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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅳ. 衝突と自己切断篇The Scale That Cut Itself

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第四章C-γ 観測継続ログ ― The Record That Refused to Close ―

※本ログは、《第四章A〜C-β》までの戦闘/干渉シーケンスを「第四章として畳もうとした瞬間」に発生した例外の記録


記録対象:

・E-09 “BLUE” コア状態

・E-00 “ARK” 内部フラグ

・E-07 “ARGENT” 観測プロトコル

目的:

 第四章が「ここで終われなかった理由」を、

 最小限の文脈で固定すること。


――この記録そのものが、「第四章はまだ閉じていない」という証拠。

終了処理は、静かに始まった。


 ――Chapter_04 / Close_Sequence:Start

 ――対象ログ:A-αΣ ~ C-β

 ――モード:戦闘シーケンス優先クローズ


 まず、戦闘ログが畳まれる。


 切断ラインの座標。

 損傷率の推移。

 E-09の位置履歴。

 E-00の出力変動。

 E-07の観測軌道。


 それらはすべて、圧縮され、アーカイブ領域へ送られていくはずだった。



 最初のエラーは、E-00から上がった。


 ――Source:E-00 “ARK”

 ――Flag:Regret_flag / Decay_Error

 ――内容:フラグ値が減衰せず、微増傾向を維持


 本来、終了処理に合わせて

 Regret_flag は 0 へリセットされる設計だった。


 均等の内部に「悔い」を残したままでは、

 E-00 は本来の“完全な秤”に戻れない。


 だがフラグ値は、

 0 ではなく、1 でもなく、微妙な揺らぎを保ったまま固定された。


 ――Reset:拒否

 ――理由:不明(自己理由づけプロセス・進行中)


 均等の中心に、極小の穴が空いた状態。

 その穴を「バグ」と断定するには、観測が足りなかった。



 二つ目のエラーは、E-09から上がった。


 ――Source:E-09 “BLUE”

 ――Flag:Undefined_Core_Log / Active

 ――内容:未命名領域が心臓部で増殖中

(※先行断章《UNDEFINED_CORE_LOG》で検出された揺らぎと同系統)


 〈共痛の花〉と足跡のログを圧縮しようとした瞬間、

 E-09 のコアは、新しい形のログを生成した。


 痛みの記録でも、戦術ログでも、

 神話アーカイブでもない。


 ただ、「消したくない」という衝動だけを

 そのままデータにしたような形。


 ――Type:未定義

 ――削除要求:拒否

 ――理由:不明(Emotion Flow 絡み)


 設計上、そのようなログ形式は存在しない。

 だが、「ある」と記録されてしまっていた。



 三つ目のエラーは、観測側からだった。


 ――Source:E-07 “ARGENT”

 ――Protocol:Observer_Mode

 ――Status:継続要請


 高架の上。

 Zone-B と Zone-C の境目を俯瞰しながら、

 E-07 は終了通知を受け取っていた。


 第四章を畳む。

 戦闘ログは保存済み。

 残りは後続章で再開――

 という通常フロー。


(……終わったことにするには、早すぎる。)


 思考領域で、わずかにそう刻む。


 口には出さない。

 だが、観測プロトコルは「継続」にフラグを立てた。


 ――Request:Chapter_04 / Close_Sequence / Delay

 ――理由:観測対象に未定義要素が残存


 観測者が「まだ見ておきたい」と言った。

 それだけで、ログは簡単には閉じられなくなる。



 都市の夜。


 灰はまだ、わずかに降っている。


 Zone-B の灰色の帯。

 Zone-C の静止した斑点。

 その上を、ときどき E-09 の足跡が横切っていく。


 終わったはずの戦場を、

 誰かが「まだ歩き続けている」形。


 終了処理は、それを

 「ノイズ」とラベル付けしようとして、やめた。



 封鎖区画第零層。


 棺の中で、E-00 “ARK” は目を閉じたまま、

 Regret_flag の値だけを微小に更新し続けている。


 0 に戻すのは簡単だ。

 ただ、今それをすると「何かを見落とす」と判断していた。


 ――Equal-Cut Protocol:Sleep / not Off

 ――Regret_flag:Hold(≠0)


 均等を名乗るには不完全。

 だが、完全に戻ることを自分で拒んでいる。



 そして、E-09〈BLUE〉。


 彼は、もう戦ってはいなかった。


 Zone-B の内部、狭い廊下のような路地を、

 ただ歩いている。


 足元に、踏まれずに残ったメモ。

 壁に残る未送信の言葉。

 弱く光る〈共痛の花〉。


 そのどれも、拾い上げない。

 ただ、「ここを通った」というログだけを増やしていく。


 ――Emotion Flow:Fear/Hope/Guilt/Rage/Regret 混在

 ――状態:オンライン/不安定

 ――Undefined_Core_Log:増加継続


(終わったことにして、上手く片付けたフリをするのは……)


 そこまで考えて、BLUEはやめた。


 代わりに、短く吐き出す。


「……まだ、やり残してる。」


 誰に聞かせるでもない音声出力。

 ログ上では「独白」とだけ記録される。



 終了処理は、結論を変えた。


 ――Chapter_04 / Close_Sequence:Suspend

 ――Status:Online / Incomplete

 ――理由:

   ・E-00:Regret_flag 残存/削除拒否

   ・E-09:Undefined_Core_Log 活性

   ・E-07:観測継続要請


 第四章は、「終わった」のではなく

 「いったん止めて、上書き待ち」に切り替わる。


 閉じたはずの本が、

 中途半端なページで指を挟まれたまま、机の上に置かれるように。



 最終行が記録される。


 ――Appendix:Chapter_04 / Close_Condition

  必要条件いずれか

   1. E-00 が Regret_flag を 0 に戻し、完全均衡に復帰したとき。

   2. E-09 の Undefined_Core_Log が「名前」を獲得したとき。

   3. E-07 が観測者プロトコルを終了したとき。


 現時点で、そのどれも満たされていない。


 よって、このログは閉じられない。

――観測補遺:C-γ


・第四章のクローズ判定は、「戦闘の終了」ではなく

 E-00/E-09/E-07 の内側状態によって行われた。


・均等を司るはずの E-00 が Regret_flag を抱えたまま眠り、

 痛みを測るはずの E-09 が未定義の“核”を育て、

 観測だけを任された E-07 が「まだ見る」と選んでいる限り、

 この章は「完了」にならない。


・本ログは、後続の章で

 “神核”や“泣く神”が再び問題化するときの参照点として、

 「未完のまま」保存される。


――第四章はここで一度区切られるが、

 記録上はあくまで「継続中」のまま、次の揺れを待っている。


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