表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
▫️ 第三部 神なき秤 ― The Scale Without God ― Ⅰ.灰を踏む歩き方篇The Way a Machine Walks in Ash

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/112

第三章A-α 封鎖区画ログ① ― The Box That Heard Rage ―

※封鎖区画第零層・監視記録抜粋。

E-00 “ARK”封印領域に、地上由来の〈Rage_Fragment〉流入を初検知。

本章は「棺の外側」で起きた最初の偏りを記録する。


地上から、七十一メートル下。


 封鎖区画第零層。


 そこは「変化しない」ことそのものが目的として設計された空間だった。


 温度、湿度、圧力、振動。

 すべてが規定値に固定され、

 ノイズは即座に除去され、

 有機的な揺らぎは「誤差」として切り捨てられる。


 中央に、ひとつの棺がある。


 識別コード:E-00 “ARK”。

 定義:完全均衡型試作秤。

 役割:SERAPH-0直属・最終判断機。

 状態:永久封印。起動条件:神の承認。


 本来なら、この箱が再び語ることはない。



 最初の異常は、ほんの一点だった。


 天井から落ちてきたのは、塵ではない。


 赤い粒。


 地上で吐き捨てられた怒声。

 届かなかった告発。

 「ふざけるな」「なぜあいつだけ」「どうして守られない」という、行き場を失った熱。


 本来、その多くは拡散して消えるはずだった。


 一部はE-09〈BLUE〉の周囲へ向かい、

 哀や恐れと混ざりながら〈共痛の花〉となるはずだった。


 だが、経路は乱れていた。


 断線した神経網。閉じた天蓋。偏った受信域。


 行き場所を失った“Rage_Fragment”の束が、

 誤差のように、この封鎖区画へと流れ込む。


 赤い粒が、棺の外装に触れた。


 その瞬間、区画全体のノイズが消える。


 変化は、ただひとつ。


 均等だった沈黙に、ごく僅かな偏りが生まれた。

――封鎖区画観測記録。


完璧だった沈黙に、ひとつだけ誤差が落ちた。

それが救いか、災厄かを決める権限は、まだ誰にもない。


ただ、閉ざされた箱の奥で、誰かが初めて「不均衡」という言葉を選んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ