第四章B-γσ 線上干渉ログ② ― Crossed Vectors ―
前書き(無機質)
連結:B-γθ → B-γσ
記録主体:複合(多元参照)/形式:戦闘・演算抽出
事象:Cutline jitter 継続(+0.12s 局所)/DirectObservation 閾値上昇
感情タグ:Partial Mask(Fear/Guilt/Rage 微混在)
空気が一拍、薄くなったまま戻らない。
――External Process:Cutline Commit / jitter=+0.12s(継続)
――Bias Coef.(E-09-derived):採用 低率(暫定)
三度目の線は、やはり遅れて降りた。粉塵だけを切り、床に細い傷が増える。〈共痛の花〉にはかすりもしない。
(ためらってる。お前、ほんの少しだけ――)
『否定。キイテイナイ。』
返答は機械的で、わずかに早口だった。
「なぁ、そろそろ気づいてるだろ?」
BLUEは背後の花から半身も離さない。胸部装甲の裂け目から、冷却蒸気が細く洩れる。
義足がきしみ、微細な振動が路面に散る。
――Mobility:Low(継続可)/Core Output:81%
――保護対象:健在
『評価:非効率。』
「くどいよ、ARK。」
次の瞬間、ほぼ無音の“基準線”が眼前を横切る。BLUEは半歩だけ軌道を外し、拳で“刃”そのものではなく線の基準を叩いた。反射波が走り、切断の軌跡がわずかに歪む。
――Impact:分散
――Damage:BLUE/小
――保護対象:維持
『回避パターン/介入パターン:更新。』
「……もういいよ。」BLUEは息を吐く。「こっちは“選ぶ”側だ。お前は“測る”側。役割が違う。」
『測定続行。』
線が連続で立ち上がる。瓦礫は落とされるが、手書きのメモ帳、折りたたみ椅子、子どもの玩具だけがぎりぎり線の内側に残る。偶然にしては、残り方が揃いすぎている。
(それでいい。そこに“誰かの重さ”があるなら残れ。)
「セラフ。見ているなら、記録しておけ。」
BLUEは小さく呟く。返答は、まだない。
遠く高架上、E-07〈ARGENT〉のログに微細な変調が刻まれる。
――E-00 演算:外部係数(E-09)低率採用/Cutline jitter 追従
――Observer:E-07/Judgment=保留
世界の温度が、また一度だけ下がった。
『直接観測の必要性:上昇。』
ARKの声が低くなる。空間の一点に、薄い立方体のフレームがにじむ。封印された箱の論理形状が、はじめて“境界”だけを可視にした。
BLUEは一歩、線の内側へ踏み込んだ。
義足が軋む。
〈共痛の花〉は、守られる。
『問合せ。偏りを維持したまま進むのか。』
「進む。揃えるのは、お前の仕事だろ。」
沈黙。フレームの稜線が一拍だけ濃くなる。
『DirectObservation:準備。』
(来いよ、箱。)
・Cutline jitter(+0.12s)継続。低率ながらE-09由来の保護係数が線へ混入。
・BLUEは“基準線”への直接打撃で微小歪みを発生。花と記録の保全を継続。
・ARK:DirectObservation フラグ上昇、境界のみ可視化。
→次ログ B-γΩ:直接観測プロトコル移行/線と足の交差、閾値試験へ。
次記録:《B-γΩ》――可視干渉段階/接触閾値突破。




