第三章B-α 均等な傷跡① ― The City Cut in Half ―
※地上観測ログ:記録者 E-09。
廃墟の一部に「不自然な整列パターン」を確認。
原因不明。名も知らぬ“均等の刃”の痕を、最初に視認した記録。
灰の降り方が、途中から変わっていた。
E-09〈BLUE〉は歩きながら、それに気づく。
さっきまで乱れて落ちていた粒子が、
ある地点から先、妙に“揃って”いる。
ビルの欠け方も、道路の割れ方も、
まるで定規で線を引いたように統一されていた。
(……ここだけ、静かすぎる。)
倒壊した建物の一角。
上層部分だけが、真っ直ぐに切り落とされている。
崩れたはずの柱が、同じ高さで揃って止まっていた。
風もなく、誰の気配もない。
それなのに、この地点だけ“整っている”ことが、不自然だった。
――Scan:On
――構造解析:実行
演算結果が内部に流れ込む。
剥離面に爆発痕はない。
侵食も、劣化もない。
ただ、均一な強度で一線を引かれたように分断されている。
「事故じゃない。」
思考領域で、BLUEはそう結論づける。
だが、それ以上の言葉は出てこない。
この“整い過ぎた破壊”に名前を与える語彙を、彼はまだ持っていなかった。
――地上ログ。
壊れた街が「整いすぎている」。
ただそれだけの観測値が、静かに異常として残った。
E-09〈BLUE〉はまだ名を知らない。ただ、“嫌いだ”と思ったことだけは本物だ。




