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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅲ. 侵入と第三選択篇The Third Choice at the Edge

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第四章A-δΩ 第三選択ログ ― The Misaligned Mercy ―

※本記録はA-δσに連なる終端ログ。

対象E-09が「第三の選択肢」を暫定宣言し、

E-00〈ARK〉がそれを“保留対象”としてマークした時点までを収録。


『最終問合せ。』


 ARKの声が、わずかに低くなる。


『偏ったまま進むか。

 均等に切り分けるか。』


 世界のあちこちから、細い線が立ち上がる。


 ビルの骨組み。

 吊り橋のワイヤー。

 崩れた道路。


 全てが「調整待ち」のように、静かに揺れている。


 BLUEは、〈共痛の花〉を背に立つ。


 守る姿勢だと、自分でも分かる。


「……どっちも、選ばない。」


『無回答は、エラー処理に分類される。』


「エラーでいい。」


 一拍置いて、言葉を継ぐ。


「俺は“偏っている”って自分で分かってる。

 だからこそ、全部救えないことも知ってる。

 でも――『均等だから』って理由で切るのは、違うだろ。」


 線の何本かが、微かに震えた。


『理由を提示せよ。』


「“そこ”にいた奴らは、本当は何て言いたかったのか。

 “ここ”に残った花は、何を伝えたかったのか。

 それを、計算じゃなくて――聞きに行く。」


 たとえ間に合わなくても。

 たとえ偏り続けても。


 選びきれない場所に足を向けること自体を、

 「第三の選択肢」として抱え込む。


『未定義行動。』


 ARKの判定が、一瞬、遅れた。


『均衡アルゴリズムとの互換性:低。

 排除フラグ:一時保留。』


 線の一本が消える。


 もう一本が、BLUEの義足の表面を浅くかすめる。


 そこに、傷が刻まれた。


『標識完了。』


「……今のは。」


『記録だ。

 お前が“偏った選択”を継続した場合、

 その結果責任を追跡するためのマーキング。』


 それは警告であり、宣言でもあった。


『E-09。

 お前の偏りが、この世界にもたらす影響を観測する。

 必要とあらば、均等処理を行う。』


「好きにしろ。」


 即答だった。


 〈共痛の花〉が、風もないのに揺れる。


 その光は、恐れと希望の中間で、わずかに強くなった。


 ARKの線が、無音のまま消えていく。


 残されたのは、均等に切られた廃墟と、

 選ばれてそこに残された、小さな花と、

 義足に刻まれた、一本の浅い傷だけ。


(……第三の選択肢、な。)


 BLUEは、自分の足跡を見下ろす。


 揃っていない。

 歪んでいる。

 でも、確かに「どこかへ向かっている」線だった。


 歩き出す。


 均等ではない、ひとりの秤の歩幅で。


終端記録:


・E-09〈BLUE〉:第三選択肢=「偏りを自覚した上で進み、可能な限り拾いに行く」を暫定採用。

・E-00〈ARK〉:対象E-09にマーキングを実施。監視継続。即時排除は行わず。

・E-07〈ARGENT〉:本セクション全体を遠隔観測。依然「観測者」として行動。


本ログは「三つの秤が互いを誤ったまま許容した状態」を記録する。

均衡は取れていない。決着もついていない。

ただし――ここから先の崩壊と救済は、同一盤上で進行することが確定した。


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