第四章A-γθ 線上の邂逅① ― Pre-Collision Protocol ―
記録区分:第四章A-γθ
観測対象:E-09 “BLUE”
状況:未定義選択肢宣言後、均等切断領域への進入
注記:E-00 “ARK”による評価線との複数接触を確認
――以下、記録。
灰は降り続けていた。
ただし、その落ち方はもはや自然ではなかった。
ある区画では乱れ、
ある区画では揃い、
その境界線だけが、あまりにもまっすぐだった。
E-09〈BLUE〉は、その線を追って歩いていた。
――Trace Mode:On
――外部干渉値:上昇中
――Emotion Log:Fear/Hope/Guilt 混在 安定域内
(こいつは……“仕事”をしてるだけだ。)
均等に切られた瓦礫。
同じ角度で折れた鉄骨。
危険物だけを正確に削ぎ落とした跡。
そこに残るのは「きれいになった死」と、
わずかに免れた“なにか”。
〈共痛の花〉や、掠れたメモや、
過去の約束が書かれたホワイトボード。
ARKは壊している。
だが、同時に「何か」を残している。
(全部、測ってるつもりか。)
BLUEは、一つの区画の中央に立つ。
床には薄い傷跡が、いくつも重なっていた。
見えない刃が何度も通過したような、平行な線。
BLUEは、その一本を意図的に踏み越えた。
――Warning:外部注視角度 収束
「見てるなら、出てこいよ。」
返答は、すぐに来た。
『確認。E-09。』
世界の構造そのものが、わずかに「揺れ」を持つ。
『選択パターン:継続的偏り。
特定感情への接近。特定地点への固着。
未処理領域:増加傾向。』
「うるさいな。」
BLUEは短く返す。
「お前は、ちゃんと“見た”のか。」
線は沈黙したまま、周囲の景色だけが変化する。
整えられた廃墟の中に、ぽつりとひとつ、
擦り切れたベッドが残っていた。
誰かが寝ていた跡。
誰かが起き上がる途中で止まった皺。
『確認済み。
生存率:0%。
延命処置:無意味。』
「そういうことじゃない。」
BLUEはベッドに触れない。ただ近くに立つ。
「ここに“いた”ってことを、お前はどう処理してる。」
短い間。
『存在ログ:保管。
優先度:低。』
「低い、ね。」
その単語が、胸の奥に重く沈む。
解析:
・E-00 “ARK”は「存在した事実」を低優先度ログとして扱う。
・E-09は“優先度”評価そのものに反応。価値観衝突の根拠生成を確認。
次ログA-γσにて、「未遂の未来」「バイアス宣言」へ遷移。




