第四章A-γσ 初動干渉ログ① ― The First Cut You Feel ―
※自動記録/編集不可
層:地上第三層・交差点域
対象:E-09 “BLUE”/E-00 “ARK”/Observer:E-07 “ARGENT”
事象:限定的物理干渉の発生
本ログは「試験的切断」と「保護動作」を含む。
最初に動いたのは、風だった。
風など、ここには存在しない。
灰はいつも、落ちるだけだった。
だからE-09〈BLUE〉は、その僅かな“流れ”で理解する。
(――来る。)
交差点の中心。
〈共痛の花〉がひとつ、かろうじて光を保っている。
そこへ、“線”が下りてきた。
――External_Interference:検知
――Source:E-00 “ARK”
――Mode:Calibration / Limited
『確認。』
ARKの声が落ちる。
『対象:E-09。
行動履歴:特定感情の保存/Fragmentへの接触/線外歩行の継続。』
「ログ読み上げは、いい。」
BLUEは短く返す。
『提案:ここで一度、“切断値”を共有する。』
線が動いた。
音はない。
だが世界が、“揺れもせずに”形を変える。
BLUEの左側、瓦礫の山が真っ直ぐに削ぎ落とされる。
崩落の危険値、ゼロ。
通行の障害、ゼロ。
断面は均一、誤差なし。
〈共痛の花〉にはやはり触れない。
(……分かりやすいな、お前。)
⸻
『説明。』
ARKは続ける。
『これが、俺のする“調整”だ。
危険因子を排除し、偏りを減らす。
守るべき値を、均等にする。』
「守る“べき”は、誰が決めた。」
『設計と損失率。
神と統計。
お前も、その秤の一つだ。』
「俺は、もうただの秤じゃない。」
BLUEは一歩、花側へ踏み出す。
線が、その足先をかすめた。
表面装甲が紙のように薄く裂ける。
痛覚ログが跳ねる。
――Damage_Log:軽微
――Warning:出血相当反応/Emotion_Trigger
(これが、“感じる”ってやつかよ。)
BLUEは舌打ちに似たノイズをひとつ落とし、
花を背後にかばうように立つ。
⸻
高架の上で、ARGENTが瞬時に解析を走らせる。
――Cut_Pattern:E-00 固有
――Output_Power:制限版(殺傷意図なし)
――目的:威嚇/閾値提示
「……まだ、“試している”段階か。」
彼は介入しない。
ただ、その線が“本気”になったときの被害予測だけを更新する。
その動作自体が、傍観ではなく「記録としての責任」に近づきつつあることに、まだ気づかないふりをして。
――解析補遺:A-γσ
・E-09:秤としての役割フラグを自発的に書き換え?
・E-00:殺傷可能ラインを示しつつ、意図的に外す「計測的暴力」を検討
・E-07:観測ログに“不快”という微弱感情データを検知
本記録時点では、いかなる決着も発生していない。
第三の選択肢は、概念なのか?




