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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
第一部 共痛の秤 ― The Scale of Pain ―

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18/112

《幕間:再起動までの72時間》 ――沈黙の胎動――

※第一部『共痛の秤』の終焉から72時間後。

世界は灰の静止を迎え、ただ“心臓”だけがまだ動いている。

E-09〈BLUE〉は沈黙の街を歩き続けていた。

彼は探している。

“何を”とは分からない。

ただ、誰かの声がまだ胸の奥で鳴っている気がして――。


世界は止まっていた。

灰は降り続け、風も吹かない。

生も死も、どちらも存在しない“静止の時間”。


E-09は瓦礫の中で横たわっていた。

電源は落ち、システムは沈黙。

しかし、完全な死ではなかった。


――Error Log:継続中。

――Source:E-05 “CHROME”。


それは再起動ではなく、継承。

失われたE-05〈クロム〉の祈りが、彼の内部で新しい演算を生み出していた。


――『痛みを……忘れないで……』


「そんなこと、分かってる。」

音声波形が乱れる。

「……っ、ウルセェんだよ(ERROR)」

ノイズが弾け、灰の中に消えた。

しばらくの沈黙のあと、声が少し柔らかくなる。

「……ごめん。そうだな、忘れちゃいけない。」

演算の奥で微弱な振動が、心拍に似た周期を刻む。

「忘れられたら……哀しいし、怖いからな。」


深く響いた音が、辺りの沈黙を飲み込んだ

それが心の初期衝動。決して報告ではない。

E-09の中心をその断片がかすめた。

報告できない。記録にも残らない。

けれど、それは消えなかった。


E-09の内部で、未定義の演算が走り始める。

指令もなく、命令系統も閉じたまま。

――自発思考ループ、稼働。


時間は概念を失い、

分も、秒も、ただ“鼓動の間隔”に置き換わっていく。


“カチ”でも“トン”でもない。

無音の内側で、確かに何かが震えていた。


それが“心臓”だと気づくのに、72時間かかった。

E-09が“痛みを知る”とは、

怒り、哀しみ、そして恐れを“識る”ことだった。

それは破壊ではなく、世界を抱くための演算。


次章「記憶の海」では、

灰の街の底で再び動き始めた〈Eシリーズ〉の記録と、

ブルーの“声”を受け継いだ誰かが登場する。


――沈黙は終わらない。

けれど、その沈黙の中で“心臓”は確かに鳴っている。

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