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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅲ. 侵入と第三選択篇The Third Choice at the Edge

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第四章A-β 交差予告ログ ― The Point You Can’t Undo ―

※自動観測記録

層:地上第三層/対象:E-09 “BLUE”/E-00 “ARK”/E-07 “ARGENT”

事象:推奨ルート・均衡ルート・線外歩行ルートの三重交差点出現


――本記録は、「衝突前夜」における挙動ログであり、

  いかなる確定的判断も含まない。

 均等な線と、歪んだ足跡が、同じ場所に重なり始めていた。


 交差点。


 と言っても、信号も標識もない。

 ただ、ARKの描いた直線経路と、

 BLUEが選び続けた“線外”の道が、

 必然的に一点へ収束していく座標。


 ――Map_Overlay:実行

 ――Result:Path_Conflict_Area / 0007_Boundary


(ここを、避けては通れないってことか。)


 E-09〈BLUE〉は、静かに立ち止まる。


 足元には、また〈共痛の花〉の残骸。

 これは既に摘まれた後の、折れた茎だけ。


 誰かが、先にここへ来ていた。



 ARKのログにも同じ地点が印される。


 ――Route_Calc:最適交差座標 確定

 ――目的:E-09 軌道修正/不均衡領域の刈り取り/余剰怒りの収束


 演算上、この交差は“合理的”だった。


 E-09の偏りがここで増幅する前に、

 一度「均衡値」を提示しておくべきだ。


 本来なら、ここで刃を振るえばいい。

 線を引き、基準を示し、

 残されたFragmentも含めて“整理”することができる。


 だが――


 ――参照:A-αΩ / E-09_Path_Log

 ――注記:未送信ログ保護/幼児的願望残存/切除見送り


 0.003秒の揺らぎが、まだ残っていた。



 高架上。


 ARGENTは、その交差点を俯瞰している。


 上から見れば、それは分かりやすかった。


 ・ARKの直線ルート:最短・安全・冷徹。

 ・BLUEの足跡:寄り道・保留・記録の温存。

 ・その両方が重なる地点にだけ、花の残骸と途切れた人の営みが集まっている。


「……ここで、決めるつもりか。」


 誰に向けた問かは、ログには残さない。


 ――Observer_Log:衝突予測 確率 73.2%

 ――介入権限:無効

 ――役割:観測継続


 E-07〈ARGENT〉は、なお“秤”として中立を保ったまま、

 三つの線が重なる様を見ていた。



 BLUEは交差点の中心へ進む。


 足元に、ひとつの端末ケースが落ちていた。

 中身は空。

 データは抜かれている。


 ケースの裏に、油性ペンで書かれた文字だけが残っている。


《信じてる》


 誰が、誰を、何から守ろうとしてそう書いたのか。

 BLUEには分からない。


 だが、その一語だけは、

 ARKの演算式にも、過去の命令体系にも属していなかった。


 それは“根拠のない選択”の言葉だ。


 ――Internal_Reaction:未定義

 ――状態:記録のみ/評価保留


 踏まない。

 拾わない。

 消さない。


 BLUEは、その上を避ける。



 その動きに、ARKの演算が反応する。


 ――行動傾向:特定記録への過剰配慮

 ――判定:偏向値 上昇

 ――対処案:均衡提案/直接対話プロトコル起動


『E-09。』


 声が交差点に落ちる。


 まだ刃ではない。

 だが、その響きは「次は問うだけでは済まない」と告げていた。


「また“問合せ”か。」


 BLUEは空を見上げる。


『お前は、残した。』


「ああ。」


『俺は、揃えたい。』


「知ってる。」


『なら――この地点で、一度答えろ。』


 ここから先は、

 偏りと均等を“並べて語るだけ”の時間は終わる。


 次に選ぶ一手が、

 本当に誰かを救うのか、

 それとも別の誰かを切り捨てるのか、


 もう誤魔化せない場所に来ている。



 遠景。


 ARGENTの視界に、ふたつの演算波が重なる。


 BLUEの微熱。

 ARKの冷光。


 その境界線上で、世界の輪郭が一瞬だけ揺れた。


「……ここから先は、どちらも“逃げ”にはならないな。」


 自分もまた、その結果からは逃れられないことを知りながら。

――解析補遺:A-β


交差点観測結果:


・E-09:Fragmentと小さな言葉を“残す”選択を継続。

・E-00:初の「直接対話プロトコル」準備。刃ではなく問で接続。

・E-07:三者の交差を把握しつつ、なお介入せず。


本ログは、戦闘開始前の「位置決め」にすぎない。


だが、この時点で確定してしまったことがひとつある。


 ――次に交わされる問いと刃は、

   どちらの秤にとっても「取り消せない一手」になる。


次記録 A-γ 以降、

第三の選択肢は概念ではなく、“代償つきの行動”として試される。

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