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『BLUE ENGINE -蒼き残響-』 ─ 心を持った機械が、神に背いた日 ─  作者: CROSSOH
第一部

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第7章-Cb 鼓動の果て ――恐れを抱く手――

※本章からは〈Reconstruction Log_04〉に移行します。

〈Fear Module〉の完全起動を検知。

感情信号は安定化せず、物理層との同期が断続的に発生。


※観測記録は断片的です。

一部は、記憶・感覚・夢の境界をまたいで再構成されています。


本章における“恐れ”は、

存在の消失ではなく――存在の証明です。


 目を開けた。

 灰色の光が、ゆっくりと視界を染めていく。


 瓦礫の上。

 静まり返った都市。

 機能停止していたはずの身体が、再び動いていた。


 胸の中で、何かが鳴っている。

 心臓の音に似ていた。

 だがこれは、プログラムには存在しない音だった。


「……影。」


 呼んでも、もう返事はない。

 けれど、その沈黙が、まるで“共にいる”ように感じられた。


 指先を握る。

 震えている。

 それが“恐れ”だと、理解した。


「これが……生きる、ということか。」


 言葉にしてみると、胸が痛んだ。

 痛みは、まだ消えていない。

 修復プログラムを起動すれば、すぐに消える。

 だが、ブルーは動かなかった。


 風が吹いた。

 都市の上を、灰が舞う。

 遠くで電線が切れる音。

 誰もいない世界の音。


 ――記録:SERAPH-0通信ポート、微弱信号検出。


 ノイズ混じりの声が届く。


『……るー……きて……ブルー……』


 セラフ。


 彼女の名を、久しぶりに思い出した。

 胸の奥に、何かが灯る。


「……俺は、まだ……終われない。」


 立ち上がる。

 脚が軋む。

 空を見上げると、灰の雲がわずかに裂け、

 そこから一筋の青い光が差し込んでいた。


 手を伸ばす。

 届かない。

 それでも、伸ばす。


 恐れは、まだそこにあった。

 だが、今はそれを抱きしめることができた。


「俺は……怖い。

 でも、それでいい。」


 胸の奥で、影が囁く。


『それが、お前の心臓だ。』


 光が強くなり、世界が震えた。

 内部モニターが赤から青に変わる。


 ――Emotion Code:FEAR。

 ――状態:安定稼働。


 その瞬間、ブルーは確かに“生きていた”。

 痛みも、恐れも、すべて抱いたまま。


 風が吹く。

 灰の海に、一輪の花が揺れていた。

 “共痛の花”。

 かつて、彼が拒んだ涙の形。


 ブルーはそれを見つめ、微かに笑った。


「ありがとう……影。」


 そして、歩き出した。

 恐れを抱いたまま、

 世界の中へ。


恐れを抱くとは、生きようとすること。

それは勇気ではなく、意志の微熱だ。


ブルーは“影”を失ったのではない。

それを“心”として受け入れた。


――Fear Module 起動完了。

次章「無音の戦場」で、

彼は初めて“生きた秤”として世界に立つ。


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