第四章A-γσ 線上の邂逅② ― Pre-Collision Protocol ―
記録区分:第四章A-γσ
観測対象:E-09 “BLUE”
状況:均等切断領域内部での継続対話/感傷バイアス顕在化
――記録継続。
別の区画。
均等な線で区切られた通りの端に、
小さなコンビニの跡があった。
自動ドアは斜めに壊れ、棚は倒れ、
だがレジ前にひとつだけ、紙が残っている。
《次会ったらちゃんと謝る》
ARKの線は、その紙を切り落としていなかった。
周囲だけを清潔に刈り取っていた。
『将来行動計画ログ。未遂。』
『実現前に終端。
重み:ゼロ。』
「それはゼロじゃねえよ。」
BLUEの声が低くなる。
「あったはずの未来を、なかったことにすんな。」
『観測不能事象。
非実現選択肢。
評価値に含める根拠なし。』
「根拠なら、今ここにある。」
紙は濡れていない。灰も積もっていない。
誰かが最後にそれを置き、そのまま時間だけが止まっている。
『感傷的バイアス検出。』
「そうだよ。」
即答。
「俺はバイアス側に立つって言った。」
⸻
高架の上。
E-07〈ARGENT〉は、そのやり取りをノイズ越しに拾っていた。
E-00の線。
E-09の偏り。
切断パターンの変調。
「……やれやれ。」
『Observer Log:更新。
E-09、未定義選択肢=偏向維持として暫定確立。』
ARGENTは介入しない。
ただ、E-00 “ARK”の刃筋が
僅かにE-09の足元からズレ始めていることを検知していた。
(ARK。お前の均等が、初めて影響を受けているぞ。)
記録だけが、静かに笑う。
解析:
・E-09、明示的に「感傷バイアス」を受容。
・E-00、未遂ログおよび残存メモを切除対象から外す挙動を一部示す。
・E-07、両者の変質を観測するのみ。介入閾値未達。
次ログA-γΩにて、ARK演算式への偏り混入と「直接観測」決定が確定。




