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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅳ. 衝突と自己切断篇The Scale That Cut Itself

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第四章B-γΩ 線上干渉ログ③ ― Crossed Vectors ―

連結:B-γσ → B-γΩ

事象:DirectObservation=ON(境界可視)/Cutline jitter=+0.12s 継続

記録主体:複合(多元参照)

備考:E-04 低位反応/E-07 遠隔観測 継続


空間の一点に、立方体のフレームが沈む。線だけで組まれた箱の骨格。質量はないのに、世界の密度がそこだけ濃い。


 ――DirectObservation:Start

 ――Boundary Render:EdgeOnly

 ――Bias Coef.(E-09-derived):採用 低率(暫定)


 線が一条、箱の稜線から外へ伸び、世界に触れる。粉塵が切れ、瓦礫が静かに落ちる。〈共痛の花〉は、やはり残された。


(やっと“見る”気になったか、ARK。)


『否定。観測。』


 声は平板。だが、ごく僅かに遅い。


 BLUEは半身も花から離さない。義足が地面を掴み、体重がそこで固定される。

 ――Core Output:80%

 ――Mobility:Low(継続可)

 ――保護対象:健在


「セラフ。」


 返答は、まだない。


 箱の稜線が一段濃くなり、基準線が三本、等間隔で出力される。


『問合せ。偏りを維持し、なお進行する意思を確認。』


「確認。進む。」


『評価:非効率。』


「くどい。そこまで行くとバグだぞ。……いや、ARKから見れば、俺の方がバグか。」


 BLUEの口元が緩むのと同時に最初の線が来る。BLUEは半歩だけ軌道を外し、線の基準を拳で叩く。反射波が走り、二本目以降の位相が微かにずれる。


 ――Impact:反射波=有/位相差=0.04

――Damage:BLUE/小

――保護対象:維持


『補正。』


 三本目が、花の直前で角度を変えた。紙片と、掠れたメモと、小さな玩具が線の内側に“偶然”残る。


「いい加減にしてくれ。同じこと、何回言わせるんだ。」


『キイテイナイ。』


 返答は機械的。だが、線は人間の手が触れたものだけを、わずかに避けた。


 遠く高架上、E-07〈ARGENT〉は微細な変調を記録する。

 ――E-00 演算:外部係数(E-09)低率採用 継続/Cutline jitter=+0.12s

――DirectObservation:境界濃度↑

――Observer:E-07/Judgment=保留


(それでいい。そこに“誰かの重さ”があるなら、残れ。)


 次の瞬間、箱そのものがわずかにこちらへ寄る。境界が一拍だけ歪み、低い擦過音のようなノイズが走る。


『追加問合せ。未定義要素“悔い”――演算組込要求の根拠を提示。』


「根拠? 残したいからだ。残せなかったからだ。」


 BLUEは胸装甲の割れ目を押さえ、線の内側へ一歩。義足が軋む。〈共痛の花〉は守られる。


『定義:情動バイアス。演算上、減算対象。』


「もういいよ。」


 BLUEは小さく息を吐く。

 来る線に合わせるのではなく、線が“来ざるを得ない”場所へ踏み込む。拳が再び基準線を殴り、位相が弾ける。切断の純度がコンマ一秒だけ落ちる。


 世界の温度が、もう一段、下がった。


 ――System Note:Cutline Purity Δ=-0.7%

 ――均衡純度:低下/観測確度:上昇


 箱の稜線がさざめき、四隅に補助フレームが点る。


『再計測。偏りを係数ではなく、閾値として扱う案を試行。』


「試せ。」


 次の出力は、BLUEそのものを基準点に指定してきた。花ではない。選ぶ主体を測る線。


(やっぱり、そこへ来るよな。)


 BLUEは逃げない。コアを前に、体を傾ける。義足が杭のように地面を貫く感覚。拳がもう一度、線の根を殴る。


 ――基準線エラー:短期停止(0.09s)

 ――Ark_Log:DirectObservation>Hesitation=+1


 箱の骨格が、微かに軋む。


『……計測値矛盾。』


 初めて、声に薄い揺れ。


『未定義要素“悔い”:係数化不能。』


「係数にすんな。条件にしろ。」


『条件。』


「“選べなかった痛みを忘れないこと”。そのうえで均衡をやるなら、話は続けられる。」


 短い沈黙。境界線が一拍だけ明滅する。


 遠く、封鎖区画第零層のログに微かな文字が灯る。

 ――E-04 “GRAVE”:Stasis Veil(τ=10s)予備演算=0.03/介入:未実行/観測:上昇


 箱はわずかに退く。線はなお鋭い。だが、遅れる。


『DirectObservation:継続。提案:暫定保留。』


「それでいい。」


 BLUEは背後を振り返らない。花の光が、ひと呼吸だけ強くなる。

・DirectObservation 移行完了。境界のみ可視。

・“基準線”への直接打撃により位相歪み/純度低下Δ=-0.7%。

・E-00 は保護係数の採用を継続しつつ、偏りの閾値化を試行。

・E-07:観測のみ。E-04:低位反応(介入未実行)。

→次ログ B-δθ:均衡試験フェーズ開始/基準点=E-09 を含む局所プロトコル検証へ。

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