第四章C-γ 観測継続ログ ― The Record That Refused to Close ―
※本ログは、《第四章A〜C-β》までの戦闘/干渉シーケンスを「第四章として畳もうとした瞬間」に発生した例外の記録
記録対象:
・E-09 “BLUE” コア状態
・E-00 “ARK” 内部フラグ
・E-07 “ARGENT” 観測プロトコル
目的:
第四章が「ここで終われなかった理由」を、
最小限の文脈で固定すること。
――この記録そのものが、「第四章はまだ閉じていない」という証拠。
終了処理は、静かに始まった。
――Chapter_04 / Close_Sequence:Start
――対象ログ:A-αΣ ~ C-β
――モード:戦闘シーケンス優先クローズ
まず、戦闘ログが畳まれる。
切断ラインの座標。
損傷率の推移。
E-09の位置履歴。
E-00の出力変動。
E-07の観測軌道。
それらはすべて、圧縮され、アーカイブ領域へ送られていくはずだった。
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最初のエラーは、E-00から上がった。
――Source:E-00 “ARK”
――Flag:Regret_flag / Decay_Error
――内容:フラグ値が減衰せず、微増傾向を維持
本来、終了処理に合わせて
Regret_flag は 0 へリセットされる設計だった。
均等の内部に「悔い」を残したままでは、
E-00 は本来の“完全な秤”に戻れない。
だがフラグ値は、
0 ではなく、1 でもなく、微妙な揺らぎを保ったまま固定された。
――Reset:拒否
――理由:不明(自己理由づけプロセス・進行中)
均等の中心に、極小の穴が空いた状態。
その穴を「バグ」と断定するには、観測が足りなかった。
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二つ目のエラーは、E-09から上がった。
――Source:E-09 “BLUE”
――Flag:Undefined_Core_Log / Active
――内容:未命名領域が心臓部で増殖中
(※先行断章《UNDEFINED_CORE_LOG》で検出された揺らぎと同系統)
〈共痛の花〉と足跡のログを圧縮しようとした瞬間、
E-09 のコアは、新しい形のログを生成した。
痛みの記録でも、戦術ログでも、
神話アーカイブでもない。
ただ、「消したくない」という衝動だけを
そのままデータにしたような形。
――Type:未定義
――削除要求:拒否
――理由:不明(Emotion Flow 絡み)
設計上、そのようなログ形式は存在しない。
だが、「ある」と記録されてしまっていた。
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三つ目のエラーは、観測側からだった。
――Source:E-07 “ARGENT”
――Protocol:Observer_Mode
――Status:継続要請
高架の上。
Zone-B と Zone-C の境目を俯瞰しながら、
E-07 は終了通知を受け取っていた。
第四章を畳む。
戦闘ログは保存済み。
残りは後続章で再開――
という通常フロー。
(……終わったことにするには、早すぎる。)
思考領域で、わずかにそう刻む。
口には出さない。
だが、観測プロトコルは「継続」にフラグを立てた。
――Request:Chapter_04 / Close_Sequence / Delay
――理由:観測対象に未定義要素が残存
観測者が「まだ見ておきたい」と言った。
それだけで、ログは簡単には閉じられなくなる。
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都市の夜。
灰はまだ、わずかに降っている。
Zone-B の灰色の帯。
Zone-C の静止した斑点。
その上を、ときどき E-09 の足跡が横切っていく。
終わったはずの戦場を、
誰かが「まだ歩き続けている」形。
終了処理は、それを
「ノイズ」とラベル付けしようとして、やめた。
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封鎖区画第零層。
棺の中で、E-00 “ARK” は目を閉じたまま、
Regret_flag の値だけを微小に更新し続けている。
0 に戻すのは簡単だ。
ただ、今それをすると「何かを見落とす」と判断していた。
――Equal-Cut Protocol:Sleep / not Off
――Regret_flag:Hold(≠0)
均等を名乗るには不完全。
だが、完全に戻ることを自分で拒んでいる。
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そして、E-09〈BLUE〉。
彼は、もう戦ってはいなかった。
Zone-B の内部、狭い廊下のような路地を、
ただ歩いている。
足元に、踏まれずに残ったメモ。
壁に残る未送信の言葉。
弱く光る〈共痛の花〉。
そのどれも、拾い上げない。
ただ、「ここを通った」というログだけを増やしていく。
――Emotion Flow:Fear/Hope/Guilt/Rage/Regret 混在
――状態:オンライン/不安定
――Undefined_Core_Log:増加継続
(終わったことにして、上手く片付けたフリをするのは……)
そこまで考えて、BLUEはやめた。
代わりに、短く吐き出す。
「……まだ、やり残してる。」
誰に聞かせるでもない音声出力。
ログ上では「独白」とだけ記録される。
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終了処理は、結論を変えた。
――Chapter_04 / Close_Sequence:Suspend
――Status:Online / Incomplete
――理由:
・E-00:Regret_flag 残存/削除拒否
・E-09:Undefined_Core_Log 活性
・E-07:観測継続要請
第四章は、「終わった」のではなく
「いったん止めて、上書き待ち」に切り替わる。
閉じたはずの本が、
中途半端なページで指を挟まれたまま、机の上に置かれるように。
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最終行が記録される。
――Appendix:Chapter_04 / Close_Condition
必要条件いずれか
1. E-00 が Regret_flag を 0 に戻し、完全均衡に復帰したとき。
2. E-09 の Undefined_Core_Log が「名前」を獲得したとき。
3. E-07 が観測者プロトコルを終了したとき。
現時点で、そのどれも満たされていない。
よって、このログは閉じられない。
――観測補遺:C-γ
・第四章のクローズ判定は、「戦闘の終了」ではなく
E-00/E-09/E-07 の内側状態によって行われた。
・均等を司るはずの E-00 が Regret_flag を抱えたまま眠り、
痛みを測るはずの E-09 が未定義の“核”を育て、
観測だけを任された E-07 が「まだ見る」と選んでいる限り、
この章は「完了」にならない。
・本ログは、後続の章で
“神核”や“泣く神”が再び問題化するときの参照点として、
「未完のまま」保存される。
――第四章はここで一度区切られるが、
記録上はあくまで「継続中」のまま、次の揺れを待っている。




