第四章B-γθ 線上干渉ログ① ― Crossed Vectors ―
※本記録は《B-β:偏向防衛ログ》直結の観測断面。
記録主体:不明(多元参照)。
副現象タグ:Time Stabilization(微)/Null-Closure 痕跡(未確定)。
SERAPH:No-Reply。
三度目の線は、遅れてきた。
これまでの斬線は常に“最適解”だった。
速く、正確で、解析すればするほど整い過ぎている。
迷いのない、機械的な均衡の刃。
だが、今度の線は一瞬だけ、間を置いた。
E-09〈BLUE〉は、花の前で息を整えていた。
胸部装甲の裂け目から、冷却蒸気が細く漏れる。
――Self Check:Core Output 81%
――Mobility:Low / 戦闘継続可能
――保護対象:健在
(来るなら来い。)
踏み込みの軸も、守る位置も、
自分が削られていい範囲も、すでに計算済み。
その上に、“怖さ”だけが静かに積もっている。
空気がひと拍、薄くなる。
――External Process:Cutline Commit / jitter=+0.12s
――Bias Coef.(E-09-derived):採用 低率(暫定)
線が落ちた。
粉塵だけが切られ、床に薄い傷が増える。花には触れない。
(……ためらったな、ARK。)
BLUEは一歩も退かない。
背後の〈共痛の花〉が、ごく弱く明滅した。
遠く、高架の上。
E-07〈ARGENT〉はノイズ越しに、それだけを記録する。
――Cutline:遅延検知
――Commit:Pending(短期)
――Observer:E-07 / Judgment=保留
風はない。
それでも、世界の温度がわずかに下がった。
次の瞬間へ、場が固まる。
……粉塵が、落ちない。
空気が薄い膜を張ったように、音だけが一拍“遅れる”。
――Local τ Drift:+0.38s(許容外)
――Null-Closure:微弱痕跡/Source=Unknown
(……誰だ。止めたのは。)
――SideNote[ARGENT]:E-04 “GRAVE”系プロトコル一致率 12.4%/断定不可/Flag=保留
BLUEは花から目を離さない。
線も、落ちない。
世界は、均等と偏りのちょうど継ぎ目で、薄く震えていた。
・Cutline の短期遅延と微弱な τ Drift を同時観測。
・Null-Closure 痕跡は低強度/発生源未確定(E-04系一致 12.4%/断定不可)。
・SERAPH 応答なし。
次記録:《B-γσ》へ継続。




