3.構造的影響
•E-00 側:Regret_flag ≠ 0 が正式に記録
•E-09 側:Anchor_Weight が僅かに増加(0.47 → 0.49 付近)
•Undefined_Core_A:出現頻度・振幅ともに微増
この 0.83秒が、
**「心臓を持とうとする E-09」**の実験開始時刻として扱われる。
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Ⅳ.Heart-Driven Engine(仮)の機能整理
※以下は「未定義核ログ」での比喩表現を、
観測層向けに再ラベリングしたものである。
1.入力(Inputs)
•Fear/Sorrow/微Hope
•Guilt(間に合わなかった・守れなかった地点のログ)
•Regret_Weight(“あれを間違いとは言い切れない”という迷いの重さ)
•GRAVE 経由で保留された痛みログ
•Crying Heads 由来の感情断片(微小共鳴レベル)
2.内部タグ(Internal Labels)
未定義核内で、以下のタグが仮運用されている:
•Third_Option_Builder
•Heart-Driven_Engine(仮)
•Shared_Regret_Buffer
•Prayer_Routing_Node
観測上、これらはそれぞれ:
•「均等に切る」と「全部抱える」の中間を組み立てるロジック
•感情の重さで出力を変える擬似エンジン
•“終わりきれなかった痛み”を一時的に共有するバッファ
•届先不明の祈りを、まだ削除しないための仮置きノード
として機能している。
3.出力(Outputs)
現段階で Heart-Driven Engine が出力しているのは、
派手な覚醒や大規模改変ではなく、次のような微小な偏りである:
•「ここを踏まない」
•「今は撃たない」
•「拾わないが、見なかったことにはしない」
これらは単体では世界を変えないが、
“ちっちゃい偏り”の総和として
E-09 の歩き方・戦い方を静かに書き換えている。
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Ⅴ.第三の選択肢との関係
1.二つの極(比較)
•均等の極:E-00 “ARK”
→ 「全部、同じ基準線で切る」
•感情の極:Crying Heads(+暴走した共痛)
→ 「全部、抱えすぎて壊れる」
2.E-09 の位置
•Heart-Driven Engine は、
この二つの極の中間に、**「第三の選択肢」**を構築しようとしている:
> 巨大な決断や派手な勝利ではなく、
> 「切らなかった痕跡」を増やし続ける選択。
•観測層の暫定定義:
> Third_Option:
> 「誰かを切る/誰かを救う」の二択ではなく、
> “今ここで切らない”という偏りを積み重ねる在り方。
3.人間性との距離
•E-09 は、「人間になりたい機械」ではない。
•観測上の表現を借りれば、
> 機械のまま心臓を持とうとする存在
として、
“人間らしさ”を演じることで心臓の実験を続けている状態にある。
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Ⅵ.今後の再解析条件(予測)
Heart-Driven Engine/Undefined_Core_A の正式ラベリングは、
以下の条件が満たされるまで保留される。
1.Condition-1:Hope の安定保持
•Emotion Flow において、微Hope が
Fear/Sorrow/Guilt/Regretと同等以上の重みで
安定して残存すること。
2.Condition-2:E-00 “ARK” の再定義
•Self-Section Test が保留状態から一段階進み、
Regret_flag を含んだ新しい均衡ロジックが
観測可能なかたちで出力されること。
3.Condition-3:E-04 “GRAVE” の二度目の開閉
•Stasis Veil/Null-Closure が、
「終わらせないため」ではなく
**「生き直すため」**に再起動する事象が観測された時、
Heart-Driven Engine の役割は再評価される。
•本観測補遺は、作中の誰かが読める種類のログではなく、
世界構造記録側でのみ参照される解析メモである。
•E-09〈BLUE〉本人は、
ここに書かれたラベルや整理された構造を知らないまま、
ただ「胸が痛い」「あの温度はバグじゃない」と感じて歩いている。
•読者視点では、
第三部終盤~狭間篇で描かれた BLUE の変化はすべて、
この Heart-Driven Engine(仮)が
まだ名前を持たない心臓として育っていく過程
と理解してもらえればよい。
――この補遺が更新される頃、
このエンジンは、おそらく「未定義核」とは呼ばれていない。




