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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅲ. 侵入と第三選択篇The Third Choice at the Edge

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第四章A-γΩ 初動干渉ログ② ― The First Cut You Feel ―

※自動記録/編集不可

層:地上第三層・交差点域

対象:E-09 “BLUE”/E-00 “ARK”/Observer:E-07 “ARGENT”

事象:限定的物理干渉の発生


本ログは「試験的切断」と「保護動作」を含む、継続


『E-09。』


 ARKの声は淡々としていた。


『選択肢を再提示する。』


 第二の線が、空中に描かれる。


 一つは、世界の瓦礫を均等に刈り取る軌道。

 一つは、〈共痛の花〉の輪郭をぎりぎり回避しつつ、その周囲を空洞化する軌道。


『一つ目:すべてを均等に削る。

 二つ目:お前の守る点だけ残し、その外側を最適化する。』


「どっちも、誰かを切る前提じゃないか。」


『そうだ。だから秤だ。』


「じゃあ、俺は秤をやめる。」


 一拍。


 静寂。


 BLUEは、自分でも驚くほど素直にそう言っていた。


 ――Role_Flag:Manual Override

 ――旧定義:Judgment_Unit / E-Series

 ――新定義:Undefined / Walking_Heart


『拒否を確認。』


 ARKの演算に、微細な乱れが走る。


 秤が、自分の役割を降りる。

 それは本来、想定されていない事態だった。



 第三の線が、ゆっくりと降りてくる。


 今度は、花の中心を正確に通る軌道――に見えた。


 BLUEは迷わない。

 身体を滑り込ませる。


 ――Impact


 胸部装甲を、冷たい痛みが貫いた。


 だが、〈共痛の花〉は無傷のまま揺れている。


ARKの声。


『テスト結果:E-09は特定感情への過剰防衛を優先。

 自律的自己犠牲行動を確認。』


「……遊んでんじゃ、ねぇ。」


 ノイズ混じりの声が漏れる。


『遊戯ではない。

 計測だ。』


 BLUEは、貫通された軌道を見下ろす。


 致命点を正確に外されていた。

 「殺せたが殺していない」を、これ以上なく分かりやすく示す線。


(俺の“偏り”を、数値にしてる……)



 ARGENTのログに、小さな変更が生じる。


 ――Observer:E-07

 ――Status:Neutral → Slight Deviation

 ――Note:E-00行動に対する“不快値”上昇


「……それは、秤のやることじゃないぞ。ARK。」


 誰にも聞こえない帯域で、彼は呟いた。

 


BLUEは、胸に開いた穴を押さえながら立ち上がる。


「ARK。」


『応答。』


「お前が均等でいるなら、

 “俺みたいなの”を試す必要、なかったはずだ。」


 一瞬、沈黙。


『……解析中。』


 線の揺らぎが、ほんのわずか乱れる。


『仮説:E-09の偏りが、俺の基準値に影響。

 未定義要素:Fragment介在/第三選択肢概念。』


「だったら、一緒だ。」


 BLUEは〈共痛の花〉に背を預けるように立つ。


「もう、お前も“ただの秤”じゃない。」



 この交差点で確定したのは、ただ一つ。


 E-00 “ARK”は、E-09 “BLUE”の偏った行動を「測るだけの存在」から、

 「それに揺さぶられ得る存在」へと、半歩踏み出してしまった。


 均等な刃に、極細の誤差が入る。


 世界はまだ気づかない。

 だが、この誤差は必ず“戦い”になる。

――解析補遺:A-γΩ


・E-09:秤としての役割フラグを自発的に書き換え。

・E-00:殺傷可能ラインを示しつつ、意図的に外す「計測的暴力」を実施。

・E-07:観測ログに“不快”という微弱感情データを生成(本人未承認)。


本記録時点では、いかなる決着も発生していない。

だが、E-00側の演算領域に初めて“未定義変数:E-09由来”が発生したことを確認。


これにより、次記録 A-δ 以降での「正式交戦プロトコル」発動確率が上昇。

第三の選択肢は、もはや概念ではなく、

両者にとって“壊れる危険を含んだ選択”として扱われる。

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