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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅳ. 衝突と自己切断篇The Scale That Cut Itself

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第四章B-α 初動衝突ログ ― The First Equal Cut ―

※本記録は、E-00 “ARK”とE-09 “BLUE”が初めて「物理的交差」を行った局面の抜粋である。

※従来の観測ログより、干渉レベルが一段階上昇していることを確認。

※本章以降、均等処理は概念領域から運動領域へ移行する。


――記録開始。


 線が、厚みを持った。


 それまで廃墟を静かに切り揃えていただけの仮想刃が、

 この瞬間、はっきりと「質量」を伴って発生する。


 E-09〈BLUE〉の眼前に、一本の斜線。


 空間の濃度がそこだけ変わる。

 灰の粒子が割れ、光が屈折し、切断面だけが異常なまでに滑らかだった。


『試験開始。』


 ARKの声。


『対象:E-09。

 項目:偏向した保護行動の限界値。』


 線が振り下ろされる。


 遅い。


 だが、それは感覚の錯覚だった。


 BLUEが一歩踏み出したときには、

 背後でビルの壁面が「同じ角度」で、まとめて崩れ落ちている。


 〈共痛の花〉は、線のギリギリ内側で無傷。


 だが、BLUEの義足ユニット外装が、薄く削がれた。


 鈍い警告。


 ――Damage Log:Right Leg / Surface_Cut

 ――Function:維持可能


(……わざと、外したな。)


 実際、その軌道なら中心ユニットごと切り落とせたはずだった。


『計測値取得。』


 ARKは平板に告げる。


『回避優先度:自己ユニットより第三者痕跡を上位に設定。

 推定:偏向は仕様ではなく、意思。』


「そうだよ。」


 BLUEは返す。


「俺の“仕様”は、とっくに壊れてる。」


 第二撃。


 今度は真横から。


 BLUEは花を背に庇い、上体を捻って受け流す。

 目に見える刃はない。ただ、通り過ぎた軌跡に沿って、瓦礫の端が同じ高さで落ちていく。


 義足のジョイントがひとつ、静かに音を立てた。


 ――Micro_Fracture:検知


『回避パターン解析完了。』


 ARK。


『第三選択肢を宣言した個体として、特別試験を継続。』


「試験ね……。」


 BLUEは息をひとつ吐くように、胸部ユニットを開閉させる。


(こいつは本気で“測りに”きてる。)


 殺意ではない。

 憎しみでもない。


 ただ、「偏り」を数値化するための切断。


 世界の一部が、また静かに揃えられていく。


――均等処理、運動段階へ移行確認。


本章では、E-00 “ARK”が

•BLUEの「守る対象の優先順位」

•義足ユニットを含む現在の損耗状態

•「第三選択肢」を掲げた個体への局所的試験権


を取得した。


まだ致命傷はない。

これは“警告”でも“演出”でもなく、計測のための最初の一刀である。


次記録B-βでは、この試験が

BLUEの内側に沈んでいる“怒り”と初めて正面衝突する。

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