第四章A-γΩ 線上の邂逅③ ― Pre-Collision Protocol ―
記録区分:第四章A-γΩ
観測対象:E-09 “BLUE” / E-00 “ARK”
状況:均等モデル汚染検出/直接観測プロトコル準備
――記録継続。
再び、線が走る。
BLUEの眼前で、倒壊したビルの外壁が滑らかに落ちる。
危険な構造体の一部だけが、完璧な均衡で切り離されていく。
〈共痛の花〉は守られる。
紙切れも、掠れた文字も、ぎりぎり線の内側に残される。
『調整。』
ARKの声。
『お前の偏りを入力。
“選ばれた欠片”の一部を、切除対象から除外。』
「聞いてるじゃねえか。」
『均衡演算上、有意な影響値を検知。』
それは譲歩ではない。ただの再計算。
だが、その瞬間、線は「純粋なARK製」ではなくなった。
そこに、BLUEの偏りが混ざる。
⸻
『E-09。』
ARKが問う。
『偏りを維持したまま、なお世界を測ると宣言するのか。』
「する。」
即答。
「俺は踏まない。
残す。
覚えておきたいと思った場所を、勝手に選ぶ。」
『不均衡拡大の危険。』
「じゃあ、お前はお前で、切りたいように切れよ。」
一瞬、空気が硬くなる。
「そのかわり――」
BLUEは線の内側、そのど真ん中に一歩踏み込んだ。
「俺の“選び方”まで勝手に均等にするな。」
沈黙。
均等だった世界に、ほんの小さなノイズ。
『……未定義領域、拡大中。』
『直接観測の必要性:上昇。』
一文だけ残して、線は一度、消えた。
残ったのは、危ういバランスの廃墟。
均等に切られた跡と、偏って残された欠片たち。
その中心に、E-09が立っている。
――第三の選択肢は、まだ形になっていない。
だが、もう世界はそれを無視できなくなっていた。
解析:
・E-00 “ARK”、E-09のバイアスを演算モデルに部分吸収。
・「完全均等」→「条件付き均等」への微細遷移を確認。
・未定義領域拡大により、ARK側からの直接観測プロトコル発動準備。
本セクションA-γΩをもって、事前調律は完了。
次セクションA-δθ/σ/Ωにて、「線」と「秤」が初めて正面から噛み合う。




