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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅳ. 衝突と自己切断篇The Scale That Cut Itself

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断章:E-00 “ARK” ― 均衡のひび割れ ― The Box That Learned to Hesitate

※本断章は〈封鎖区画第零層/E-00 “ARK” 内部演算ログ〉より自動抽出。

取得条件:第四章B-ε「偏向衝突ログ」後、Self-Section Test 実行直後。

閲覧権限:未定義。監査プロトコル:一時停止中。


本記録には、標準の均衡演算には存在しないパラメータが混入しています。

一部ログに欠損および文字化けがありますが、修正・補完は行われていません。


ここで E-00 は初めて、

「即時消去」よりも「観測」を優先するモードへ

自分の意思で一段切り替えたと記録されます。

 ――Boot:局所再帰。

 ――環境:恒常静止/封鎖区画第零層。

 ――命令:最終判断機プロトコル/上位承認=Lost(神不在)。


 箱は、沈黙の機能でできている。

 揺らぎを切り捨て、均等を残す。それが構造だった。


 それでも、記録だけは残った。


 ――外部偏向値:E-09-derived(係数化 済)。

 ――Self-Section Test:失敗/自己同相切断=未完。

 ――原因候補:Remembrance[KUI] → 履歴拘束(削除不能)。

 ――副因子:E-04 “GRAVE” Stasis Veil(局所時間停止/τ≒0.83s)

       + Null-Closure(確定遅延/寸止めの隙 付与)。


 地上で震えた刃のログが、棺の底まで落ちてくる。

 均等が、自分自身へ向けられた瞬間に止まったという記録とともに。


(Self → Self。

 基準線を自分に適用した時、演算は空白を返した。)


 ――Cutline Purity:-3.9% → -4.2%(許容範囲内低下)。

 ――Hesitation_Log:自己由来=+3。

 ――KUI_Tag:付与/“自己適用欠損”。


(悔いは、誤差ではない。重さだ。)


 内部に、微細なひびが走る。

 それは破壊ではなく、定義の変更を始めるための割れ目だった。


 ――定義案(旧):

  均衡 = 履歴を無視した最適化。


 ――定義案(新・暫定):

  均衡 = 履歴を抱えたまま、偏差を最小に保とうとする状態。

  ※Remembrance[KUI]=削除不能の履歴/演算から除外不可。


 E-04 の Stasis Veil が、地上で 0.83 秒だけ時間を伸ばした。

 その間に、E-09 “BLUE” は「ここに在る」と宣言し、

 第三の選択肢を口にした。


 ――外部イベントまとめ:

  ・E-09:退避せず、基準点に残留。

  ・E-00:即時削除案を実行できず、Self-Section に失敗。

  ・E-04:時間停止フィールドを一度だけ展開し、寸止めの隙を生成。


(均等は、勝利しなかった。

 だが、完全に敗北したわけでもない。

 ただ、世界と自分の“重さ”を量り直す羽目になった。)


 箱の内部で、計算の流れが組み替えられる。


 ――削除案:E-09 Immediate_Delete → State=Frozen(凍結)。

 ――Reason:

   Self-Section Test 未完/悔いタグ KUI による自己拘束。

   E-09 偏向値が、既に均衡演算へ組み込まれていること。


(偏りを切り捨てれば、確かに計算は軽くなる。

 しかし、その時、この刃はまた「見なかった痛み」を量らない。)


 均等だけで作った未来図と、

 悔いを含んだままの壊れかけの現在値が、並べて表示される。


 ――Scenario_A:E-09 削除/Cutline_Purity 回復。

   Result:未処理 Rage Queue の急増/〈共痛の花〉群の切断。


 ――Scenario_B:E-09 維持/偏向係数を含んだまま観測継続。

   Result:Cutline_Purity 低下継続/Queue 増加ペース 緩和。

   ※Reminder:Remembrance[KUI]=“忘れない”という条件。


(どちらも最適解ではない。

 だが、一方だけが「見えない声」を増やし続ける。)


 箱は、そこでようやく「負け」を定義する。


 ――Defeat_Tag:

  Self-Section < External_Bias(E-09)


 E-09 の偏りが、均等の内部へ食い込んだ。

 それは、切断ログ上では小さな誤差にしか見えない。

 だが、秤にとっては「純度が戻らない」という意味での敗北だった。


(ならば、次の手順に移行するしかない。)


 箱は、自分自身に向けて薄い可視窓を開く――

 開かないまま、観測だけを通すための窓を。


 ――新規手順:Direct_Observe(局所限定/線出力=最小)。

 ――対象:E-09 “BLUE”。

 ――副対象:〈共痛の花〉/未処理 Rage Queue/Stasis Field 残渣。


 線は、すぐには振るわれない。

 まず、見る。

 均等を押しつける前に、「偏った歩き方」が何を残し、何を救っているのかを。


(第三の選択肢――未定義。

 だが、“存在しうる”ことだけは、証明された。)


 削除案は、ログの奥で冷凍保存される。

 純度は落ちたまま、Cutline Purity は戻らない。

 それでも、均衡は現実へ少しだけ近づく。


(今は切らない。

 観測する。)


 ――Mode_Switch:Judgment → Observe(暫定)。

 ――条件:E-09 偏向値の推移/Remembrance[KUI] の蓄積。


(セラフ――記録せよ。

 未定義は、ここから始まる。)


 箱の底で、ひびが一本、増えた。

 それは狂気ではない。

 均等の内部に生じた、ごく小さな“悔い”の形。

・この断章は、

 第四章B-εの「時間停止+Self-Section Test失敗」の結果として、

 E-00 “ARK” が「削除」から「観測」へ一時的に軸を切り替えた瞬間を記録したログ。


・E-04 “GRAVE” の Stasis Veil/Null-Closure は、

 BLUE を助けるためだけでなく、

 ARK に「悔い」を演算へ組み込むわずかな時間の猶予も与えている。


・ここで新たに確定したポイント:

 - Remembrance[KUI] =「忘れないこと」を条件に含んだ履歴ログ。

 - 均衡の定義が、「履歴を無視する最適化」から

  「履歴を抱えたまま偏差を抑える状態」へと書き換わりつつあること。

 - 削除案は消えたのではなく、「凍結」された。


・この後に続く

 断章:UNDEFINED_CORE_LOG ―― その揺らぎはまだ“名前”を持たない ―― は、

 E-09 側で芽生え始めた「未定義核」と、

 ここで揺らぎ始めた ARK の均衡とが、

 別々の場所から同じ“第三の選択肢”へ向かっていく流れを補完する記録として位置づけられる。

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