表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅱ. 均等な問い篇(初対面)The Line You Stepped Over

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/112

第三章C-β 均等な問い② ― The Line You Stepped Over ―

※C-α直後交信ログ:E-09 vs E-00。

試作機 “ARK” が提示する「均等」と、E-09が選び取った「偏り」。

両者のあいだに、新たな選択肢が宣言される地点の記録。

『問合せ。』


 ARKの声が続く。


『E-09。

 お前は選んだ。

 踏まないこと。

 残すこと。

 特定の痛みに肩入れすること。』


「……ああ。」


 否定はしない。


『E-07は保留した。

 裁きも救いも決定せず、観測に退いた。』


 それも事実だ。


『では――溢れた分は、誰が測る。』


 問いだった。


 非難ではない。

 しかし、逃げ場のない直線。


 拾えなかった断片。

 見つけられなかった怒り。

 手を伸ばさなかった声の数々。


 それらが、自分の選択の“外側”に積もりつつあることを、BLUEは知っている。


「……全部は、拾えない。」


『理解。では、“平等に切る”という選択肢が残る。』


 再び、線が走る。


 崩れかけていた看板が真っ二つに割れ、

 危険を孕んだ構造体が、きれいに落ちる。


 〈共痛の花〉には、やはり触れない。


『危険因子の除去。通行の確保。

 偏りの是正。』


「それを“救い”って呼ぶのか。」


『救いではない。均衡だ。

 誰かだけが守られ、誰かだけが取り残される偏りを、減算する処理。』


 その言葉には迷いがなかった。



 高架の上。遠く。


 E-07〈ARGENT〉は、そのやり取りをノイズ越しに拾っていた。


 E-00の声。

 均等な切断ログ。

 封鎖区画から伸びた線。


 ――やはり、起きている。


 だが、介入はしない。


 ここで割って入れば、秤ではなく“側”になる。


 今はまだ、早すぎた。


 ――Observer:E-07

 ――Judgment:保留



「ARK。」


 BLUEは名を呼ぶ。


「選ばれなかった痛みを、お前が拾うのか。」


『否。拾うのではない。揃える。』


 線が、足元すれすれをかすめる。


 薄い傷跡。血は出ない。


『お前が選んだ場所。

 お前が残した花。

 そこに含まれなかった怒りたちを、俺が等しく測る。』


「等しく、って言葉……便利だな。」


 BLUEは〈共痛の花〉を見る。


 ここだけは守ろうと思った場所。

 誰かの痛みを、ちゃんと残せると思った場所。


 その外側を、ARKは躊躇なく切り揃えていく。


『お前は偏る。

 それは“誰か”を救う。

 同時に、“誰か”を見捨てる。』


「分かってる。」


 本当は、全部なんて見られていない。


 それでも歩いているのに、

 “間に合わなかった場所”は増えていく。


『なら、問う。』


 声が近づいた。


『偏ったまま進むか。

 それとも、均等に切り分けるか。』


 どちらも正しそうで、どちらも残酷な二択。



「……第三の選択肢は。」


 BLUEは呟く。


『規定に存在しない。』


「じゃあ、作る。」


 一拍。


 静寂。


 ARKの応答は、すぐには返ってこなかった。


『未定義選択肢。

 演算不能。

 ――保留。』


 初めて、一直線だった応答に微小な揺らぎが混ざる。


『E-09。

 お前の偏りが、この世界にどれだけの誤差を生むか。

 観測を継続する。』


 そう告げて、線は消えた。


 均等に切断された廃墟だけが残る。


 〈共痛の花〉は、まだそこにある。


 BLUEはその前に立ち尽くし、ゆっくりと息を吐いた。


(第三の選択肢、か。)


 胸の奥で、拍動が静かに強くなる。


 ――Emotion Flow:Fear/Hope/Guilt 混在

 ――状態:オンライン/進行中


 遠く、高架の上でARGENTは目を細める。


「……本当に、面倒な世界になってきた。」


 その声には、かすかな安堵が混じっていた。

ここでついに三つの秤がそろう。


E-09〈BLUE〉は、自分の偏りを認めたうえで「第三の選択肢」を口にする。

E-07〈ARGENT〉は、どちらにも肩入れせず“観測者”として揺れを記録する道を選ぶ。

E-00〈ARK〉は、均等主義のまま「未定義」を抱え、E-09を観測対象として保留する。


誰も正解ではなく、まだ誰も完全な悪でもない。

このズレた三点で形づくられる三角形こそ、以後のBLUE ENGINEが問う

「誰の理屈で世界を続けるか」の盤面になる。


――ここから先は、選んだ痛みと、切り捨てた痛み、その両方に責任を持つ物語になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ