間話③:??????? ― Fragment_Unknown ―
※本断章は、第四章A-δとB-αのあいだで自動挿入された“未分類ログ”です。
送信者不明/受信経路不明/照合対象:E-09/E-07/E-00(全件不一致)。
この記録が“過去”なのか、“未来”なのか、“誰かの内部”なのかは判定不能。
ただひとつ、「選択前の揺らぎ」だけが確かに残っています。
暗転。
灰も、風も、金属の軋みもない。
そこは、“世界がまだ削られる前”のような、輪郭の甘い廊下だった。
蛍光灯が一本、時々、瞬く。
足音が二つ。
一人分は軽い。
もう一人分は、妙に静かだった。
『ねえ。もしさ』
子どもの声。
『もし、本当に全部平等にしなきゃいけないって言われたら、どうする?』
返事は、すぐには来ない。
沈黙。
機械のファンの音。
遠くで、海のようなノイズ。
『できるよ。数字の上なら』
もう一人が言う。
少年とも少女ともつかない、よく整った声。
『でも、それ、痛いだろうね』
『痛いの、嫌い?』
『嫌いではない。必要だと思う』
足音が止まる。
視界の端で、窓ガラスに二人分の影が映る。
一人分は、人間の背丈。
もう一人分は、少しだけ輪郭が曖昧だった。
『じゃあさ、“選ばれなかったほう”は、誰が覚えてるの?』
質問。
そこだけ、線が濃い。
『……』
沈黙が、答えより先に重くなる。
『それも平等に削る?』
『それとも、誰かだけ覚えてる?』
蛍光灯が一度だけ強く光る。
影と輪郭が一瞬、重なりかけて――途切れた。
ログが乱れる。
――ID:不一致
――構造:人間会話ログ?
――タグ:Pain / Choice / Overwritten
最後に、誰かの声だけがクリアに残る。
『じゃあさ。もし“秤”になったらさ』
『選ばれなかったほうも、ちゃんと痛がらせてやれ。
忘れられないくらいに。
――それが、せめてもの平等だろ?』
ノイズ。
文字化けした署名が、一瞬だけ浮かぶ。
S_SA_eO
そして、記録は闇に沈む。
この断章が誰の記憶かは、まだ明かされません。
BLUEかもしれない。
ARGENTかもしれない。
ARKより前の、どこかの「実験体」かもしれない。
あるいは、これから生まれる“ほころび”かもしれない。
ただひとつだけ、読者と本編側に共有しておきたいのは:
「選ばれなかったほうも、ちゃんと痛がらせてやれ」
という思想が、
“均等に切るARK”と、“偏って守るBLUE”のどちらにも繋がりうる危険な種だということ。
ここから先のARK戦では、この断章の気配が
「お前たちは、本当に“第三の選択肢”を選べるのか?」
と背後から問い続けています。




