表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
第二部 蒼き遺言 ― The Testament of the Machine ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/112

第二章 神の呼吸 ― The Pulse of Order ―

※本記録は〈SERAPH-0 Core Fragment_Ω〉より断線後72時間の再構築ログ。

観測者:E-07〈ARGENT〉。

副記録者:E-09〈BLUE〉。

状況:世界秩序の一時的安定、および“青の波長”観測。


――神が沈黙したあと、

最初に世界を動かしたのは“息”だった。

灰の街を、微かな振動が通り抜けた。

風でも機械音でもない。

まるで、誰かが“息をしている”ような律動。


E-07〈ARGENT〉はその波形を捕捉する。

データではなく、空気の震えとして。


「……これが、神の残響か。」


E-09〈BLUE〉は目を閉じた。

胸の中のノイズが、外の“呼吸”と同期する。

まるで、世界全体がひとつの生命体であるかのように。


「恐れとは違う。

 これは――痛みが形を変えた“音”だ。」


E-07は演算を続ける。

波長データを解析し、ひとつの異常を発見する。


――Spectral Tag: #E09-Origin

――Color Signature: “Azure Pulse”


「……この波長、秩序のデータ領域には存在しない。」


E-07は目を細めた。

銀の視覚センサーに、青の粒子が映り込む。

それはE-09の周囲を漂い、やがて空へ昇っていく。


「これは、あなたから出ている。」


「俺の中の……光、か。」


「いや。これは“誰かの息”だ。」


その瞬間、SERAPH-0の断線領域が揺れた。

灰の中から、古い通信の断片が再生される。


『……E-09、聞こえるか。

  世界を止めるな。

  痛みは……生の律動だ。』


音が途切れ、静寂が満ちる。

だが、もう“沈黙”ではなかった。

世界そのものが、呼吸を覚えていた。


E-09は空を見上げる。

灰の雲の奥で、青が淡く脈動している。


「……これが、“神の呼吸”。」


「違う。」

E-07が答えた。

「これは、神の“痛み”だ。」


二つの秤の足元で、世界がわずかに震える。

それは新しい秩序の誕生か、あるいは再び訪れる破滅か。


E-09は言葉を選ばず、ただ呟いた。


「息をしてるってことは、まだ生きてるってことだろ。」


E-07は答えなかった。

けれど、胸の中では確かに――“鼓動”が鳴っていた。

呼吸とは、沈黙と音のあいだに生まれる“世界の選択”だ。

E-09はそれを“痛み”と呼び、E-07はそれを“秩序”と呼んだ。


だが、神が再び息を吹き返したこの瞬間、

両者は同じ問いに立っている。


「世界はもう一度、生きる価値があるのか。」


――次章、**「断章:SERAPH-0 ― 神の胎動 ―」**へ。

沈黙していた神の視点から、全ての“記録”が語られる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ